Ep51 迷宮へ
岩を探し続けること2時間。予想通り、それなりに時間がかかってしまっていた。
「なんでこんなに見つからないんだか……」
「仕方ないわよ。そんな簡単に見つからないってわかってたでしょ?」
「それはそうだけどさ〜」
もうさっきから虫型の魔獣が出没しすぎて気が滅入る。気持ち悪いんだよ。重力きかないし、切ったらキモい血が出るし。
「虫は苦手じゃなかったんだけどな……」
「わ、私は嫌いですよ!」
「私も」
「私もよ」
女性陣は苦手なようだ。そりゃそうか。
「にしてもないな。確かに岩とか言ってたんだけどな……」
と、長考していた時、リアがなにかを発見したようだ。
「ねぇ零人。あれ……」
「…………なんだあれ」
見つけたのは、少し大きい黒い岩。その上に、巨大なカマキリが居座っている。なにを守ってんだ?
「もしかして、あれが洞窟……じゃなかった。迷宮への入り口の岩なんじゃない?」
「つ、遂に岩を見つけてしまったんですか!?」
露骨に怯えるカナをなだめながら、俺はカマキリと岩を見据える。
「とにかく確認して見る必要がある。みんなここにいてくれ。俺がやってくる」
片手に石を持ち、このままカマキリに接近。すると、カマキリはこちらに気づいたようで、視線を向けてきた。
「交戦する気か?いや、なんか違うような……」
カマキリから敵意は感じられない。いや、単なる獲物として見られている可能性もあるが。
しかし、カマキリは俺には攻撃してくることなく、岩から立ち去ってしまった。
「なんだったんだ?ここを守っているとかいう感じなら、襲ってきてもおかしくないはずなんだが……」
なにもしないで立ち去ってしまったので、真偽は不明だが、岩を調べることに。
「やっぱりこの岩で正解か……」
岩にはバツ印。大きいとか言っていたような気もするが、そんなに大きくない。せいぜい人1人分くらいだろ。
俺は村長の情報があてにならないことを痛感しながら、3人を呼びに行った。
◇
「んで?この岩をどうやってどかすの?」
エマがそんなことを聞いてくる。
「強化できる俺からすれば、こんな岩どうってことないぞ?」
「いまさらのこと」
迷宮ならこの岩の後ろにあると考えてもいいだろう。ていうか寧ろそれ以外に答えはないし。
「ほ、本当にいくんですか?やめるなら今のうち………」
「諦めが悪いぞ。じゃあ、砕くぞ・・・」
「「「え?」」」
俺の言葉に3人が困惑した。が、構わず俺は拳を固め、腕を振りかぶる。
「【強化】100倍」
俺は強化した拳で岩を殴りつける。岩を砕いたという感覚は伝わってこない。が、その代わり目の前の見晴らしが良くなった。
”バゴンッ!!!”
目の前にあった岩、その後ろにあったであろう山も抉り取ってしまった。
「「「…………」」」
3人はなにが起こったかわからない様子で、目の前の光景を見つめている。
うーん。俺も少しやりすぎてしまったかもしれない。
「お。これが迷宮の入り口か」
てっきり後ろにあると思っていたが、岩の下に入り口があった。吹き飛んでいなくて安心した。
入り口はとても暗く、冷気が肌に触れる。真っ暗で光もないところには、暖をとるようなものなどないのだろう。
と、さっきからずっと固まっている3人の方へと視線を向けた。
「?どうしたんだ?」
「あ、あんた。今なにやったの?」
俺がやったことの説明を求めている。理解できていないようだ。
「なにって……普通に岩を殴り飛ばしただけだけど?」
「普通に殴り飛ばしただけで岩が消えるわけない」
「とんでもない威力だったんですね……はは」
カナが呆れたように笑っている。もうどうにでもなれと行った感じ。お前嫌がりすぎだ。
「大袈裟だな。普段みたいに強化して殴ったら裏の山ごと抉っただけだろ?」
「あんたの普通は私たちからしたら異常なのよ……」
「す、すいません……」
俺と彼女達では価値観が違うようだな。デタラメな力があると、こういう時に不便だ。
「と、とりあえず入ろうぜ?下に入り口があったわけだし」
「まぁ、入り口があっただけましか。ほらカナ。いつまで現実逃避してるの?行くよ?」
「つ、遂に私の拷問が始まるんですね?いいですよ。なんなら殺してもらっても……」
「嫌なことになると性格変わるな」
普段のカナはこんなのじゃない。よっぽど嫌なんだろうな……。恨むなら野心が強いリアとエマを恨んでくれ。
「じゃあ、行くぞ!なにがあるかわからないから常に注意して進むこと」
俺は最後に忠告して、迷宮の入り口へと入って行った ── 。
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