第91話 実験、検証

「……ア……ァ」

「光よ、我が敵を撃て」


 そのまま一九階を探索していると、また例の声が聞こえてきたのですぐに呪文を詠唱した。

 色々と考えたけど、結局ゴーストがどこからどうやって現れてるのかは分からなかった。でも、とりあえずだけど対処法になりそうなモノは思いついたのだ。それがこれ――


「……ア゛ア゛ア゛ァァァァ」

「《ライトボール》」


 背後から声が聞こえた瞬間、振り向きざまに魔法を発動する。

 右手に集まった魔力が光の玉となって飛び出し、ゴーストに命中してボンッと軽く爆発。ゴーストは「ア゛ァ……」と断末魔の叫びを残しながら消えていった。


「ふぅ」

 ゴーストが完全に消えたのを確認して息を吐く。

 やっぱり二回目でもまったく慣れない。ほんとこいつは心臓に悪いや……。


 ゴーストがどこからどうやって現れているのかはよく分からなかったけど、現れる前にその前兆として声がする事は分かった。なのでゴーストの声が聞こえたら、とにかく攻撃魔法を準備して、姿が確認出来た瞬間に魔法を発動させ、攻撃される前に瞬殺する、という方法を試したところ上手くいったのだ。

 後手に回ると言うか、受け身になるような戦法だけど、ゴーストに瞬間攻撃力の高い攻撃がないからそこそこ安全にやれてる感じだろうか。


 色々と考えながらゴーストが消えた場所まで進むと、そこには魔石が落ちていた。

 その魔石を屈んで拾う。

「魔石だ」

 そう、ただの魔石だ。最初に倒したゴーストは黒い魔石を落としたけど、このゴーストが落としたのは普通の魔石。これは最初のゴーストと今のゴーストに何か違いでもあったのだろうか? それとも倒し方に違いがあった? もしかするとあの黒い魔石はレアドロップだったのだろうか?

「現時点では分からないな。もう少し数を倒さないと」



◆◆◆



「《ライトボール》」

「ア゛……」


 断末魔の声を上げながら消えていくゴーストを見送り、床に落ちた魔石を拾う。

「やっぱり黒い魔石はレアドロップなのかも」

 そう言いながら魔石を光源の魔法にかざしてしっかりと確認する。

 光が当てられた魔石はくすんだ赤紫のような色をしていて――やはり普通の魔石だった。

 最初にゴーストを倒してから、ゴーストにはライトボールを放って消滅させ、スケルトンには槍の石突をお見舞いして粉砕し、計一〇体ほどのモンスターを倒したけど、やはり黒い魔石は出てこない。まだまだサンプル数は少ないものの、今の所、黒い魔石はレアドロップな可能性が高そうだ。


「さて……」

 何体かゴーストを倒し、ゴースト退治には慣れてきた。いや、ゴースト自体にはまったく慣れないけどさ……。

 とにかくそろそろ新しい事を試してみてもいい気がする。

「で、何から試していくかだけど……」

 パッとすぐに思いつくのは、スケルトンの時のように神聖魔法の効果調査だろうか。……あぁ、ゴーストもホーリーファイアから逃げるのかどうか確かめる必要があるな。



◆◆◆



 相変わらず静寂に包まれた二〇階の通路をコツコツコツと足音を響かせながら二一階の階段へと向かって歩く。

 ふと、この階層には僕以外に誰もいないのではないか、という錯覚に襲われる。いや、実際誰もいない可能性が高いのか。

 このダンジョンは五階ごとに転移碑という所謂ワープ装置があり、一度でも触った事のある転移碑にはどの階の転移碑からでも行けるようになる。つまり最初に一度通り抜けさえすれば、用事がない者がこの階に来る事はない。そしてこの階に用事がある者はかなり少ないはずなのだ。


 歩きながら、さっきまでやっていた実験の結果を思い出す。

 実験――つまり、ゴーストにそれぞれの神聖魔法を使ってみて、その効果を見る実験だけど。結論から言えば、スケルトンとほぼ同じで神聖魔法の効果は高かった。ただ、ゴーストはスケルトンより魔法耐性が低いのか体力が低いのか、どの魔法でもすぐに消滅させる事が出来た。

 そしてもう一つの実験について。

 右手のひらでメラメラと燃えている白く輝く火の玉に目線を移す。

 こちらも成功と言えるだろう。ここまでこのホーリーファイアを手のひらの上に出したまま歩いてきたけど、一度も襲われていない。何度か骨がカラカラと鳴る音や、ゴーストのあの声も聞こえたから近くにいたんだろうけど大丈夫だったし。

 しかし、そろそろこの白い火を消した方がいいかな。階段に近くて、もし人がいたら、ってのもあるんだけど、魔力量的に少し厳しい。これを出しっぱなしにしておくと地味に魔力を消費し続けるからね。

 この魔法をモンスター避けとかに使用するなら、何か持ち運び方法を考えないといけないかな。松明とか、ランタンとか、魔道具とか……あぁランタンは買って試してみてもいいかも。もし、この白い火をランタンに移して使用出来るなら色々と使い道が見えてきて面白そうだ。

 そう考えながら白い火の玉に消えるように念じ、消滅させた。


 それにしても……薄々気が付いてはいたけど、僕の魔力量はそれなりに多い気がする。少なくとも同ランク帯の冒険者よりは多いはずだ。魔力消費量が多めな神聖魔法をいくつか使ってもまだ多少の余裕があるし。以前、ランクフルトでスタンピードがあった時、皆が同じペースで魔法を使っていたから他の人と比べやすくて差を感じたのもある。

 まぁ魔力量を計る装置とか、鑑定能力とかで数値として見れたわけではないし、はっきりとは言えないのだけどね。

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