Ep32 新しい仲間の狩猟力
「飯も食ったし、まずはファルの強さを確認するか」
昼飯を食べ終え、腹がいっぱいになったところで、俺たちは森の外に向かうことにした。鷹はかなりの狩猟能力を持っていると聞く。なら、このファルも例外ではないはず。
「狩りをするけど大丈夫か?」
「ピェ!」
いい返事だ。心配はないだろう。随分と自信があるようだし、弱くはないとリアも言っていた。
「獲物はどうするの?」
リアが今日狙う獲物を聞いてくる。鷹が狙うのにもってこいの獲物と言えば、たくさんいる。が、ファルは体が小さいため、大きいものは狙えない。
「となると、小型のラプトルか」
「あのちっこいの?」
前の世界では、ラプトルは絶滅しているのだが、この世界ではなぜか生息している。もしかしたら、別の所には恐竜もいるかもしれないな。
「あれならファルも狙えるだろ」
「確かに弱いし、ただ噛まれると厄介」
「話そうとしないからな」
噛まれているやつを見たことがある。あれは痛そうだった。かなり深くまで歯が肉に食い込んでいたため、止血するのが大変そうだったのだ。
「けど、肉は美味い」
「うん。前は捨ててたけど、零人に料理してもらってから食べるようになったよ」
ラプトルの肉は基本的に食べる人が少ない。なぜなら他にも美味い魔獣が生息してないるからだ。
だが、俺の手にかかればランクの低い肉でも極上の肉になる。全ては料理人の腕次第なのだ。
「ファルが狩れたら、今夜はラプトルのフルコースにするぞ」
「ファル。頑張ってね。夕食のためにも」
「ピェェ!!」
気合も入ったようだ。なら出発だ!美味い夕飯の食材を取りに!
◇
村を出てから30分。幸運なことに、ラプトルの群れに遭遇することができた。
「よし。チャンスだファル。あの群れから15匹くらい狩ってきてくれ。残りはウルがやる」
「ピェ!」
いい返事で鳴くと、ファルは空高くに飛んで行った。その間に、ウルが突撃し、軽く2〜3匹のラプトルを襲う。
「ガルルルル!」
「グア!グァァァ!!」
ラプトル達も負けじとウルに突撃していくが、ことごとく跳ね返されている。ウル、強い。
「ピエエエエエエエ!!!」
突然森の中に甲高い鳴き声が響いたと思うと、ファルが急降下してきた。そのままの勢いでラプトルを捕まえると、掴んだまま空に飛び立ち、上空から落下させた。
「グァァ・・・」
落とされた先にはもう1匹のラプトルがおり、そのまま直撃。2匹はあえなく絶命した。
「ほお。なかなか強いじゃないか。魔法も使わずに」
「あれは元々の強さ。魔法を使ったらもっと強くなるはずよ」
確かに狩りには持ってこいの生物だ。が、少し速すぎないか?掴む強さも鷹とは段違いに強い。
「あれって・・・もしかして隼なのか?」
隼だとすると、名前はそのままの意味になってしまう。そこはいいのだが、かなりの狩猟能力を有していることになるのだ。ウルと互角の狩りをしている。すげぇ。
「とんでもない奴をペットにしたもんだな」
そう呟く頃には、たくさんいたラプトルが全て狩られていた。恐ろしいハンター達だ。まさに狩人。人じゃないけどな。
「ガウ」
「ピェ」
どうだと言わんばかりの視線をぶつけてくる。なんだその目は。褒めろということか?
「よし。よくやったなお前ら。今日はごちそうにしてやるからなー」
「ガウゥゥゥゥ!!」
「ピェエエエエエエ!!!」
喜びすぎだわ。森の中に響き渡ってるぞ。食い意地張りすぎだ。
「どんな料理に・・・ん?」
「今日はごちそうなんだよね?」
おっとここにも食い意地の張った野獣がいたか。ってことはまだあと2匹ほどいるな。はは。俺の料理は野獣生産機か。
「ああ。たくさん作るけど、どうかしたのか?」
「お酒を開けましょう。結構いいやつ」
なるほどな。確かにいい料理には酒が欠かせない。仕方ない。ここはいい酒を開けるとしよう。
「帝都で買った酒がまだ残ってるからな。それを開けようか」
「了解!」
上機嫌に返事をする。現金なやつだ。
「とりあえず、ラプトルを回収するぞ。リアも手伝いな」
「わかった!」
元気よくラプトルを回収していくリア。子供っぽいが、実年齢だったら俺よりかなりの上なんだよな。エルフで言ったら14だったか。
「さ、俺も回収するか」
腰の収納袋に手を伸ばしながら、俺は肉ラプトルの回収に向かった。
◇
「これはまた・・・」
「いっぱい狩ってきましたね」
村につき、エマとカナに今日の成果を見せた。2人とも俺たちが村を出たあたりに目を覚ましたらしく、今はかなり元気だ。もう夕方だが。
「んで、こいつが俺の新しいペットのファルだ」
「ピェ!」
元気よく挨拶?をするファルに、2人はとても興味深そうにファルを覗き込んだ。
「賢いのね。よろしくファル」
「可愛いですね〜」
気に入ってもらえたようだ。ファルもなんだか嬉しそうにしている気がする。
「紹介も終わったし、飯にしようか。テーブルを片付けておいてくれ。色々乗ってると思うから」
俺が料理をするので、台拭きなどの仕事は女の子達に任せる。それくらいはしてもらわないと困る。そんな心配をしなくても、彼女達はやってくれるのだが。
片付けをしている3人を見たあと、俺はキッチンの方に足を向けた。
1時間後。テーブルにはたくさんのラプトル料理が並んでいた。唐揚げ、甘ダレ焼き、燻製、ステーキ、などなど所狭しと並べられている。たくさんあるコンロをフル活用しながら同時進行で作ったのだ。これくらいはできる。
「す、すごい量ね」
「これはまた美味しそうなものを・・・」
「お腹すきました!」
3人の女の子達は、並べられた料理を見ながら生唾を飲み込む。そんなに楽しみにしているとはな。味見の段階で美味いのは確定しているのだが。
「ガウウウウウウ!!」
「ピエエエエエエエ!!」
問題はこいつらだ。さっきからうるさい。嬉しいのはわかるが、少し静かにして欲しいもんだ。
「わかったから静かにしろ。お前達のもちゃんとこっちにある」
ペット達にはちゃんと別の皿に入った料理がある。もちろんこれも美味いが。
「も、もう食べていいの?」
「ああいいぞ。食べなさい」
リアが待ちきれないと言った感じで聞いてくるので、俺は許可をだす。冷めないうちに食べてしまわないと、美味しさも減ってしまう。きちんといただきますをしてから、食事
を始める。
「はぁ〜、美味しい」
「これも食べたことない味ね」
「前のラプトルも美味しかったですけど、このラプトルも中々・・・」
前に作った時は確かに・・・酢豚みたいにしたんだっけか。あれはあれで旨かったが、今日は作っていない。
「美味いか?」
「ガウ!」
「ピエ!」
美味そうに食べている。口にあったようだ。俺はそんな食事風景を眺めながら、帝都で買った酒を煽る。美味い。口に広がる酒の旨味が肉によく合うのだ。
「零人、私にも注いで」
「ん」
ポケッとした気分で、リアのコップにも酒を注ぐ。この娘は酒の美味さがわかる娘だ。
「・・・いい生活だな」
心の底から、俺は思った。こんなゆるい生活も、悪くない。こんな生活がいつまでも続けばいいと、本当に思う。
だが、のんびりできる時間も、残り少なくなっていた ── 。
要するに忙しくなる。
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