クラン編
洞窟を抜けた先の村
第141話 洞窟を抜けて
「太陽……何日ぶりだろう?」
苔むした洞窟の入り口から射し込む太陽の光に謎の感動を覚えて思わず見上げ、そして眩しさに目をやられて下を向く。
何をやってるんだ……。
改めて周囲を見渡すと、入り口の周囲は木々に囲まれた小さな広場みたいになっていた。振り返ると洞窟。その遥か上に見える山の頂。ここはまだ山の奥なのだろうか。
周囲を観察していると、フードの中がモゾモゾと動き、中からシオンが飛び出し、「キュ! キュ!」と鳴きながら広場の中を駆け回りだした。
「あっ! 遠くに行っちゃダメだから! ……って」
よく考えたらシオンは太陽を見るのは生まれて初めてなのか。こんな木々が生い茂った風景も初めてだよね。洞窟の中は植物もあんまりなかったし。
マギロケーションの有効範囲を最大まで広げて危険がないか探る。
うん、周囲にモンスターはいないようだ。暫く自由に遊ばせてあげようかな。
ボロックさんと別れ、暗い洞窟を歩き続けて数時間。ようやく洞窟から抜け、太陽の下に出られたけど、村はまだ遠そうだ。
何かの花に顔を近づけて「フンフン」と鼻を鳴らすシオンをチラッと確認して、広場の外周を歩く。膝のあたりまで伸びてきている下草が地面を隠していた。それを杖でかき分け、道を探る。
ここはボロックさんもたまに通ってるはずだし、道はどこかにあるはずなんだけど……。
と、洞窟の入り口の正面ぐらいの位置を杖でかき分けると地面が踏み固められて微妙に草が生えていない場所を見つけた。そのまま奥へ奥へと探っていくと、踏み固められた地面が一本の細い道のようになっていた。
「これかな?」
どうなんだろう? ボロックさんは洞窟を抜けた後の事は何も言ってなかったし、すぐに人里が見つかると思ってたんだけどなぁ……。下手に間違った方角へ進んで山の奥に入っちゃったら目も当てられない。
念の為に他の場所も調べたけど、道のようなものは見つからなかった。
「シオン、行くよ」
「……キュ」
「いや、そんなに名残惜しそうにしなくても……。また遊べるからさ」
シオンの首根っこをつまんで抱き上げてフードの中に入れる。
「キュ」っとひと鳴きしてフードの中から顔を出し、僕の肩に乗っかって、ぐでっとしているシオンを横目で確認してから例の道の方へと一歩を踏み出した。
それにしても……。動物を飼うのって、もっと色々と大変だったよね?
特に動物の子供の世話は大変だったはずだ。主に躾とかね。でもシオンは一度教えたら大体理解している気がする。さっきみたいな時でも聞き分けがいいし……。って、聞き分けがいいって時点で何となく僕の言葉を理解してるはずなんだよね。
聖獣、凄すぎ!
などと考えながら歩き、地面に杖をついた。
ちなみに、槍はボロックさんの家に置いてきている。壊れてしまって使い道がなかったしね。
槍以外の武器が杖しかなかったし、何もないよりマシだからとりあえずこの杖を持っているけど、とにかく早急に武器を入手しなくては。
最初の頃は杖をメイン武器にしていたのだけど、槍を一度持ってしまった後では杖という武器の頼りなさを感じてしまう。やはり刃が付いている武器は、それだけで安心感が違うのかもしれない。
早い内に次の武器は手に入れたいけど、せっかくだから良い武器にしたいし。良い武器を探すには色々と時間をかけて探して選定しなきゃいけないし。そう考えると小さな村とかじゃ良い武器は置いていないだろうし。
……なんて考えている時点で、次の武器は遠いのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます