第80話 初めてのスケルトンと試行錯誤

 それからは罠を避けながら一六階を歩き回っていると、通路の先の暗闇からカシャンカシャンと音が聞こえてきた。

「……なんだろ?」

 その場に立ち止まって警戒していると、それが次第にカシャンカシャシャカシャと不規則な音を立てながら近づいてきて――そして暗闇から髑髏がヌッと現れた。

「っ!」

 その迫力に気圧され、後ずさりそうになるも、踏みとどまって槍を構える。

 ここに、この階にいるとは分かっていても、実際にこうやって暗闇から現れるのを見ると、やはり怖さを感じてしまう。夜の学校の理科室で見る人体模型も怖いだろうけど、は実際に動いてるし、こちらを殺しに来ているわけで、怖さのレベルが違う。


 カシャカシャと暗闇から完全に姿を表した骸骨――スケルトンをよく見ると、右手に錆びた剣を持っていた。

「剣か……錆びていても厄介かも」

 こちらの世界に来てから、剣を持つ相手と戦うのは今回が初めてになる。日本でならそういう練習はした事があるけど、当然ながら真剣を持つ相手と戦うのは初めてだ。

 槍を持つ手に力が入る。

 首筋とか下手な場所に一撃貰うと致命傷になりかねない。一撃も貰わないようにしないと……。

 と思っていると、スケルトンが剣を振りかぶって斬りかかってきた。

「っと! はっ!」

 それをバックステップでかわし、スケルトンに槍を突き入れる。

 槍の先がスケルトンの肋骨に当ってカタンと軽い音をたて、その衝撃でスケルトンの顎の骨がカタカタと震え、その歯がカチカチカチと不気味に鳴った。

 そしてスケルトンは何事もないように剣を振り上げ、またこちらに斬りかかってくる。

「まぁそうですよね! っと」

 バックステップで距離を取りながら考える。

 事前の情報通り、弱点は胸の魔石。他の場所に槍を突き入れたところで特にダメージはなさそうだ。

 うーん……魔石をピンポイントで狙うのは難しそうだし、魔石を壊すと魔石をドロップしなさそうだし……やはりその体を砕くしかないのかな。

 そう考え、スケルトンの剣を槍で弾き、そのままの勢いでくるりと回転しながら槍の石突を横からスケルトンの肋骨へと打ち込んだ。

 石突は肋骨にガンッと当たり、そしてそのまま肋骨を滑り抜けて背骨にガツンと当たる。

 スケルトンは衝撃でブルブルと震え、カタカタと不気味な音を立てた後、また剣を振りかぶろうとした。

 それを察し、慌てて飛び退く。

「ちょっと、想像以上に丈夫すぎ!」

 関節がないはずなのに、骨は謎の力でくっついていて外れないし。血肉もないはずなのに、地面にどっしりと根を下ろしたように重たくて吹っ飛ばせない。

「……これは時間かかるかも」



◆◆◆



 それから何度も何度もスケルトンの攻撃を避けながら石突を叩きつけていると、スケルトンが自壊するように崩れていき、骨が周囲に散らばった。

 そして暫くすると散らばった骨が地面へと消えていき、魔石と錆びた剣がその場に残った。

「はぁ……これはちょっと、武器の相性が悪すぎる気がするね」

 槍の使い方は色々とあり、集団戦では槍衾とか上から叩きつけたりとか色々とあるみたいだけど、少なくとも一対一の戦いでは遠くから相手の急所を突いていく武器だ。こういう相手には不向きだと言えるはず。

 かと言って、剣を持っているスケルトンに対して、背負袋に入っている杖で殴るのも怖い。

「うーん、これは何か考えないとダメなのかも」

 色々と考えながら魔石を拾い、そして錆びた剣を拾う。

 そして隅々まで確認してみる。

「うん、これはただの錆びた剣だな」

 剣全体が真っ茶色になるまで錆びていて、ボロボロと表面が崩れている場所もあり、当然ながら刃こぼれも酷い。素人目にも、これに剣としての価値はないと分かる。

 問題はこの剣を持って帰るかどうかだけど……止めとこう。鞘もないこの剣を背負袋に入れると袋が破けそうだし。価値的にも鉄としての価値ぐらいしかないだろう。

 そう考えて錆びた剣を地面に放り投げ、先へと進んだ。


 暫く進むと、また前方からカシャンカシャンと骨の音が聞こえてきて、スケルトンが暗闇からヌッと顔を出した。二回目でも暗闇から髑髏が飛び出してくる絵面には慣れず、ビクッとしてしまう。

 やっぱりアンデッドは好きになれないや。


 さて、早速出てきたスケルトンに新しい事を試してみようと思う。まずはアンデッドに効きそうな呪文を端から試していく事にする。

 そう決めて、スケルトンがこちらへと来る前に素早く最初の呪文を詠唱した。


「光よ、我が敵を撃て!《ライトボール》」


 まずはこれだ。僕が持っている唯一の攻撃魔法。そして光属性だからスケルトンとは相性が良いのではないかと思う。

 僕の右手から放たれた光の玉は、スケルトンの胸へと吸い込まれてボンッと爆発した。

 スケルトンはその爆発に軽く吹き飛ばされ、暗闇の中へと消える。

「……」

 一瞬どうするか迷ったけど、どうなっているか確認するために飛ばされたスケルトンを追いかけた。


 一〇歩ほど先へと進むと、スケルトンがカシャカシャと音を立てながら立ち上がろうとしているのが見えた。

 一撃で倒すのは無理だったけど、予想通りそこそこダメージがあるっぽい。

 このまま次の魔法を試そうか考えたけど、ボロボロになっているスケルトンを見て止める事にする。そして槍の石突でスケルトンの頭蓋骨を横から思いっきり振り抜いた。

「はっ!」

 気合と共に放たれた一撃がスケルトンの頭蓋骨を吹き飛ばす。

 そしてスケルトンの首から下の骨がカシャカシャカシャと音を立てて崩れていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます