第30話 風の団

 宿を出て、その足で冒険者ギルドへと向かった。

 ギルドの扉を開けて中に入り、受付には行かずにテーブルが並んでいる方へと歩く。

 ここで彼等と待ち合わせているからだ。

 朝なのでギルドの中には冒険者がいて、今までとは違い視線を集めてしまう。

 昨日の今日なので仕方がないし、別に悪い意味での注目ではなく、むしろ良い方の注目だから問題はないけど、若干、居心地が悪い。

 元々こうやって注目される事にはあまり慣れていないのもあるけど、やはりあの魔法に関しては、あまり注目されるべきではない、という気持ちがあるので余計に落ち着かなくなるのだ。


 入り口の近くに座っていた彼等をすぐに見つけ、話しかける。

「おはよう。えーっと、座っていいかな?」

 一応、確認を取ってから空いてる席に座った。

「おう、おはようさん。あー、何だ……。いきなりで悪いが、気持ちは決まったか?」

 挨拶もそこそこに、ダンがいきなり切り出した。

 メルが「いきなりすぎ! もうちょっとこう、何かないわけ?」と突っ込んでいるが、ダンが答えを急ぐ理由も理解している。

 彼等は町からの護衛依頼でこの村に来た。そしてこの村で一泊して、また護衛しながら町へと戻って依頼達成となる。つまり、彼等は今から町に戻るはずで、下手をすると今も依頼主を待たせているかもしれないのだ。

 そういう事情は聞いたけど、無理を言って朝まで返事を待ってもらっていた。

 それは理解していたので僕もさっくりと答えを返す。

「うん。このパーティに入れてほしい。これから、よろしく」

 そう言って僕は右手を差し出した。

「そうか! これからよろしくな!」

「よろしくね! これでうちのパーティも回復持ちよ!」

「よろしく」

 三人とそれぞれ握手していく。

 若干一名、心の声がダダ漏れな奴もいるが……まぁ良しとしよう。

「よしっ、じゃあすぐに出発するぞ。依頼主を待たせるのはマズい」

 ダンがすぐに立ち上がって扉へと向かう。

 それを見て他の二人も立ち上がり、僕も慌ててそれに続いた。


 と、先頭を歩いていたダンが急に立ち止まって振り返る。

 そしてそれに釣られて僕達も立ち止まる。

「あぁ! 忘れてた。俺達のパーティは風の団だ。うん、えーっと、そういう事だから。つまり……ようこそ、風の団へ! ……って事で」

 ダンは慌ててそう言い、僕達を見た。

 それを見てメルはため息を吐き、ラキは苦笑いしている。

 僕も少し苦笑いしてしまった。



「ほっんと、締まらないわね……いっつも大事な時はこうなんだから」

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