Ep50 迷宮探検準備2

風呂から上がり、俺は手早く着替えを済ませた後、村長の元に向かった(みんな風呂入った)。もちろん全員で。洞窟に行く本人達がいないと話を聞く意味ないしな。


「ってことで場所とかもう少し詳しくお願いします」

「ええ?それいっちゃう?」

「なに教えずらそうな雰囲気出してんですか。てっとり早く教えてくださいよ」


この亀村長、絶対今『自分たちで探すから面白いんじゃね?』とか思ってるんだろうな。この顔はそうだ。


「仕方ないの〜。教えてやるか」

「流石っす村長」

「じゃろ?わしはこれでも寛大な心を持って」

「早く行きたいからさっさと教えて」

「あ、はい」


村長の自慢話が始まろうとしたところで、リアから口出しされたので中断された。ナイス。


「コホン。ええっとな。森を南に出た先に少し大きめの山があるんじゃが、そこに洞窟……というより迷宮じゃな、迷宮がある。目印になるものは、大きなばつ印の書いてある岩じゃ。そこの裏が洞窟になっておるのじゃ。1番高い山の中腹くらいかの」

「洞窟じゃなくて迷宮?」

「いろんなフロアがあるんじゃよ。洞窟というより迷宮といったほうがしっくりくるの」

「なんでそんなに詳しいんですか。その姿で出歩いていたんですか?」

「わしの情報収集力を舐めるでないぞ?」


妙に外の世界について詳しい。亀の姿で出歩いたら見世物小屋などに連れていかれそうなものだが……。


「とにかくありがとうございます。俺たちは今からその洞窟を目指すので」

「い、今から行くのか!?急じゃの……」

「今から行かないと明日には返ってこれるか分かりませんし」

「私は零人がいない間退屈だったから早く行きたいんです」

「「お、同じく……」」

「お主も返ってきたばかりじゃろうて……」

「仕方ありません。ここまで放置しておいた俺の責任でもありますからね」


正直行くのはめんどくさい。だけど、放置しておいてまた拘束されるようなことにはなりたくないのだ。次は命が危ない!!


「じゃあ、行こうか」

「「「おー!」」」

「ま、まぁ頑張っての……」


俺たちは村長の引きつった笑顔で見送られながら、村を後にした。



あは☆少しは休憩したかった☆






村から出て約3時間。度々出てくる魔獣を倒しながら、俺たちは森を抜けて山道を歩いていた。今は森の中では見なかった魔獣を相手に戦っている。


「お。また出たな」

「見た目が気持ち悪いわね」


先ほどからよく相手をしているのは芋虫型の魔獣。それも、ただの芋虫ではなく、体調は2メートルはあろうかという大きな芋虫だ。多分、成虫になったらとても大きな蛾か蝶になるんだろうな。


「衝撃【強化】!」


俺は強化を使いながら、芋虫に石ころを投擲する。石ころが当たった瞬間、芋虫の身体は吹き飛ばされ、穴が空く。先ほどからずっとこうしてたおしているのだ。


「なんで超重力が効かないんだろうな」

「ああ、あの押し潰すやつのことよね?」

「あれが使えたら楽なんですけど……」


最初に見つけた時、重力を強化して潰そうと思ったのだが、何故か効かなかった。身体がブニブニしてて柔らかいから効かないのか?


「ま、倒し方はいくらでもあるわけだし、気にすることじゃないだろ」

「零人、ここってどの辺なの?」


リアが現在地の確認をしてくるので、俺は今いる場所を把握するため、空高く跳躍した。上から見下ろしてみると、山の中腹にあたることがわかった。


「山の真ん中だな。多分、この辺にあるんじゃないか?」

「でもさ。この山、結構木とかあるから探しにくいよ?」

「まぁ……確かに……」


見た所、森ほどではないが背丈の高い木々が生い茂っている。これは魔獣がたくさん住み着いていそうだな……。他にも、目印になる岩を見つけることも困難になる。

と、俺が長考していると、誰かのお腹が鳴った。


”ぐ〜”


「「「「…………」」」」


全員が黙るが、1人だけ顔を赤くして俯いている人がいる。


「…………ゴメン」


エマだった。まぁ、仕方か。もうお昼もお昼だし。走ったから余計だろうな。


「気にすんなよ。どっちみちみんな腹が減ってくる時間帯だろう?まずは腹ごしらえをしようか」

「うん。賛成」

「私もお腹が空きました」


全員の賛同を得たので、昼食にすることにした。今日のメニューはかなり前に作り置きしておいた焼き鳥やサラダ、それから焼きたてのパン(帝都で買った)だ。地面にシートを敷き、その上に座って食べる。もはやピクニックのようだ。


「いただきます」

「「「いただきます!」」」


食べ始めると、みんな無言で食べ始める。その気持ちはよくわかるぞ。どこを見ているのかわからないような目でボーっとしている反面、心の中ではこうなっている。


(うま……)(うまい……)(なにこれうま……)(ああ、生きててよかった)(あーもう最高!!)


……こんな感じだ。ちなみに、夏場にアイスなどを食べるとより一層このような状態になる。昔ショッピングモールなどに行った時に某アイスクリームショップの前にはこんな感じの客がたくさんいた。


「味はどうだ?」

「「「……」」」

「どんだけ腹減ってんだ」


いつものように、感想をくれることはなかったが、無言で黙々とたべるようすから、それだけうまいということはわかった。俺もそれ以上は何も言わず、昼食を摂り続けた。




「む、無言で食べてた」

「私も気がついたら食べ終わってたわ」

「わ、私もです」


食べ終えた少女達は、口々にそんなことを言いあっていた。


「すごい顔してたぞ?みんなどこ見てるのかわからないで黙々と食べてたからな。ま、その様子だと味は悪くなかったのはわかるよ」

「いや、零人さんが作るご飯に美味しくないものなんてあるんですか?」

「カナ。俺だって失敗はする」


そこまで料理が得意……得意か。だが、俺もそれなりに失敗を積んできた身だ。目玉焼きを焦がしたりもしたし、包丁で手を切ったりもした。


「零人は器用だから、失敗は滅多にしないと思うけどね」

「うん。正直料理に関しては心配してないわ」

「……ありがとう」


そこまで言われると、さすがに照れるな。料理に関して褒められることは悪くない。寧ろいいぞ。


「じゃあ、岩を探しますか」

「お腹も膨れたしね」

「魔獣が出ても大丈夫よ」

「なんでそんなにやる気あるんですか……」


カナはあまりやる気ではないようだ。が、ここまで来てしまった以上引き返すようなことはしない。無理にでもカナを洞窟まで連れて行くぞ。


「まずは……あの木が密集してるあそこからな」

「「了解」」

「わかりました……」



さ、岩をサクッと探しましょう。早く洞窟に入りたいからね。







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