第125話 暗闇の先、その髭は

Twitterで次回予告のようなモノを始めてみました。

しかし初っ端から予告した内容に無理があって変更になった模様(´・ω・`)



――――――――――――――――――――――――――――――



 白い粒が敷き詰められた幅四メートル程の洞窟。壁や天井は整えられているものの、岩盤剥き出しで――でも、苔や昆虫など動植物の姿は一切見えない。よく考えると、この洞窟に入ってから生物は何も見ていない。……いや、黒いスライムはいたか。まぁとにかく、あの黒い汚れに覆われて生きられなくなったのかもしれない。


「あっ」

 展開していたマギロケーションの反応に違和感を感じて小走りで先を急ぐ。

「嘘だろ……」

 神殿から真っ直ぐに続く洞窟の突き当り――いや、今は突き当りになってしまったけど外への道があるはずの場所。そこに外から土砂や岩が流れ込んで完全に塞がれてしまっていた。マギロケーションで探ろうとしても土砂の先まで届かない。ここを掘り返すのも無理そうだ。

 方角的に、こちら側にはルダの町があったはず。この道を進めれば洞窟を抜けられたはずなんだけど……。

「仕方がない、か……」

 そう言いながら左手側を見る。そこには細い横穴が西側へと続いていた。


 その横穴は幅が二メートル、高さは三メートル程。岩盤剥き出しの壁はゴツゴツしたままで、それまで歩いてきた道とは明らかに違って見える。この道は何のための道なのだろうか?

 そんな事を考えながら進んでいると白い粒で覆われた地面が途切れ、黒く汚れた地面が光源の光の下に現れた。どうやら巨大スライムを倒した時の余波で浄化されたのはここまでで、この先はまた汚れた黒い世界に逆戻りらしい。軽くため息を吐き、黒く汚れた地面を靴底でジャリジャリと鳴らしながら進む。

 曲がりくねった道を抜け、小部屋のようにくり抜かれた場所を一つ一つ確認し、突き出た岩を上り、坂道を下り、黒い水晶を採取しつつ何時間も歩いた。


「……?」

 何か音がしたような気がして足を止める。耳を澄ますと、遠くの方でかすかに何かの音が聞こえてきた。

 カチャカチャという何かが擦れる音。ザッザッという地面を踏みしめる音。慌ててマギロケーションを最大範囲にすると遠くに何かの気配を感じた。が、目では何も確認出来ない。

 自然と槍を持つ手に力が入る。暫くその場でじっとしていると、どんどん音が大きくなってきて、前方の曲がり角の先がぼんやりと明るくなってきた。そして暫くしてその曲がり角の先からヌッと現れる影。

 身長は僕の胸ぐらい。しかしその胴体は樽のようで、手足も丸太のように太い。その強靭そうなずんぐりむっくりな体を手の先までピッチリと服や手袋で覆い、目にはシュノーケリングで使いそうな大きなゴーグル。口と鼻をカラスマスクのような大きな布地で覆いつつも、わさわさした髭がわさっとはみ出ていた。そして背中の大きな鉄槌。

 ……ってドワーフ?

 彼はこちらをちらりと確認すると、歩調を変えずこちらに近づいてきた。

 革のブーツがザッザッと黒い汚れを踏みしめ、腰のランタンが金具と擦れてカチャカチャと音を立てる。

 そして――


「ヨーホイ」

 数メートル先で立ち止まった彼はこちらを向き、軽く右手を上げながらそう言った。

「よ、よーほい……?」

 何となく挨拶のような気がして、咄嗟にそれを真似て返してしまう。郷に入れば郷に従え、ではないけど、日本人らしく無難に相手に合わせとけ! なところが出てきてしまったかもしれない。

「……ふむ」

 するとドワーフ? らしき男は上げていた右手をそのまま顎にやって髭を撫で、数秒考えた後、口を開いた。

「人ならざる者……ではないようじゃの」

 そう言いながら彼は僕の全身をつま先から頭の天辺まで確認するように頭を動かした。

 人ならざる者、とは何なのだろうか? モンスターの事だろうか? それとも幽霊とかそういう存在の事を言っているのだろうか? そう考えていると、彼は言葉を続けた。


「しかしお前さん。死にたいのかの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る