第167話 考察

極振り拒否して手探りスタート! 特化しないヒーラー、仲間と別れて旅に出る(1)

オリコンランキング週間・文芸書トップ10入りしました!

(2019年02月04日~2019年02月10日)


スタートは悪くないようです。

引き続きよろしくお願いします。



―――――――――――――――――――――――――――



「う~ん」


 魔法について考えていく。

 魔力の通りが良い素材。特定の属性の魔法だけ使いやすくなる武器。魔法の属性。

 ダメだ。なにかが頭に浮かびそうなんだけど、浮かんでこない。

 答えを導き出すにはもう一つ、なにか取っ掛かりが必要なんだろうな。

 そう考えつつ、なんとなくもう一度、魔法を使ってみる。


「神聖なる炎よ、その静寂をここに《ホーリーファイア》」


 右手のひらから生まれた白い炎の玉がフワフワと空中に浮かぶ。さっき闇水晶の短剣で使った時とはまったく違い、正常にホーリーファイアが発動している。

 不思議なものだなぁ、と思いながら消えるように念じ、地面に置いてある樫の杖を拾って、杖から出すようにもう一度、魔法を使ってみる。


「神聖なる炎よ、その静寂をここに《ホーリーファイア》」


 さっきと同じように白い炎の玉が杖の先から生まれ、その場に浮かぶ。


「この樫の杖も、そこそこ魔力の通りが良いんだよね」


 そうつぶやきながら、杖を振るようにホーリーファイアを掻き消した。

 あの白い場所で取得した〈魔法使いセット〉に入っていただけあって、この杖は魔法を使うには適しているとは思う。魔力の通りは闇水晶の短剣よりは良くないけど、違和感なく魔法が使えるぐらいには魔力の通りが良い。

 この世界の魔法は杖などなくても発動出来る。だから杖は持つ必要がないというか、普通は余計な物を通して魔法を使おうとすると魔法が使いにくくなるだけなので、手からそのまま魔法を放つらしい。

 生物素材は魔力との相性が良いことが多いらしく、材質が木ならそれを通して魔法を放つことは出来るけど、木の武器だと殺傷能力が低いし耐久性も高くないわけで、武器の素材としてはあまり向いているとは言えない。

 そういえば、鉄の槍を使っていた時は槍を持ちながら魔法を使うのがちょっと面倒だった。

 右手を槍から放して使ってたからね。

 槍を握ったまま拳から放ったり指から放つことも出来なくはなかったけど、それだと感覚がちょっと違っていて違和感があったし。そう考えると、メイン武器が杖、という選択肢もアリなのかな?

 う~ん、右手に杖で左手に短剣とかも面白いかも。

 パッとそういう考えが頭に少し浮かび、右手に杖を持って左手で闇水晶の短剣を握ってみた。そして軽く振ってみる。

 右手の杖で受け止め、左手の短剣で攻撃のイメージ。そして、左手の短剣で牽制しながら右手で魔法を使うイメージ。

 様々な場面を想定しながら動いてみる。

 二刀流はうちの家ではやってなかったけど、休憩時間のお遊びでやってみたことはある。若気の至りというか、健全な男子なら一度はそういうのに憧れてしまうモノなのだ。

 そう。それは誰でも通る道……。

 当然のように、父に見つかって後で怒られたけど……。

 なんだか嫌な記憶が蘇りそうになったので、頭を振って昔の記憶を追い出した。

 左手の短剣に魔力を注ぎ続けながら、目の前に作り出した仮想敵への意識を疎かにしないように集中。左手で相手の攻撃を受け止めるイメージ。そしてそのまま右手の杖から魔法を使おうとしてみる。


「光よ、我が道を照らせ《光源》……っと」


 体内の魔力がグルグルと循環しながらいつものように右手へと集まろうとするが、左手から短剣へと少しずつ流れ出る魔力に引きずられるかのように動きを変え、いつもとは違う動きをしていく。


「ぐっ……」


 それをなんとか気合で制御するように右手へと誘導していくと魔力が右手から杖へと向かい、杖の先端から小さめの光の玉に変わる。


「なんか、凄く疲れるな……」


 発動したのはいいけど、凄く大変だし威力も下がっている気がする。

 玉乗りしながら左手でジャグリングして、右手でパンケーキを焼いたら黒焦げになった感じ。

 これじゃあ今のままでは戦闘中には使えそうにないね。

 さて、練習をして練度を上げて使い物になるようにしていくか、それとも諦めるか。


「まぁ、この際だし、色々と試してみよう」


 そこからなにか新しい発見があるかもしれないしね。

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