第97話 新アイテムゲットだぜ!の巻

 開ききった壁の奥を見ると、そこには二畳ほどの小さな部屋があり、その奥は小さな台が置いてあって祭壇みたいになっていた。以前、南の村の初心者ダンジョンの最奥で見た祭壇のようなモノと近い気がする。

 ――そしてその祭壇の上には、小さな鞄が置いてあった。


 ゆっくりと壁へと近づき、部屋の中へと開いている壁を確認する。

 扉? 壁? の厚さは三〇センチほどあって、かなり分厚かった。

「……部屋の中に入ると扉がバタンと閉まって閉じ込められる! とかないよね? ないよね?」

 まさかそんな古典的なオチはないよね? うん、ないな……って自分でフラグ立ててるだけな気がするな。止めよう……。


 意を決して部屋の中に入り、祭壇の上の鞄を引っ掴んでダッシュで部屋から出た。

「……よかった、特に罠とかでは、なさそう?」

 一安心しながら手の中の鞄に目線を移す。

 その鞄は茶色い何かの革製で、横は三〇センチ、縦二〇センチぐらい。鞄の両端からベルトが出ていて、その長さを調節する金具なんかも付いていた。形的にウエストポーチのように見える。

 フタになっている部分の留め金を外して中を開けてみると――

 ――闇があった。

「……これは」

 何だろう? ……いや、何となく分かるけど、まだ確証がない。しかし、ダンジョンの隠し部屋で祭壇の上に置かれていた鞄がただの鞄なわけない、とは思っていたけど、自分の中の常識をひとっ飛びで超えてくるこういうモノには驚かされるというか、頭が追いつかなくなるね……。


 鞄を床に置き、右手に持った槍を石突の方からゆっくりと鞄の中の闇へと入れていく。一〇センチ二〇センチと槍が闇に飲み込まれ、そして三〇センチ。明らかに鞄の縦幅を超える。その後も槍を闇に沈め続けると四〇センチ五〇センチと槍が鞄の中に消えていき、そして槍の刃の部分だけが残った。そこまで槍を沈めても底まで到達しなかったのだ。

 そこで少し考える。

「うーん……これ、槍から手を離してしまっていいものなのか……」

 実はこの鞄は入れた物を闇の彼方に消し去る鞄で、入れた物は二度と取り出せない。……みたいな事もありえるわけで。……まぁ、常識的に考えるならそんな事はないとは思うけど、その常識とは一体何なのかが分からなくなってきている最近の僕にはそういう可能性を否定出来るだけの材料がない。もしかすると、手を突っ込むと噛みついてくるミミック鞄の可能性だってありえるのだ。

「とはいっても、何か入れて検証してみないと分からないしね」

 そう言いながら槍から手を放すと、槍はスルッと鞄の中の闇に消えていった。


 さて、問題はここからだ。この鞄の効果を確かめるには、この闇の中に腕を突っ込んで槍を出してみる必要がある。

 ……まぁぶっちゃけ、十中八九これは魔法袋と言われているモノなんだろうし大丈夫だと思うのだけど……その確信がないのだ。

「うーん……」

 と言うか、僕がこんなリスクを負って検証する必要はあるのだろうか? 普通にギルドに持っていって職員に見せれば何か判別してくれるはず。それなら手間もかからないけど。

「……いや、ダメだな」

 魔法袋はそこそこ貴重なアイテムだと聞いた。そのってのがどの程度なのかが分からないけど、僕は今までその現物を見た事はない。その程度には貴重なのだ。少なくともDランク冒険者が持っているようなアイテムではないはず。だとすると、そんなアイテムを所持していると公言してしまうような行動は控えたい。

 つまり、多少リスクがあっても自分で検証するしかないのだ。


「まぁ……何とかなる! 何とかなる!」

 と気合を入れ、鞄の中にズボッと手を突っ込んだ。

 闇の中にズブズブと僕の手が飲み込まれていくと、心なしかひんやりした何かが手を包み込み、頭の中に不思議な感覚があった。

「?」

 何となく、槍がこのあたりにあるぞ、というのが感覚で分かる。そんな感じだろうか。その感覚に従い、手でそちらを探ろうとすると手の中に槍の感触が現れたので、それを握って引き上げていく。

 闇の中から鞘に収められた穂先が現れ、柄が現れ、そして石突まで出てきて、槍が戻ってきた。

「この鞄は魔法袋、という事で確定かな?」

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