第96話 壁を開ける呪文も開けゴマでいいのか問題
その壁に近づき、端から念入りに調査していく。
壁に貼り付き、壁を構成するブロックに隙間がないか確認してみたり。ブロックを押してみたりする。しかし特におかしなところは見つからない。
次はドアをノックするように壁をコンコンと拳で叩いてみたけど、他の場所と音が違う場所はなかった。
「……これは分からないだろうな」
僕はこの反則的な魔法があるから壁の裏側まで把握出来たけど、普通の冒険者では見付けられないと思う。
……いや、どうなのだろう? 自分で言っといて何だけどもさ。
上級の冒険者なら、こういう怪しい場所を発見する知識とか技能などを持っているかもしれない。だってそうじゃないと罠とか発見出来る気がしないし。
最初にダンジョンに入った人。或いは最初にクリアした人は、地図もなしにダンジョンに入って数々の罠を自分で発見して避けながら進んだはず。まさかトライ・アンド・エラーで罠に引っかかりながら進むわけにはいかないだろうしね。
……いや、ないよね?
……まぁでも、そういう冒険者達に発見されなかったから、こうやって隠されたまま残っているわけで……。実際のところ、どうなんだろう?
うーん……もしかすると、この階はゴーストが出たりして面倒そうだし、きちんと調査されなかっただけなのかもしれないね。
さて、それはともかく。今大事なのは、この壁をどうするか、だ。
壁に怪しい場所は見つからないし、少なくともこの壁に何らかのギミックが仕込まれているようには見えない。だとすると、他の場所に何らかの仕掛けがあるのだろうか?
と、考えて周囲の壁や床をくまなく調べていった。
壁に貼り付いて色々と触ってみたり、地面に膝をついて怪しい場所を探していく。が――
「――ないな……」
何もなかった。
「これだけ探して何もないなら、後は壊すしかないか……」
そう考えて槍を逆に持ち、石突を壁に突き入れる。
すると、ガツンという音を立てながら槍が弾かれ――僕の手が痺れた。
「……」
次は魔法を試しす事にして、ライトボールの魔法を全力で壁に向けて放ってみるも……ボンッとライトボールは壁で爆発し、無傷の壁が残った。
いや、無理ですよ! 無理! こんなの壊せませんって……。
その後も色々と試してみるも、壁に傷が入るぐらいで何も進展せず。途方に暮れてその場に寝転がった。
「あー無理」
無理すぎ。でも傷は出来てるから、頑張ればその内なんとかなるかもしれない。
今までライトボールの魔法で十分だったけど、今回は貫通力不足を感じた。もうそろそろ、ライトアローの魔法を覚えるべきか。いや……いっその事、鍛冶屋でウォーハンマーでも買ってこようか。なんて考えながら天井を見上げていると……。
「……あれ?」
天井に違和感があった。
立ち上がって光源の光の玉を更に上空に移動させるように念じ、明るくなった天井をしっかり観察すると、例の壁の前にある天井の一部分にだけ小さなブロックがはまっているのが見える。
「あれってスイッチだよね?」
以前、罠を見付けた時、床に設置されていたモノと似ている。
「ううむ……」
その場で腕を組んで考え込む。
あのスイッチらしきモノを押すべきか、押さない方がいいのか。
何となく、罠と似たスイッチ、というところが嫌だったのだけど……。
「いやまぁ、ここまできて押さないという選択肢はないけど、っね」
僕にしては珍しく即決し、スイッチに向かって跳躍する。
レベルアップによって強化された身体能力が地球人では到達出来ない高さまで僕を運ぶ。それを何だか面白く感じつつ、頂点に達した瞬間、槍を突き入れると、槍先がカツンとスイッチに当たり、カコンとブロックが奥に凹んだ。
それを確認しながら地面にストンと降り立つと、目の前の壁が二つに割れ、観音開きの扉のようにゴゴゴゴと開いていった。
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