Ep25 英雄、新作料理を
森の村に帰ってきた次の日。俺は昼過ぎになってから、ようやく目を覚ました。
「あー・・・完全に寝てた」
昨日の夜は帰ってきてから酒を飲んでいたのだ。それで寝るのが遅くなってしまい、この時間に起きたということだ。
一応、寝床に入った記憶はあるので、なにかしらやらかしたということはないと思う。・・・多分。
「まあ、特に問題は起こしてないはずだ。安心しろ俺」
自分に言い聞かせながら、俺はベッドから出て、リビングへと降りていく。
「・・・誰もいないな」
リビングには人影はなかった。昨日のうちに家に帰ったのだろう。俺は水をコップに入れながら、一日の日程・・・もとい半日の日程を決める。
「やることないな。もう昼過ぎだし・・・」
半日でできることとなると限られてくる。遠出はできないし、狩りに行くのも面倒だ。といったらやることは一つになってくる。
「・・・なにか作るか」
俺は新たな食材で、料理を作るかことにした。頭の中に浮かんだのは一つ。それを思い浮かべながら、俺はキッチンに向かって行った。
◇
「さて、やるか」
俺はキッチンで道具を準備。仕入れた鶏肉とカレー粉、あの美味い酒、それから塩を用意。
今回作るのは、鳥もも肉のカレー風味照り焼き。長いので鶏カレー焼きにしておこうか。それを作る。
「日本にいるときよく作ったな。またこれが食えるとは・・・」
正直感動した。カレー粉を見つけた時の感動といえばもう・・・やべぇな。今から腹がなってきた。
「ええっと、まずは・・・」
※ここから作り方入ります。
結構作り方は簡単だ。まず、鶏肉の皮を取り除く。そこに塩を振り、しばらく揉みほぐす。揉みほぐしたら、そこに買ってきたカレー粉を多めにふりかけ、さらに揉みほぐす。
「・・・結構しんどいんだよなこれ」
中々しんどいん。腕が疲れてくるのだが、やはりよく揉みほぐしていた方がいい。味を練り込むようにこう・・・じっくりと。
揉みほぐし終わったら、次は味付け用のタレを作る。あの酒と砂糖、商店街の露店に売っていた串焼きのタレを混ぜる。これは他の料理にも使えるであろう美味しさだ。今度使おう。俺がタレを混ぜ終わったところで、いつもの3人がやってきた。
「あれ?なにか作ってるの?」
「また新作料理?飽きないわね」
「あ、いい匂いがします」
この時点で匂いに気がつくとは・・・流石に獣人娘。鼻がよく効くようだ。
「ちょっと待ってろよ。俺の新しいレシピだ。絶対に美味いからな」
これは美味いと確信できる。タレからしていい匂いを放っているのだ。これを肉に絡めて炒める。本当は米があった方がいいのだが・・・今度探してみよう。
次は肉を焼く。フライパンに油を引き、肉を敷き詰め焼いていく。火加減は強めに設定し、一気に2〜3分ほど焼いていく。いい感じに焦げ目が付いてきたら、いよいよタレと絡める時だ。
”ジュアァァァ”
豪快に食欲をそそる音を立てながら、瞬時に沸騰し肉と絡まるタレ。白い湯気を出しながら、いい匂いが鼻をくすぐる。最高だね、この匂い。
「うわ・・すごくいい匂い」
「あんた本当に上手いこと作るわね」
「お、お腹がすきました」
「ちょい待ってろ。もうすぐ出来上がるから」
そのまま1〜2分ほど炒めたら完成だ。俺の好物、このカレー味がとても美味しいのだ。やべ、よだれが・・・。
「んじゃ、パンを出すか。ちょっと硬めのパンだけど、焼いてあるから食べやすくて美味いぞ」
実はあらかじめオーブンで長くて硬いパンを焼いていたのだ。完全にフランスパンだが、そこは異世界。名前はわからんが、とにかく帝都で買ってきた。
「まだ昼なのに、すごい豪華ね」
「いいんだよ。作ったの俺だし」
「も、もう食べていいんですか?」
「待ちなさい。たくあんあるんだから、慌てるな」
全員が席に座り、俺が白くて飲みやすいワインを取り出したところで、昼食の始まりだ。
「じゃ、早速・・・」
俺はフォークを肉に突き刺す。持ち上げた瞬間、タレが滑らかに肉から滴り落ちる。これもまた、食欲をそそるものだ。
俺は見た目良しの評価をし、口に運ぶ。
「・・・美味い」
この見た目、香り。説明は不要だろう。当然美味い。日本でもここまでの味に仕上げたことはなかった。続けてワインを口に含む。甘めの酒が口に広がり、先ほどの肉の余韻を一気に押し流していく。この相性も絶妙。
「こ、これ!美味しい!!」
「至福の味ね・・・」
「すごく美味しいです!」
3人とも満足しているようだ。この味なら当然。俺は肉を皿に取り、再び味わった。ワインとの絶妙な相性も、肉のタレの味も、全てが極上。こんなに美味くできるとは、自分でも予想外。
「・・・生きててよかった・・・」
思わず口から声が漏れる。3人とも食事に夢中で、その声を聞くことはなかったが。
そのうますぎる料理は、俺の至福の料理の1品として登録されることになった。
「俺、太らねーかな?」
唐突に俺は思った。流石にここまで食ってばっかいると、太ってしまうかもしれない。
「大丈夫。森だから、狩りをすれば太ることはないよ」
「うん。狩りだから自然に動くし」
「心配しすぎですよ」
3人から同様の意見を言われるが、俺は不安をぬぐい切れていない。
そこで、俺は絶好の運動不足解消をすることにした。
「明日、骸骨の軍勢が出た原因を探ろう」
「「「え?」」」
3人から驚きの声が上がる。
え?いやなの?骸骨たくさん倒せば運動できるでしょ?
唖然とした空気の中、俺たちは互いを見つめあっていた。
「お前はいくよなぁ?」
「クゥン・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます