第12話 最初の一歩は

 軽く杖を振り、感覚を確かめながら壁沿いに歩いて村への出入り口を探す。

 体の感覚が今までと明らかに違う。能力の高い種族にしたからか、少し若返ったからか、エネルギーが体中に溢れている感じがして体が軽い。五〇ポイントも使った種族にはそれなりの効果があったのかもしれない。


 僕がいた側の壁には出入り口は無かったけど、少し歩いて角を曲がったら少し先に大きな門が見えた。門は開かれているようで見張りなどは見えない。出入りするには何かチェックされるのでは、と思っていたけど、ないみたいだ。

 いやこれは助かる。身分証明書みたいな物が存在するのかは知らないけど、それがなかったとしてもこの世界に関する質問には何も答えられないし。どこから来たんだとか聞かれるだけでもアウトになっていた可能性があった。


 さて、これからファーストコンタクト。少し緊張してきた。

 出来るだけ不自然にならないように、堂々と歩いて門を抜けた。

 門の中は、まさに“映画に出て来る中世の村”という感じで、門から続く、幅が五メートルほどの通り沿いに何軒かの店が並び、その後ろにも何軒もの民家がある。家はほぼ木製で、窓はあるがガラス窓ではなく木の板がはまっている。高さは一階建てか二階建てが多いみたいだ。

 何人か歩いている人も見えるが、見た目は地球で言うところの西洋人に近い。

 ただ、ケモノ耳が頭の上に付いてる、所謂獣人という感じの人もいて、やはり異世界だなと実感する。

 若干テンションが上がるが、顔に出さないように、そして、獣人? の人をジロジロ見ないように気をつける。この最初の段階から揉め事とか、ここの住人に怪しまれるような行動はしたくはないし。

 ここの人口は、見る感じでは数百人というところだろうか。何を主産業としている町なのかはわからないけど、店らしきものが数軒並んでいる事からして、そこそこ外から人がやって来るのだろう。


 とりあえず、歩いている人の中から剣などの武器を持っていない普通の村人っぽい人を選んで話を聞く事にする。

 通り沿いで何か作業をしていた髭の生えた中年男性に声をかけた。

「こんにちは。すみませんが、この村に魔法書を売っている店などはありますか?」

「ん? それならそこに見えてる雑貨屋でも売ってるはずだが……。あんた魔法使いか何かなんだろ? そんな人が欲しがるような魔法書なんてこんな小さな村には置いてないぞ」

 と言って彼は通りにある店を指差す。

 よしっ! 当りだ。

 この“魔法書”とは何かと言うと、恐らく魔法を覚えるために必要な本のはずだ。何故それが分かったか、というのは簡単な話で、例のあの場所でウィンドウの〈アイテム〉の中に魔法書という物があり、SPで手に入れる事も可能だったのだ。説明文にも魔法を覚える本と書いてあったし、ほぼ間違いないとは思っていた。

 SPで買わなかったのはSPがもったいなかったのもあるけど、交換に必要なSP量からしてそんな高価な物ではないと予想したからだ。それなら現地でお金を貯めて買えばいい。

 他にも幾つか質問し、村人にお礼を言い雑貨屋に向かう。

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