第142話 初めての系統と一期一会の旅
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作者お手製挿絵、『芋虫』を投稿しました。
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「……うへぇ」
茂みから微妙に顔を出し、そこにいるモノを見て思わず小さな声を出してしまう。
それは緑色の体をウネウネを動かしながら丸っぽい葉っぱをモシャモシャと喰む――
「――芋虫……」
マギロケーションの反応を一応確認してみたらこれだよ……。
あれはどう見てもモンスター……だよね? 倒しておくべき、だよね?
暫くその場で考えてみる事にした。……現実逃避ともいう。
そもそもの話だ、『生き物を見付けた=モンスターだ=ヒャッハー! デストロイ!』ってのは流石にどうかと思うのですよ。モンスターは倒すべき存在だとしても、生き物を見付けて即モンスター扱いして襲いかかるとかバーサーカーじゃないんだからさ……。
流石にあの芋虫と意思の疎通を図るのは無理だろうけど……いや、無理であってほしいけども。もしかするとあの芋虫は何の害もないただの芋虫で、ただ静かにお食事を楽しんでいる芋虫なだけなのかもしれない。
たとえ、その芋虫が全長五〇センチ程の大きさがあっても、だ。
見た目や大きさで決め付けるのは良くない。それは差別というものだ。
そもそも僕は、モンスターではない生き物がこの世界にいる事を知っているじゃないか。
そう考えながら、僕の肩の上で芋虫を眺めているシオンを見た。
「キュ?」
「……おぉよしよし」
少し不思議そうな顔でこちらを向いたシオンがちょっと可愛くて、ついついワシャワシャと撫でながら芋虫に視線を戻すと――目が合った。
「シュルルルルルルル!」
「おぉ……って、バレてるぅ! しかもやる気満々!」
やっぱりアレはどう見てもモンスターだよ! サーチアンドデストロイあるのみ!
「光よ、我が敵を撃て!《ライトボール》」
口元をカシャカシャ動かして何かを行おうとしている芋虫を無視しながら右手の杖を向け、一気に魔法を発動させる。
一瞬で杖の前に構築された光の玉が弾けるように飛び出し、ムクリと起き上がっていた芋虫の腹部にぶち当たる。そしてそのまま勢いを落とさず芋虫ごとぶっ飛び、後ろの木にぶち当たってボンッと軽く弾けた。
「うへぇ……」
ビチャ、とか、ブチュチュ、とか、そんな感じの音を出しながら木に張り付き、緑色の何かを放出している物体を見ながら思わず声が漏れてしまう。
やった。いや、殺った。しかしこれ……。
「解体しなきゃダメ……なの、か?」
結論を言おう。イヤだ!
汚れても浄化で綺麗になる? いや、そんな問題じゃない。
動物の解体は多少慣れたけど、これはダメだ。芋虫はダメだ。巨大芋虫はダメだ。
コレにナイフを突っ込んでグチャグチャグチュグチュとやって魔石を探してブチュッと引き抜くなんて僕には出来ない。
「キュキュ?」
色々と考え込んでいると、シオンが肩から飛び降りて、トットッと前方のアレに向かって走り始めた。
それを瞬時に察知した僕は電光石火の踏み込みで雷光のごとく走り寄り、その尻尾をムギュっと掴む。そして不思議そうにこちらを振り向いたシオンに真顔で告げた。
「いや、無理だから」
◆◆◆
それから暫く歩くと前方の木々が薄くなっているように見えた。近づいていくと、幅が二メートル程の道。草をかき分け、道に出て周囲を確認すると、道の左手、その先に村が見え、その入り口も確認出来た。
「あれがボロックさんの言ってた村かな?」
たしかボロックさんは『洞窟を抜けた先に村があって、その先に町がある』と言っていたはず。とりあえずあの村に向かうのが正解かな。
と、歩きかけて立ち止まる。
振り返り、木々が生い茂る森――僕が出てきた場所――を見た。
そこは、辛うじて『道だといわれれば道だといえない事もない』程度に地面が踏み固められた道らしきモノがあった。
もし、次に来た時にこの道を見付けられるだろうか。あのボロックさんがいた洞窟に戻れるだろうか、と考えたけど、『無理かも』という答えしか出てこなかった。
「……」
またあの洞窟に戻る事があるのだろうか?
さて、どうだろう。今の所、決まっているのはボロックさんから託された手紙を次の町で渡す事のみ。その後の予定は何もない。本来ならエレムの町でレベル上げをしながら情報を収集して次の行き先を決める予定だったけど、それが出来なかった。
「暫く次の町で情報収集かなぁ……」
その情報次第で別の地域に行くかどうかも決める。それ次第では、もう二度とここに戻ってこれないかもしれない。
それでも――
「……」
腰からナイフを引き抜き目の前の木に二撃。×印の切れ込みを入れた。
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