第24話【閑話】とある冒険者の帰り道
「何を目標に冒険者をしているのか……か」
彼は夜道を歩きながらそうつぶやく。
若い頃は目標なんて腐るほどあった。いや、その頃はそんな小難しく考えず、ただがむしゃらに突っ走っていただけだった。
しかし今はどうだろうか。
四〇も過ぎた今は大きな仕事も受けず、日銭を適当に稼いでいるだけだ。勿論、若い頃に貯めたそれなりの蓄えもあるので、無理をして大きな仕事をする必要がないのもある。でも、昔のような熱量が残っていたのなら今も何かに向かって走り続けていたはずだ。
結局のところ自分は枯れてしまったのだ、と彼は気付かされてしまった。
「……そろそろ潮時ってやつか」
そう言葉に出すと、意外とすんなりと受け入れられた。
ふと立ち止まり、目を瞑って若い頃を思い出す。
最初に組んだパーティ。
実力は並だったが、気の良い奴らだった。
メンバー同士で結婚して引退した奴。引き抜かれて騎士になった奴。そして、ダンジョンで命を落とした奴。
皆、良い奴等だった。
水の都にも行った。
その光景に圧倒された。
清浄な水が街中に溢れ、水路を走る。
広場の噴水からは水が天高く噴き出し、街へと降り注ぐ。
街の人々も小綺麗で、どこか洗練されているように見え、田舎者まる出しでキョロキョロとしていた自分がなんだか恥ずかしくなった。
魔の森にも行こうとした。
十分に準備して臨んだのに、辿り着く事すら出来なかった。
そして自分の実力を、現実を知った。
次々と昔の思い出が蘇る。
「……いかんな。坊主に煽られて飲みすぎたか」
彼は満天の星空を見上げた。
この日の星はいつもより霞んで見えた。
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