第131話 誕生、聖獣リオファネル
「えぇっと……もう少し詳しく教えてくれないかな?」
するとリゼが両手を広げて机の上から飛び上がり、僕の周囲を飛びながら『え~い!』と叫ぶ。するとその両手からキラキラした何かが優しく流れ出し、僕に降り注いだ。
『こんなかんじ~』
「お、おう……」
う~ん……分かったような分からないような……。
「魔法……でいいのかな?」
何となく、リゼの出したキラキラなエフェクトからそう考え、以前この卵に使った事があるホーリーライトを使ってみる事にする。
「神聖なる光よ、彼の者を癒せ《ホーリーライト》」
僕の右手から出た輝く光が卵を包み込み、中へと吸収された。
『ちがーう』
「えぇ~違うのか……」
じゃあ何だろう? 別の魔法? それともまったく別の何か? ……まさかギューっと握りつぶ――いや、ないか。……ないよね?
『もっとギューっとね! ぶわぶわーっと!』
「ギューっと、ぶわぶわーっと……」
腕を組み顎に手を当てて考える。
う~ん……何だろう。そういえば、魔法を使う時はギューっと絞り出してぶわっーっと出しているような気がするけど……もしかして――
「――魔力、かな?」
『?』
リゼの方を見ながら聞いてみたけど、彼女もよく分かっていないような感じだ。
「まぁ仕方がないか」
こうなれば試行錯誤あるのみ。
卵を机の上に置いたまま両手で包み込むように持ち、魔法を使う時のように魔力をお腹の奥から引っ張り出して両手から卵へと送っていく。優しく、そして丁寧に。
『ギュー! ぶわっー!』
リゼがキラキラした何かを放出しながら卵の上をくるくると飛んでいた。どうやらこれで合っているっぽい。何となくそう感じ、安心して魔力を送り続けた。
「お?」
数分後、僕の魔力がなくなりかけてきた頃、何だか魔力の通りが悪くなってきたと思ったら急に卵がブルブルと震え始め、テーブルでカタカタと音を立てた。そして卵の表面にピシリとヒビが入り、これから中の子が自力で出てくるのだろうなぁ、とか僕が考えている間に、まるで陶器を地面に落とした時みたいに砕け散った。
「おおぉ!」
『おおー!』
「キュ?」
それは全身白色だった。手足は四本で、長い胴体は白色の毛に覆われ、大きな耳と大きな尻尾が目立つ。観察していると、生まれたばかりなのにパッチリ開いた大きな瞳と目が合った。
「……カワウソ?」
『カワウソー?』
「キュキュ?」
僕が知っている生物の中で似ているモノを挙げるとすれば、まず最初にカワウソ。しかし僕の記憶の中のカワウソにこんな大きな耳はなかったはず。
恐る恐るその白い生き物に手を伸ばす。ゆっくりと指先で触れてみるけど暴れたり噛み付いたりはしてこない。なされるがままだ。それを見て、両手で持ち上げて仰向けにしてテーブルに寝かせ、この子の両手両足の指と指の間を確認していく。
……そして何故かリゼもこの子をモフモフしている。
「水かきはない、か。それじゃあ……イタチ?」
『イタチー?』
「キュイ?」
いやいや、イタチもこんな大きな耳はないよね? ……まぁあんまり深く考えても仕方がないか。この子は聖獣リオファネル。それだけでいいよね。
「まぁ何だ……うん。とにかく、よろしくね!」
『よろしくー!』
「キュー!」
これからいつまで一緒にいられるのかは分からない。この子のお母さんを見付けるまでかもしれないし、いつかこの子が僕とは別の道を見付けるかもしれない。でも、何となくこの子とはずっと一緒にいる気がする。そう思いながらテーブルの上でじゃれ合う一匹と妖精を僕は眺めた。
「……そういえば、哺乳類って卵生だったっけ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます