第95話 皆さんやっとサブタイ詐欺じゃなくなりましたよの回
“マギロケーションの魔法書”
“神聖魔法の魔法書”
いつものように頭の中に浮かんだ言葉に、ほんの少し驚いて首を傾げる。
「あれっ……順番的にホーリーウォーターとかそんな感じの魔法だと思ってたんだけど」
まぁそうそう都合良く出てくるわけないよね。
そう考えながら周囲を見回し、安全を確認してから魔法書を開く。はらりはらりとページをめくる度に魔法書から何かが僕の中に流れ込んできて、僕の中に何かが構築されていく。そして全てを読み終わるといつものように魔法書は燃えて消えていった。
頭の中に残った新しい魔法に関する情報をまとめて形にしていく。
「うーん、これは……」
まぁとりあえず使ってみた方が早いかな。
右手を目の前に掲げ、頭の中に新しく刻まれた呪文を詠唱する。
「その力は全てを掌握する魔導。開け神聖なる
腹の奥底から魔力が溢れ出し、体中を駆け巡って右手へと集まり、手のひらから溢れ出す。その瞬間、僕の周囲を目に見えない何かが包み込み、そしてその何かが渦を描くようにグルグルと周辺へと拡散していった。
「……」
目を閉じ、ぐるぐると部屋の中を歩いてみた。
何だか……凄く面白い感覚だ。目は閉じているのに周囲の状況が把握出来ている。どこに壁があるのか、どこに扉があるのか……そしてその扉の向こう側の通路まで把握出来てる。
目を開け、腕を組みながらこの魔法について考察していく。
まず効果範囲は半径一〇メートルほどだろうか。その範囲にある物について、目で見なくても把握出来ている。つまり後ろ側についてもだ。
その場に屈み、地面を触る。
次に地面と天井について。これに関しては……よく分からない。石のブロックが数一〇センチほどの厚みで存在しているような感覚はあるけど、その先が把握出来ない。これがダンジョンだからなのか、それとも地中は把握出来ないのか、それは現時点では不明だ。
「でも、中々面白そうな魔法だよね」
◆◆◆
二〇階を徘徊しながら色々と考えを巡らせる。
何か……何か違和感があるんだ。先程、マギロケーションの魔法書を手に入れた辺りから、違和感というべきか、見落としとでもいうか、何か忘れているような気がするのだけど、それが分からない。点と点が繋がらない。まだ何かの情報が足りない、けど何かがある気がする。僕の直感がそう告げている。
これが地球にいる時ならば、ただの気のせい、の一言で済ませられる話だ。しかし僕はあの例の白い場所で自分のアビリティを把握した。そして自ら〈直感〉のアビリティを取得している。つまり、今の僕の直感はそれなりに信用出来るはずなのだ。
とは言ってもパズルのピースが足りない以上、中々正解が見えてこない。でも見えてこないからと言って考えるのを放棄するのは違う気がする。
「うーん……うん?」
考えながら歩いている内に一番外側の通路まで来ていた。
そのまま歩き、外側の壁の前で止まる。
「これは……」
マギロケーションで把握する限り、地面や天井と同じく、この壁も数一〇センチほど石のブロックがあって、その先がどうなっているのか分からない。
何だかこの階層が外界とは完全に切り離された空間のように感じ、少し怖くなってくる。
何となく不安な気分になりつつも、そのまま外周沿いに進んだ。
「……あれ?」
暫く外周を歩いていると、ふと違和感を感じた。
マップを確認して、目視で確認して、そしてマギロケーションで違和感を確認する。
そしてそのまま歩き続け、その場所で立ち止まって首を傾げる。
その場所は地図で見ても目で確認してもただの外周の壁で――
――マギロケーションでは奥に空間が確認出来たのだ。
「……これって、隠し部屋? とか?」
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