Ep26 英雄、眼福
翌日。俺たちは陽の上がる時間帯に集合した。先日言った通り(いきなり)、あの骸骨たちがでた原因を探すとともに、俺の運動不足(疑惑)解消にいくのだ。
「だからって、こんなに朝早くから行かなくても・・・」
眠そうな顔で、エマが呟く。確かに早いが、俺はあまり眠くないし、なにより生活リズムが崩れてきていたので丁度いいだろう。
「まあ、朝早いのはわかる。だけど、頑張ってくれ。今日も美味い飯を食わせてやるからな」
「本当ですか!!」
「ああ。弁当も作ってきたからな」
女の子たちにやる気が出てきた。飯でここまでやる気になるとは・・・チョロいですな。
まあ、ともかく俺たちは村を出ることにした。勿論、ウルは俺たちの後ろからついてきている。
「ねえ、肝心の場所はどこにあるの?」
少し歩いたところで、リアが根本的なことを聞いてきた。原因を探すとは言ったが、その原因の目星になるところがないと話にならない。
「わからん。が、出現した場所の近くに何かあるだろうな」
そこまでは見当がついているのだ。森から出現していれば、彼女たちは何か気づくはず。それがなかったのだとしたら、森の付近にあることになる。
「その場所は?」
「帝から少し離れたところだ。骸骨たちが進軍してきたところだから、すぐに着くだろ」
俺たちは【強化】された足で走っている。通常の何倍もの速度で走っているため、間も無く到着するだろう。無論、俺1人の時の方がはるかに早いが。
「・・・っと。ストップ。魔獣だ」
俺たちの目の前にキモい蜘蛛型の魔獣が出てきた。とりあえず蜘蛛としておこう。
「なんだか手強そうですね」
「そうでもない。でかいだけだろ」
見たところ体長は3メートルほどあるだろうか。黒い身体を持ち、俺たちにキモい目を向けてくる。キモい。
「じゃ、さっさと倒し ── 」
エマが攻撃に入ろうとした時だった。蜘蛛が口の先から糸のような物を吐き出したのだ!
「あっぶね!!」
「グッ!!」
俺とウルは間一髪のところで避けることができたが、他の3人が糸を喰らってしまった。
「キャッ!!」
「ちょッ!なにこれ!!」
「ネバネバする・・・気持ち悪い・・・」
エマとカナは焦っているようだが、リアは存外落ち着いてる。流石森の民エルフ。このようなことは経験済みか。
「とりあえず、破ッ!!」
俺は拳の力を【強化】し、蜘蛛を殴り飛ばす。その際、手にグニュっとしたなんともキモい感触が伝わったが、俺は顔を顰める程度に済ませた。もとよりそこまで嫌いじゃない。ゴキブリは例外。
「とりあえず終わっ・・・ッ!!」
安堵しながら振り返り、女の子たちに声をかけようとした俺は、その光景に息を呑んだ。
「ちょ、っと、取れ、ない!」
「ネバネバしてます・・・」
「ふんッ!!」
わかるだろうか?この光景の意味することを。女の子たち・・・しかも超がつくほどの美少女たちが、身体中に白くてネバネバした粘糸を巻き付けられている。顔にも身体にも。
まるで”ピッー”だな。眼福眼福。これはきっと、神様がもたらした祝福なのだろう。ありがとう。
「ちょっと零人!!見てないで手伝ってよ!」
「っと、悪い悪い」
エマに叱りつけられ、俺は若干名残惜しく思いながら、糸を取り除くのに協力した。
(いやまじで”ピッー”だろ・・・)
10分後。
粘糸を取り除き終わったため、一旦休憩することにした。時間的に、もうすでに昼前だろう。結構時間がかかったな。
「全く、ひどい目にあったわ」
「うん。気持ち悪かったねお姉ちゃん」
「こんなこともあるよ」
げんなりしている2人をリアが慰めている。なんか和む。
「まあ、災難だったな3人とも。とりあえず昼近し、飯にしようか」
「「「ご飯!!」」」
小さい子供達を相手にしている気分になってきた。ま、大きすぎる子供だが。
「落ち着きなさい。すぐに出すから」
3人を落ち着かせながら、俺は収納袋に入れてある料理を取り出す。この中では時間が進まないので、いつでも暖かいままだ。非常に便利。
「ほれ。ホットサンドだ」
「おー、また美味しそうな」
リアが見た目の感想・・・と言えるほどのものでもないが、俺に告げる。ま、美味いのは当然だ。味見はしっかりとしてあるのだから。
「これも新しい料理?」
「ああ、帝都に売られてた調理器具で作った。普通のパンに、色々具材が入ってるだけだけど、美味いんだぞ」
「いい香りです・・・」
ひとまず食べるとしよう。俺は一口、ホットサンドを齧る。美味い。挟んだのは卵とベーコン、みずみずしい野菜を少々だ。特性ソースも入れてある。
「美味しい」
「また新しい味ね」
「すごいです・・・」
褒めるな何も出ない・・・ぞ?いや、褒められるとつい調子に乗って料理を作ってしまうことがあるので、一概に何もないとは言えないか。
「ま、とにかく食べて少ししたら走ろう。もうすぐ着くはずだ」
骸骨たちが出てきた場所まで後少し。30分も走れば到着するだろう。
そこに何があるのか。俺は若干ウキウキしながら、ホットサンドを齧りなおした。
「ウルはこっちの肉な」
「ガウ!」
ウルの昼飯は、大きな鹿肉だった。(めちゃ美味い)
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