Ep28 英雄、再び骸骨を倒す

洞穴を進むこと30分。俺たちは変わらない景色に、方向感覚を失わないように気をつけている。


「どうだカナ。あんまり怖くないだろ?」

「・・・そうですね」


今、カナは俺にしがみついているのではなく、ウルの背中に乗っかっている。俺にしがみついたままだと動きにくい上に、カナの視界も狭くなる。


「不貞腐れないの。カナが暗いところダメだからでしょ?」

「零人も歩きにくくなる」


リアとエマからも言われ、なんとも言えない表情で俺を見つめる。さっきまでの動揺はどうした?いや、若干手が震えているから相当怖いのはわかる。


「骸骨が出たらかなり厳しくなるぞ。動きが制限されてたら、戦えない」

「わかってますけど・・・」

「それに、ウルはそれなりに強いだろ?なら俺といるのと変わらない。むしろ歩かなくていい」


もっともな意見を言うが、カナ・・・だけではなく他の2人も微妙な目つきで俺を睨み出した。え?なに?


「あんた・・・」

「零人、そういうのは時に残酷になるの」

「・・・複雑です」


エマ、リア、カナの順番に俺に向かって口々に言う。残酷ってなんだよ。俺はなにもしてないぞ。


「俺がなにかした ── ッ!」


俺が抗議の声を上げようとした時だった。洞穴の奥から、たくさんの足音が聞こえる。これは・・・


「まずいわ!!骸骨の軍団よ!」

「落ち着けエマ。こいつらはちょっとした衝撃で壊れる」


エマが慌てだしたので、落ち着かせながら説明。かなりいるようだが、こいつらはすぐに倒せる・・・と、俺はそこで大変重要なことに気がついた。


「やべ。ここじゃ一気に潰せない」

「どういうこと?」


リアが説明を求めるように促す。俺はため息を吐きながら、彼女らに説明した。


「俺は前の時、衝撃波で倒したんだが、ここで衝撃波を使うと、洞穴が崩れるかもしれないんだ。かなり脆いんだろうな。だから、一体ずつ仕留めるしかない」

「え?大丈夫なんですか?」


やはり不安か。カナの手、というより身体がかなり震えている。ついでにケモミミが不安そうに揺れているな。寒い時の犬かお前は。


「別に勝てなくはない。だけど時間がかかる。ま、俺は運動不足解消になるからいいんだけど」


時間がかかるということは、それだけ長時間のトレーニングをするということになる。それは非常に好ましいことだ。俺の健康的な面では。


「わ、私、戦えそうにありません」

「安心しろ。今日は全部俺が倒す」


大事なトレーニング用器具を持っていかれたらかなわん。

会話をしているうちに、奴らが姿を現した。やはり多い。これは時間がかかりそうだ。


「じゃ、行って来る」


学校に向かう学生みたいなノリで3人に告げてから、俺は骸骨の軍団に突っ込んだ。



「大丈夫かしら?」

「問題ないはずだけど・・・」

「まぁ、零人さんなら」


3人は零人を複雑な気持ちで見送った。





骸骨たちは様々な武器を持って俺に向かってきた。一体どこでそんな装備を手に入れてきたのやら・・・。

一体の骸骨が、俺に向かって剣を振り下ろす。それを【強化】した拳で殴りつけ、叩き折り、そのまま骸骨の頭部を殴りつけて粉砕。


「いい運動になるなこれ。まだまだ行くぜ!」


今度は弓矢が飛んできた。飛んできた矢を掴み、近くにいた高身長の骸骨に投擲。あっさり骸骨は砕けた。投擲した直後に、付近にいた骸骨たちを蹴り砕く。そのまま蹴りで10体ほどの骸骨を砕いた。


「うおっと!」


突然背後から斧が振り下ろされる。ギリギリでそれを躱し、殴りつける。おっとやりすぎたか。粉々になってしまったようだ。


「あとは・・・半分くらいか?」


半分くらいの数に減った骸骨を一瞥しながら、俺は呟く。かなり倒したと思うが、まだでるのか?結構いい運動になった。

後方を見ると、3人の同行者たちが雑談に花を咲かせているようだ。あ、こっちみた。めっちゃ笑ってる。はは。


「もういい加減めんどくなってきた」


運動はもう十分だろ。なら、洞穴が壊れないように一気に潰す。


「無理か」


思いつかなかった。絶対洞穴が壊れる。一体ずつ倒すしかないか・・・。


「はぁ〜・・・おっし!」


(飽きたので)気合を入れ直し、骸骨の殲滅をするため、俺は再び骸骨たちに突っ込んで行く ── 。





20分後。

俺はようやく骸骨たちを殲滅することができた。はぁ〜しんど。


「お疲れ。時間かかったね」

「当然だろ。軽く200はいたぞ」


リアの労いの言葉に皮肉を返す。200くらい、すぐに倒せる数だが場所が悪かった。ニヤニヤしながら話しかけるでない。


「ていうかお前たち、かなり楽しそうにしてたな?」

「そういう零人も楽しそうに倒してたじゃない」

「最初だけな。後半かたキツくなるこの感じを、エマには知ってもらいたいな」

「やめておくわ」


全く。人ごとのように。確かにやるって言ったのは俺だけれども。俺だけれども!!


「あの・・・お疲れ様です」

「おう。もう怖くないのか?」


唯一、心配そうにしてくれたのはカナだけだった。3人中1人っていうのも中々ひどい話ではあるが。


「え、はい。慣れたんだと思います。この洞穴を出たら、また怖くなると思いますけど」

「そうか。まあ、今だけでも大丈夫ならいいさ」


これなら少しペースを上げてもいいだろう。俺は少し疲れたが、別に歩けないほどではない。


「さ、もう少しだから行こうぜ」


3人に呼びかけ、もうひと頑張りすることがにした ── 。









「お前も運動したかった?」

「クゥゥン(うん)」

「そりゃ悪かったな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る