Ep27 英雄、洞窟を探検

昼飯を食べ終えた俺たちは、お茶を飲んでから目的の場所に向かった。休憩をした場所から大体15分程で到着。結構近いところまできていたようだ。


「さ、ここが出現した場所だけど・・・」

「なにもないわね」



エマの言葉に俺は首を傾げる。確かになにもない。普通に花畑が広がっているだけだ。でも何かありそうな気がしてならないのだ。


「・・・ちょっと花畑に入るか」


なにかしらの確信を持ちながら、俺は花畑に入ることに。そして、入ってすぐに、それを見つけた。


「・・・洞穴か」

「「「洞穴?」」」


花畑の花に隠され、中々見えないところにだが、確かに洞穴がある。以前と同じく、人1人入れるほどの大きさだが。


「なんか・・・デジャブが・・・」

「その意味はよくわからないけど、とりあえず入りましょう」


エマがなんだかやたらとテンション高くなってきた。なんで?まさか暗いところが好きとかいう感じか?


「また・・・暗いとこ・・・」


と、そこでカナが不安そうに俺の服の裾を掴む。結構力入ってんなおい。


「大丈夫だって。別に死ぬわけじゃないし。それに、前回も同じような感じだっただろ?今回もすぐに終わる」

「そ、そういって前回は結構な時間潜ってたじゃないですか!!」


おびえすぎだろ。ま、確かにすぐに終わるとは限らないけどさ。でもここまで過剰に怯える必要は・・・。


「こ、怖いところっていうか、暗いところはとにかくダメなんです!!」

「暗所恐怖症か・・・」


恐怖症なら仕方ないか。以前もそうだが、恐怖症持ちにはキツイだろう。俺も1つ恐怖症を持ってるからわからないでもない。・・・あれはこっちの世界にあるのかは知らないが。


「なんにせよ、行かないと始まらないからな。今回も俺にしがみついてていいから、離れるなよ」

「・・・はい」


若干顔を赤くしながら、裾を掴む手の力を強めるカナ。よほど怖いのだろう。




「「ジーッ・・・」」


そして先程から感じる2つの視線。君らは一体何をしているんだい?


「なんか、零人はカナに甘い気がする」

「うん。私の妹には大変甘いようで」


なにを拗ねているのだか。みんな平等に扱っているはずだ。今回は恐怖症が関係しているのだから仕方ない。2人が苦手なものがあった場合、ちゃんとフォローしてあげるつもりだ。


「拗ねるなよ。これから潜るんだ。気を引き締めていくぞ」

「「・・・」」


まだ納得していないのか?無言で俺とカナを見つめる2人。が、これ以上時間をかけるわけにも行かない。ここは最終手段か。


「帰ったら、ジャムを使ったデザートを作ってやろう」

「「「やった!」」」



ふはははは。ちょろい奴らめ!!





洞窟の中に入ったが、やはり暗い。辛うじて辺りが把握できる程度だ。


「・・・前にも増して震えてないか?」

「そそそ、そんなことは!!」


カナが思いっきり俺にしがみついている。動きにくいんだけど・・・離してくれそうにない。


「寝るときはどうしてるんだよ」

「寝るときは問題ないわよ。私がいるし、星だって出てるんだから」


エマが俺の疑問に答えてくれた。なるほど、そういうことか。確かにここくらい暗い夜ってのもないな。


「とりあえず、先を進もうよ」

「・・・なんか怒ってるか?リア」


先程からリアの機嫌が少し悪い。なにかしただろうか?


「別に、怒ってない。さっさと原因を突き止めたいだけ」

「お、おう・・・そうだな」


明らかに怒っているが、あえて深くは追求しない。飯を食えば機嫌も良くなるだろう。

俺たちは先を急ぐことにした。







「キャアアアアアア!!!」

「お、落ち着けカナ!!単なる骸骨だ!」


俺たちの進行速度はかなり遅かった。なにせ、この洞には骸骨やら骨やら髑髏がたくさん落ちているのだ。それを見つけるたんびに、カナが絶叫しながら俺を掴む力を強くしているのだ。もう俺は両腕にホールドされている。


「カナ・・・怖がりすぎ」

「な、なにがでずか!私は頑張っています!!」

「あ、ダメだ。完全にパニクってる」


なんだこれ。人は恐怖に駆られるとここまで我を忘れるのだろうか?俺はなりたくないな。


「大丈夫か?」

「な、なんとか・・・。でも止まるわけにはいきませんから・・・」

「心構えはよしだな」


なにかしなければいけないとは思うが、なにも解決策が思いつかない。仕方ないが、このまま進むしかなさそうだ。


「もう少し光があればいいのか?」

「あ、あるなら欲しいです・・・」

「なんかあるの?」


あるさ。先日帝都で買ってきた代物。結構使えるかもしれなかったので、買っておいたものだ。ま、ここで使うようなものではないが、使い道としては合ってるだろ。


「ほい。ランプ」


ランプ、というよりかは電気スタンドに近い。これを持って洞穴探索とか意味がわからん絵面になるが、この際構ってられないだろ。


「あ、明かりだぁ・・・明るいなぁ・・・」


重症。久しぶりの酒を飲んだアル中みたいな発言してる。光中毒か。


「これでなんとかなりそうか?」

「は、はい。光がありがたい・・・」

「明かりがあればカナは大丈夫よ」


植物の光合成か。まあなんでもいいが、片手でランプを持って、もう片方の手で俺の服を掴んでいる。明かりに照らされて、その長い栗色の髪が輝いている。


「大丈夫・・・大丈夫・・・」


なんの自己暗示だ。これはまじで急いで原因を見つけないと、この娘がヤバイことになりそうだ。最悪、精神が壊れるかも・・・



「よし。進むぞ」

「「お〜!」」

「私は・・・大丈夫・・・」


1人だけ全く別の気合を入れながら、暗い洞穴の先を進む ── 。














「ウルは平気か」

「ガウゥゥ」

「お前の背中にのっければ・・・ハッ!!」



名案キタ。

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