第77話 魔法武具と属性武具
「ミスリルは軽くて強度が高い。武具を作るのには最適な金属さ。それに魔力の通りも良いから魔法武具や属性武具にもしやすい」
彼は僕の隣まで歩きながら、そう言った。
魔法武具? 属性武具? そんな言葉、今まで聞いたことあったっけ? うーん……ないような気がする。アーティファクトの事だろうか? それともアーティファクトの親戚か何かかな?
ミスリルより重要そうな単語が出てきて気になったので聞いてみると、彼は僕に槍を渡しながら答えてくれた。
「魔法武具は魔力を流すと魔法効果が発動する武具。魔道具化した武具だね。そして属性武具は属性を付与した武具の事。魔法効果はないけど属性効果が付いて、その属性の魔法発動体にもなるんだ」
なるほど。何となく分かった気がする。けど、分からない事も多いな。
「ちなみに、その剣はただのミスリルの剣だよ。うちは普通の鍛冶屋だからね。魔法武具も属性武具も特殊な技術がある人とか、魔法の上手い人にしか作れないんだ」
魔法武具も属性武具も普通の鍛冶屋には作れない……か。一体どういう物なのか、一度見てみたいな……って、よく考えたら魔力を流すと魔法効果が発動するって、前に使ってた麻痺のナイフの事じゃないの?
あれはグレートボアを倒す時に壊れちゃったけどさ。
その後、気になった事をいくつか質問して、店を出た。
◆◆◆
裏通りを歩きながら色々と考えていく。
魔法武具、属性武具について色々と分かったけど、分からない事も多かった。
まず魔法武具。これは武具に魔道具を組み込んだような物らしい。武具に組み込まれる魔道具は当然だけど強力な物だ。剣に火種の魔道具を組み込んでもピストル型ライターみたいなおもしろネタアイテムになるだけだからね。
そういう強力な魔道具を武具に組み込むには武具の方にも細工が必要だったりするので、鍛冶の技術と魔道具の技術の両方が必要だから作るのが難しい、らしい。
能力に関しては、武器に魔法を纏わせる物と、魔法効果を飛ばす物が多いとか。
総合的に考えてみると、メリットは魔力を流すか魔石をはめるだけで魔法が使える事と、発動する魔法の威力が使用者の魔法能力によって増減するらしい事だろうか。
魔法を発動するには集中しながら呪文を唱える必要があるけど、魔法武具ならそれを省略して一瞬で行える。そしてその威力は、恐らく使用者の属性適正かINTで補正がかかるっぽい。
逆にデメリットは、物に魔力を意図的に流せる人が少ないため、使える人が少ない事。魔法能力で威力が増減するため、魔法能力が低い人が使ってもあまり強くない事。技術的に強力な魔法が組み込めない場合が多い事。値段が高い事。など。
つまり使える人が限られてるという事だろうか。
次に属性武具について。
属性武具とは、武具に属性を付与した物。具体的に言うと、武具に魔結晶を融合させた物らしい。魔結晶とは魔石がモンスターの中で特定の属性に偏って変質した物らしく、稀にモンスターから出てくるのだとか。それを錬金術で武具と融合する事でその属性を武具に付与する、らしいけど、彼も専門外なのか詳しい事は知らないようだった。
そして属性武具のメリットは、単純に装備に属性の効果が付いて性能が上がる事。魔法の発動体として使うと、魔法の属性と属性武具の属性が同じ場合は威力が上がる事。
デメリットは、その属性以外の魔法が使いにくくなる事と、値段が高い事。
なので、属性武具は扱いやすいので人気らしい。
以上の事を鍛冶屋の親方に怒られるまで彼から聞き出したのだけど……結局のところ、問題なのは値段だ。どれも金貨で二〇枚以上は当たり前。金貨が一〇枚単位で動く世界の話なので、当面は僕が関われる話ではなさそうだ。
◆◆◆
そんな事を考えながら道を歩いていると、前方の建物が何だか騒がしい事に気付いた。
気になって近づいてみると、石の壁と開かれた木製の門があり、中には石で出来た二階建ての建物があった。そしてその建物の三角屋根の上部には星型、五芒星のマークが見える。
「……教会?」
石造りで、雰囲気が他の建物とは違っていて、ヨーロッパの古い教会のように見える。
ちらりと目線を下にズラすと、その建物の周囲に冒険者風の人達が一〇人ほど集まって何かをしていた。
勝手に敷地に入ってしまっていいのか気になったけど、冒険者風の人が沢山いるから大丈夫だろうと判断して、こっそり彼らに近付いていくと、彼らが武器や鎧に紙を巻いている事に気が付く。
……この人達は何をしてるんだ?
不思議に思いながら彼らの後ろでひっそりと見守っていると、彼らの中の一人、紙が巻かれた剣の前で跪いていた男がいきなり叫び始めた。
「頼む! 神様! 俺の最後の属性武器だ! 成功してくれ!」
そして彼は両手を剣に巻かれた紙に押し付け、「武具強化! いけ!」と叫んだ。
男の後ろにいる男の仲間っぽい人達も、「頑張れ!」とか「成功して!」とか叫んでいる。
次の瞬間、その紙が光り輝き、青白い炎と光を放ちながら燃えていき、青白い光が剣を包む。
そして数秒後、男の剣が光の中でホロホロと崩れて消えていった。
まるで焼かれた紙が炭になって、灰になって消えていくように。
「……ア、ア、アァ……アアァ……」
男は、壊れたロボットのように何かを発しながら、崩れて消えていく光を掴もうとして手を伸ばすも、光はその指の間からすり抜けていった。
そして、沈黙が続く。
暫くすると、仲間らしき男が「……帰るぞ」と言いながら、男の脇を抱えるようにして引っ張っていった。
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