第314話【エピローグ】試合には来ないのに打ち上げにはしっかり参加する人

お付き合いありがとうございます!

今の章はこれで終わりです。

文字数も過去最大まで増えてしまいました。

国がどうなったかとかの話は次の章で語られるはずです。


Twitter(X)に『極スタ』コミュニティを作りました。

自由参加なのでルール内でご自由にコメントしてみてください。

今後の話とかもこっちに投げると思います。

https://twitter.com/kokuitikokuichi/status/1707393807405518978



―――――――――



「今日は厄日なのか?」


 そう言いながら町に向かって走り出す。

 スタンピードがあったのか? いや、それならもっとそこらに爪痕を残しているはず。

 なら、どこかの軍が攻めてきたとか? もしくは大型モンスター?

 しかし遠くから見る限り、こちら側からは壁や門が破壊されているような様子は確認出来ない。

 まったく意味が分からないまま雪道を駆け抜け、ようやく門のところに到着して荒い息を整えるために下を向き、そして顔を上げたら中年女性が門の外で掃き掃除をしていた。


「……」


 そこにはいつもと変わらない光景が……いや、いつもなら門のところに兵士がいたし、わざわざおばさんが門の外を掃除しに来るなんてなかった気がするぞ。

 おかしいけど、おかしいようにも見えない。不思議な感覚で脳がバグりそうになる。

 門の方に近付いておばさんに話を聞こうとした。


「すみません。今戻ったんですけど、なにがあったんですか?」

「ん? あぁ、もう終わったよ。今は広場で打ち上げでもしてるんじゃないかねぇ」


 それだけ言うとおばさんは掃除へと戻っていった。

 もう終わった、とはどういうことだろう。今日はなにかイベントでもあったっけ? 収穫祭……は終わったし、冬だし雪まつりとか? いや、煙が出てたから花火大会かも! それとも時期を考えると新年会とか? ……いやいやいや、僕だけ新年会に呼ばれずに仕事で飛ばされてたとかイヤすぎるんだけど……。


「とりあえず冒険者ギルドに行くか……」


 よく分からないまま門を抜けて町に入る。

 町は人の姿が少なく、なんだか店の片付けとか壊れた壁なんかを修理をしている人が多い。

 朝、出かける時に見た町より全体的に荒れている気がする。

 これは! もしかして!


「牛追い祭りか!」


 ……いやいや、この周辺に牛系モンスターが出るなんて聞いたことないし、それはないな。

 だとすると……。


「トマト祭り的な?」


 う~ん……そこまで汚れてないからこれも違うだろう。

 まぁでも、だんじり祭りとか御柱祭とかみたいな奇祭がこの世界では普通に行われている可能性も否定出来ないんだよね。僕にもまだまだ理解出来ていない風習なんかは普通にまだあるだろうしさ。

 色々と考えながら町の中心部に歩いていくと、段々と賑やかな声が聞こえてくるようになった。そして広場に近くなると、多くの人々が通りに繰り出していて、楽しそうにカップに注がれた酒を呷っているのを見るようになってきた。

 よく見ると多くの人の服はボロボロになっていたり、怪我をして血が滲んでいたり、包帯を巻いている人も少なくない。

 しかし彼らの顔は晴れやかで、実に楽しそうだった。

 これは、もしかして!


「そうか! 喧嘩祭りか!」


 キュピーンと閃いて手を叩く。

 確か日本にも素手で殴り合う奇祭があったはず。それならこの異世界に似たような祭りがあってもおかしくないぞ!

 あまりに完璧過ぎて冴えまくる名推理に気分を良くしながら冒険者ギルドに入り、受付に完了報告した。


「調査完了です。内部にモンスターがいましたが、成り行きで討伐しておきました」

「それはご苦労様です」


 例のモンスターの報告について色々と考えた結果、とりあえず『内部にいたモンスターを討伐した』という事実だけを報告することにしたのだ。

 しかし今日は冒険者ギルド内もやけに賑やかで、いつも以上に人が多く、筋骨隆々なむさっ苦しさに溢れているんだよね。

 受付嬢に聞いてみる。


「今日は賑やかですね。なにかお祭りでもあったんですか?」


 これでさっきの名推理の答え合わせをしようとしたのだけど、聞いた瞬間、受付嬢がピクリと止まって驚いた顔をした。


「もしかして、ルークさんはさっき帰ってこられたのですか?」

「えぇ、勿論そうですよ」


 受付嬢は少し難しい顔をして、少し考えるような素振りを見せた。

 僕の名推理は誰にも言っていないのに、そんなに驚かれてるのが意味不明すぎるんだけど?

 えっ? もしかして本当に僕抜きで新年会してたパターン? それで気まずくなってる感じ? いやいやいや……。えっ? 嘘でしょ?

 などと内心で冷や汗をかいていると、受付嬢が言葉を選ぶように喋り始めた。


「あの、説明が難しいのですが、簡単に説明するなら――革命が起きました」

「……えっ? 革命って、あの革命ですか?」

「えぇ、その革命ですね」


 意味が分からなすぎて頭の中が『?』の文字で埋まっていく。


「いや、まったく意味が分からないのですが。では、この騒ぎは?」

「ソルマズ家打倒と聖女エレナ様を祝福する祝宴ですよ!」

「……は?」


 頭の中の『?』がどんどん増えていく。

 ソルマズ家の打倒? エレナ? えっ? エレナ?

 どこに、なにが、どうして、それが関係するんだ?

 なにがなんだか余計にさっぱり分からなくなってきた……。

 そうして僕だけが取り残された世界で宴は勝手に続いていった。

 僕が『桃栗三年柿八年だけど妖精の薬を使えばほぼ一瞬』であることを思い出して唸ったのは暫く後のことであった。

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