第4話 情報交換をしよう
「とりあえず近いところから順に話を聞いてみたが、いくつか面白い事がわかった」
そう切り出したマサさんの周りに全員が集まった。
僕も一旦作業を中断して話を聞くことにする。
「まず、この周囲にいた人達が何者か、なんだがな。アメリカ人、フランス人、イタリア人、メキシコ人、中国人、そして日本人などなど、全員バラバラだ。まぁ何故か日本人が他より多かった気がするが、全員と話したわけではないから正確なところまではわからないな」
なるほど。地球から様々な人が集められているという事なのだろうか……。いや、でもそれだと……。
「で、だ。もう気付いた人もいるかもしれんが……。言葉が、言葉が通じてるんだ。俺は英語なら多少は喋れるが、流石に他の言語はまったくわからん。なのにだ、普通に、当たり前のように様々な国籍の人同士が喋れているんだ」
マサさんはそこで一旦、言葉を切った。
少し興奮しているようにも見える。
「そこで色々と調べてみたんだが、〈アビリティ〉の欄に〈言語〉というものがあって、それが最初から選択されていた。それで、気付いたんだがな。皆、今……何語で話している?」
その一瞬、何を言われてるのか分からず、呆けてしまう。
が、次の瞬間、驚愕で全身に電流が走ったかのようにビクッとして、次にじわりじわりと寒気が訪れた。
……僕が今、頭の中で考えているこの言葉は何語なんだ? さっきまで自分で話して聞いていたけど聞いたことがない言語だし、当然日本語ではない。聞いたことがないはずの言語を母国語のように、当たり前のように自然と喋っていた。
今は日本語が外国語のように感じる。
少し血の気が引くような感じがする。頭からスッと血が落ちていくような感覚だ。
想像以上に堪えるのだ。自分が勝手に書きかえられるというのは。
さっきまでもちゃんと理解していたつもりだったけど、やはり理解していなかったのかもしれない。
人の想像の域を超えた、神の力、というものを。
僕は今、それを改めて思い知らされた。
「言葉についてはそれだけなんだがな。あとは、ここに集まっている人の共通点を調べてみようと色々聞いてみたんだが、残念ながらこれといった共通点はないようだった。……最初は、全員リスタージュのプレイヤーかと思ってたんだがな。それどころかゲームの経験自体がない人すらいたぞ。年齢的にもバラバラで、一〇代もいれば老人もいたな」
なるほど。僕も何となくゲーム関係の繋がりなのかなと思っていたけど、違うんだな。しかし、だとしたら僕達はどういう理由で選ばれたのだろうか。
「私からは以上だが……たぬポンは何か気がついた事はあるか?」
マサさんがたぬポンに話を振った。
二人は一緒に行動していたみたいだけど、彼が別の事に気付いているかもしれない。
「うーん……。何て言うの? グループ? あの、最初に近くにいた人の集まりがあるじゃん。あのグループ内の関係だけど、それもそれぞれ別々って感じかな。仕事場の集まりやらサークルの仲間やら、バーで飲んでた面子ってのもあったぞ。まぁよくわかんねぇって事。あと女の子が皆かわいい」
「なるほど……まぁそんなところか」
最後のどうでもいい情報をマサさんが適当にさらっと流して話を進める。
しかし、さっきの話では老若男女色々いたはずだが、たぬポンの言う"女の子"とはどこまでの範囲の事を言っているのだろうか。“皆”と言うぐらいだし女性なら何歳でも“女の子”と呼べるタイプなのか、それとも一定以上の年齢の女性はその目に入らなくなるタイプなのか。若干気になるけど……いや、どうでもいいか。
「俺達が集めてきた情報はこんな感じだ。と言っても“分からないという事が分かった”というだけだがな」
と言い、マサさんは少し自嘲気味に笑ってから「で、四人は何か掴めたか?」と話を続けると、ヲタ君が勢い良く手を上げた。
「あ、あの……アビリティについてなんだけど……」
と彼は基本的な仕組みから話し始める。情報収集に行っていて、恐らくウィンドウについて詳しく調べていないはずの二人への配慮だろう。
「――で、ここからが問題なんだけど。色々調べたんだけど、どうも職業的なシステム? がないみたいで、アビリティを組み合わせて役割に合ったキャラを作っていく的な……要するにスキル制RPGみたいな感じで。……あと最初から取得してあるアビリティもあったりして――」
「なるほどな。それじゃあアビリティに――」
「うん、でも――」
二人の話は続く。
途中からは僕達も会話に参加して、このウィンドウについて話し合った。
他の人のスキルやアビリティについて、情報のすり合わせが出来て良かったが、特に真新しい情報のない話が続いてからは意識が逸れて、少し昔の事を思い出してしまった。
タイムリミットまで、あと一時間〇二分。
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