Ep33 英雄、再び帝都へ
「そろそろ調味料が少なくなってきたな」
食料庫に保管してある調味料たちを見ながら呟く。
料理をするたびに結構使っていたので、少なくなるのも早い。
「明日にでも買いに行くかな・・・」
他の3人とペット2匹はリビングで紅茶を飲んだりまったりしている。途中で抜け出してきたのだ。また帝都に行くので、彼女達には留守番をしてもらわないといけなくなるのだが ── 。
「今回はついて来るって言いそうだな」
前回も留守番をさせていたのだが
果たして今回も承諾してくれるかどうか・・・。
「言い聞かせるか」
俺は反対された場合、危険性などを言い聞かせて説得することにする。折れるかはわからんが。
◇
「じゃ、私たちは留守番ね」
「え?」
留守番を頼むと、あっさりと承諾されてしまった。
「い、いいのか?」
「?なんで?私たちが行くと危険なんでしょ?ならお留守番してるわよ」
リアが当然のように言うので、呆気にとられてしまった。
「でも、お土産は買ってきてくださいね?」
「それは任せろや」
以前のように美味いものを買ってきてやる。酒も一応補充しておきたいし。
「あ、それからファルは一緒に行くぞ」
「ピェ?」
ファルが首をかしげる。本当に人間の言葉がわかっているようだ。すげぇ。
「お前は一応公爵家の動物だからな。何かあったら、お前は公爵家の証となる。検問とかで便利になるだろ?」
俺も指輪を持っているが、それだけでは不安だ。ファルの足についている金具を見せれば、100%検問には引っかからない。貴族に甘いのだから。
「俺は明日の朝には出発するから、寝てていいぞ」
「りょーかーい」
「わかった」
「気をつけてくださいね」
ここで見送りってことは、起きる気は0なのね。わかります。
明日は早いので、俺は早々に自室のベッドに引っ込んだ。
◇
翌日。大体6時くらいだろうか?俺は帝都に向かうため、ファルを肩に乗せて家の外に出ていた。日は昇りきっておらず、うっすらと暗い中だが、その雰囲気がとても心地よい。
「じゃあ、行くか」
「ピェ!」
俺とファルは、森を抜け、帝都を目指す。
だが、帝都で大変な目に遭うとは、この時の俺は知る由もなかった・・・・。
◇
「どうしたのだ!!」
「そ、それが、書状が届きました!」
帝都の城内。そこでは焦った皇帝の声が響き渡っていた。
「つ、ついに来たか・・・。送り主は?」
あらかた検討がついているのだろうが、確認せずには入られなかったようだ。
「アルヘナ軍自国です!奴らは帝国と戦争を始めるつもりです!」
「やはりか・・・」
アルヘナ軍自国とは、帝国の東に位置する軍事国家である。この国では王政などは敷かれておらず、軍のトップである将軍が政権を握っている国家だ。
「奴らはこの国を乗っ取る気か!」
「恐らくは。領土を広げようと躍起になっていますからね・・・」
「嘆かわしいことだ・・・」
皇帝は頭を抱えた。帝国には軍は存在しておらず、その代わりに騎士団がいるのだ。この騎士団も、言ってしまえば軍と同じようなものなのだが、その目的は、国の治安維持をメインとしている。軍のように、他国との戦争を目的に作られた組織ではない。
「これはどうしたものか・・・」
「アークツルス王国に、援軍を頼みますか?」
北のアークツルス王国とは友好国である。援軍を送ってもらうことは容易いのだろうが・・・。
「あの国まで危険に巻き込むのは気がひけるな」
「しかし、そうも言ってられません。このままでは、帝国に甚大な被害が出ます」
最悪、国を攻め滅ぼされてしまう。
「王政が敷かれていた時は、良かったのだが・・・」
「王子は一体どうしているのでしょうか?確かに、王族は王子だけが生き残っていたと思いますが・・・」
「わからん。だが、その王子が希望となるかもしれなのだが・・・」
遠い目をしながら、皇帝陛下は呟く
間も無く、帝国では戦争が始まろうとしていた ── 。
「飛ぶか?」
「ピエエ!!」
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