第98話 白い魔石

 とりあえずこの魔法袋を装着してみようと思い、ベルト部分の金具を外して腰に巻き付けて装着しみたけど……。

「……何だか、しっくりこないな」

 今現在着ているローブは頭からすっぽりと被って着るタイプのシンプルな白いローブで、その上からウエストポーチ型の魔法袋を巻いてキュッと絞ると凄く浮いて見える気がするし、これでは魔法袋が目立っている気もする。百歩譲ってファッション的なバランスには目を瞑るとしても、これが目立ってしまうのは避けたいところだ。

「うーん……そろそろ、このローブとはお別れするべきか」

 この魔法袋を便利に使えて、上手く服の下に隠せる装備……前開き型のローブ――つまりロングコートのような形のローブとかなら良いんじゃないだろうか?

 もしくは、そろそろ普通の鎧を買って、上から外套を羽織るとか。

 などとファッションショーのように頭の中で自分をあれこれと着せ替えていく。

「よし、お金もそこそこ溜まってるし近い内に防具屋に行こう。どうするかはそれから決めよう」

 そう考えながら、とりあえず魔法袋を外して背負袋の中に突っ込み、またダンジョンを歩き始めようとした時、後ろでゴゴゴゴと音がして開いていた壁が閉まっていった。そして扉が完全に閉まりきると今度は隠し部屋の中の左右の壁が中央に向かって部屋を潰すように動いていき、暫くすると部屋が完全に消滅した事がマギロケーションで把握出来た。今はもうマギロケーションでもそこに部屋があった痕跡を見付ける事が出来なくなっている。

「……なるほど」

 隠し部屋は中のアイテムを取るとこうやって消滅するのか……。しかし、あのまま部屋の中にいたらどうなってたのだろうか? ……想像したくないな。



◆◆◆



 さて、この階には隠し部屋があって、中に有用なアイテムが置いてあった。なら、まだそういう隠し部屋が残っていて、そこで未知のアイテムが僕の事を待っていてもおかしくないはずだ! と思って二〇階を端から端まで歩いて確かめてみたけど、何もなかった。そうそう都合良く隠し部屋なんてモノが見付かるわけがないのだ。


「《浄化》」

「アア゛ァ……」

 出てくるのをしっかりと確認しながらゴーストに浄化を至近距離でプレゼントしてやる。

 今の僕は、近くにいるゴーストの動きをしっかりと把握出来るようになり、ゴーストに後ろを取られる事もなくなっていた。

 どうやってゴーストの動きを把握しているのか、というと――当然ながらマギロケーションだ。空間を把握するマギロケーションの効果でゴーストも問題なく捉える事が出来ていている。

 そしてこのゴースト。今まで僕の目をごまかしてどこから襲ってきていたのかというと、こいつらは壁の中や柱の中に隠れて待ち伏せしていたのだ。どうりで分からないわけだよ……。


 そう思いながらゴーストが消えた場所を見ると――そこには白い魔石があった。

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