第120話 最高神テスレイティア

「ゴホッ」

 それから何匹か黒いスライムを倒しながら二時間ほど歩き続けた。正確には分からないけど、既に山の中腹ぐらいには到達している気がする。

「これは今日中に山を越えるのは無理かも」

 仮に今から戻ったとしても、頂上に戻るために二時間必要として、そこから下山に数時間。山の反対側の近くにも村があるという話だけど、日がある内に村に到着出来るかは微妙なところ。安全を考えて通路内のどこかで野営する事も考えないといけなくなってきた。

 それにしても、この通路は何のために存在しているのだろうか。わざわざ山頂に入り口を作り、下へ下へとただ向かうだけの道にどんな意味があるのかよく分からない。利便性を考えるなら山の麓から横穴を掘るはずだしね。

「むしろこちらの道は非常口なのかも」

 そう考えた方が納得出来た。となると僕が気付かなかっただけで麓のどこかにも入り口があったのかもしれない。


「ん?」

 そう考えながら階段を下りて通路を進んでいると、目の前に壁が現れた。行き止まりだ。

 しかしマギロケーションには壁の先に空間の反応がある。

「《浄化》」

 とりあえず行き止まりの壁付近を浄化して本来の壁が見えるようにする。

 輝くオーラに浄化されて白い粒がバサバサと降ってくる中で壁を見ると、壁の中央部分が長方形――扉型に凹んでいて、奥にコの字型の取っ手があった。

 この取っ手を動かせばいいのだろうか?

 取っ手を握って力を入れようとしてマギロケーションの事を思い出し、最大範囲で敵がいない事を確認してから取っ手を押してみる。が、びくともしない。今度は左側へとスライドさせようとしてみる。これも動かない。そして右側へとスライドさせようと全体重を乗せて引っ張ると、ゴゴ、ゴゴと石が擦れるような音と共に少しずつ扉が動き始めた。


「おっ」

 扉をくぐると、天井まで三メートル程、奥行きは二〇メートル程の広い部屋になっていた。

 そして黒く汚れた壁や地面から隆起するように存在しているモノ。僕の頭上で光る光源の魔法に照らされて輝く闇色の結晶。

「……なんだろう」

 近くの壁際に生えている結晶に近づいて観察する。

 色は黒で半透明。大きさは粒のようなものから三〇センチ程度のものまで様々で。形は長細く、水晶のように見えた。

 黒いスライムが残した黒い魔石――闇の魔結晶を取り出してそれと比べてみる。

「似てるけど違うかな」

 闇の魔結晶ではないと思う。黒い水晶の方は中に筋が入ってたりするし、色も濃淡があって安定していない。それに闇の魔結晶の方が色が濃い気がする。

 う~ん……よく分からないけど、少し採取しておこう。

 ナイフを取り出し、柄の部分で叩き折って魔法袋に入れる。いつか何かに使えるかもしれない。


 次に、この部屋と通路を遮っていたモノを確かめる。

 黒い汚れで形は分からないけど、そこには縦二メートル程の何かの塊があった。

「《浄化》」

 パラパラと白い粒が落ち、そして出てきたのはローブを着た女性の石像だった。ゆったりとしたローブを着て、細かい装飾の付いた杖を持ち、柔らかく微笑む長髪の女性。

「あー……どこかで見たかも」

 どこで見たっけ? う~ん……あぁ教会かな? 教会の奥、一番目立つところで似たような石像を見たような気がする。えぇっと……名前は確か――


「あぁ……最高神テスレイティアだ」

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