第116話 山頂にある、その岩は

Twitter始めました。その日、アップロード出来そうかどうか更新情報などをつぶやいてます。

ポロリもあるよ!



―――――――――――――――――――――――――――――――――



 斜面に剥き出しの岩肌。大小様々な岩と岩の間を縫うようにくねくねと伸びる山道と、その両脇にまばらに生える木々。振り返ると青い空が見え、そして港町ルダが見えた。

 ルダの横には楕円形に広がる入り江。そこにいくつかの船が浮かんでいる。

 日本の漁師さんは夜に海に出て、朝に大漁旗をなびかせながら帰ってくるようなイメージがあるけど、この世界では違うのだろうか。やっぱり異世界の夜の海は地球以上に危ないのかもしれない。


 それにしても……。馬車が通れない、とは聞いてはいたけど、こんな岩の多い登山道だとは思わなかった。足を踏み外したら即死亡、というような危険な場所ではないし、人が余裕を持ってすれ違える程度には道幅に余裕はあるけど、傾斜が少しキツい。

「確かに、これだとモンスターも住みにくいかも」

 大きなモンスターだと特にね。

 モンスターはモンスターだけど正体不明の謎の敵でもUMAでもない。普通にその場所に生息している生き物なのだ。モンスターはそれぞれ生きやすい環境へと集まるのだろうし、わざわざ住みにくい場所で暮らそうとは思わないだろう。


「んん?」


 そのまま山道を登っていくと、ちょっとした違和感のようなモノを少し感じた。普通は分からない、マギロケーションを常時発動しているからこそ感じた小さな違和感。丁度、岩で死角になっている辺りに獣道のような細い隙間があるように感じたのだ。

「……モンスターはいないかもと思ってたけど、やっぱり何かいるのかな?」

 そういや、商店の親父は、、と言ったんだっけ。なら小さなモンスターはいるのか。

 生き物の痕跡を見付け、気を引き締め直して先へと進む事にした。


 砂利道を歩き、小川を飛び越え、大きな岩を迂回し、最後の石段を登りきった先にあったのは――


 ――絶景。


 目に飛び込んできたのは青く澄んだ空と隣の山の緑のツートンカラー。遠くの方には平原の緑。海側の山がここより高くて海は見えないけど、北と南は遠くまで見渡せた。

 振り返ると、さっき見た時より小さくなっているルダの町。そしてその奥にはこれまで通ってきた村もかすかに見える。更にその奥を見ようとしたけど、エレムは見えなかった。


 暫くその景色を楽しみ、大きく体を伸ばしながら深呼吸する。

「んー……はぁ」

 時間にしたら四時間もかかってないだろうけど、登山で普段使わない筋肉を使ったのか、少し疲れてしまった。そのまま軽くストレッチをしながら、改めてこの場所を確認した。

 ここは迷宮都市エレムがあったカリム王国と、これから向かおうとしているアルムスト王国とを隔てている山脈の山頂。その中でも比較的低い場所なんだろう。尾根沿いに見ていくと、すぐ近くにここより高い場所が見える。

 実質的にここが国境になるのかな。監視する人はいないけど。


 魔法袋から水筒を取り出し、中のエールで喉を潤した。

「やっぱり旨い」

 次にこれだけ旨いエールを味わえるのはいつになるのだろうか?

 現代日本みたいに好きな銘柄のお酒をワンクリックでポチッと注文出来れば楽だけど、当然無理だしね。保存とかの問題があるから遠くまでは輸出してないだろうしさ。

 まさにあの町だけの味。ここから去れば二度と味わう事がないかもしれない。


 そんな事を考えつつ乾燥肉を口に放り込み、早めの昼食を取りながら山頂の平になっている部分を探索していく。

 背の低い草木の間を抜け、ゴロゴロと転がっている岩を乗り越えると――


“エラルディンの扉”


「――えっ」

 そこにはがあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る