第257話【閑話】聖騎士団とデスナイト

 「光よ!」


 聖騎士団団長サグマルトはそう叫びながら聖なるオーブ――と呼ばれている『光のオーブ』を掲げた。

 すると光のオーブから柔らかい光が全方向に放たれ、周囲の赤黒い霧を打ち消していく。

 と、同時に霧の中から姿を現すモノがあった。

 デスナイト。そう呼ばれる存在。

 全身を真っ黒な鎧に身を包み、大きな両手剣を持ち、兜の隙間からわずかに見えている目だけが真っ赤に光っている、闇の騎士。

 遭遇した者に死を与えると恐れられているAランクモンスターだ。

 そしてその支配下にあるブラッドナイトも大量についてきた。


「臆することはない! 隊列を立て直せ! この『聖なるオーブ』の光が我らを導くだろう!」


 サグマルトはそう言いながら、顔には出さずに心の中で罪悪感と共に悪態をつきそうになる。

 もしこの光のオーブが本物の聖なるオーブだったなら、と。


「オォ!」


 真っ白な剣と盾を構えた聖騎士隊がジリジリと間合いを測るように前に進んでいく。

 それをデスナイトとブラッドナイトの大群が待ち構える。

 サグマルトはデスナイトの方を見た。

 デスナイトの赤い目がゆっくりと細められ、兜でその顔は見えないのに何故かサグマルトにはデスナイトが笑っているように見えた。


「突撃!」

「グァッ!」


 サグマルトとデスナイトが同時に吠える。

 戦いが、始まる。

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