第107話 検証作業とギルドでの換金からの

「不浄なるものに、魂の安寧を《浄化》」

「アアア……」


 ゴーストが消えるのと同時に白い魔石――光の魔結晶がころんと地面に転がった。

「……」

 それに近づいて地面から拾い上げ、光源の光の下でしっかりと確認する。

 色は白色、形は楕円形、大きさは長い方が三センチ程……間違いなく前と同じ光の魔結晶だろう。


 地下一九階でマギロケーションを使いながら周囲の地形と地図に違いがないか確認しつつ、例の検証作業を続けていたのだけど……。いつもよりハイペースでゴーストとスケルトンを浄化の魔法で倒し続けた結果、今のゴーストから光の魔結晶が出た。

「いや……出てしまったと言うべきかな」


 光の魔結晶は金貨三〇枚で売れた。本来なら喜ぶべき事だろう。しかし今回、僕が望んでいた結果は、、だった。

「出てしまったのは仕方がないか……」

 ここからは検証方法を変えよう。



◆◆◆



 それから地下一九階を隅々まで探索した。しかし隠し部屋は見つからなかった。

 残念だけど、いくら僕の運が良いとはいってもそうそう都合良くはいかない。それに今日は光の魔結晶を引き当ててるしね。

 その光の魔結晶を引き当てた後、ゴーストはライトボールの魔法で倒し、スケルトンは杖で殴って倒すように変更した。これも例の検証作業の一環ではあるけど……しかし特に何も変わった物は出ず、探索を終了してダンジョンを出る事にした。

 まだまだ検証作業は続きそうだ。


 階段を上り一階に出て、帰る時間帯によく見る中年の兵士に軽く会釈しつつ建物の外へと出る。すると外は既に太陽が沈みかけていて、辺り一面が濃いオレンジ色に染まっていた。あと半時もすればこのオレンジも闇に飲み込まれるだろう。

「あー、検証に熱中しちゃったか」

 いつもはもっと早い時間に帰るのだけど、今日は夢中になりすぎて時間を忘れてたみたいだ。

 資料室の情報によると、エレムのダンジョンは二四時間営業らしく、いつでも出入り可能らしいから別に夜になってもいいのだけど、そうなると対応している宿屋も限られるだろうし、色々と面倒そうだから早い時間にダンジョンを出るように意識していたのだけど、今日は仕方がないか。


 何重にも張り巡らされた壁と門を抜け、大通りに出る。

 いつもは大声で客引きをしている露店や屋台も半分が撤収済みで、残りも多くが撤収作業中だった。一部の屋台は二四時間営業なのか光源の魔法やランタンを灯して仕分け作業をしている。

 まぁ地下一九階を主戦場にするようになってから、彼らに売れるようなアイテムはなくなったし、もう関係ないのだけどね。

 そのまま屋台を通り抜け、冒険者ギルドへと向かった。


 ギルドの中に入ると、入り口から見て右奥の酒場スペースで多くの冒険者達がワイワイガヤガヤと酒を酌み交わしているのが見えた。それとは逆に受付カウンターには数人の冒険者しか見えない。どうやら冒険者が帰ってくるピークは過ぎているようだ。

 列に並ぶ必要がなくてラッキーだな、と思いつつ空いてる受付へと進みながら背負袋から魔石が入った袋を取り出し、ギルドカードと一緒にカウンターテーブルに乗せた。

 ちなみに今回は光の魔結晶は入れていない。


「これをお願いします」

「はい、魔石の換金ですね」

 受付嬢はそう言いながら袋を開けて魔石を取り出し、いつもと同じように一つ一つ大きさと傷の有無などを確認していった。そして一通り魔石を確認した後、僕のギルドカードを手に取り、その内容を確認しつつ手元の木版に何かを書こうとしたところでピタリとその手が止まる。

「……?」

 何だろう? と僕が考えていると、彼女は再起動して木版に何かを書き写した後、僕の目を見てこう言った。


「ルークさん。この後、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

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