Ep25 英雄、新作料理を

森の村に帰ってきた次の日。俺は昼過ぎになってから、ようやく目を覚ました。


「あー・・・完全に寝てた」


昨日の夜は帰ってきてから酒を飲んでいたのだ。それで寝るのが遅くなってしまい、この時間に起きたということだ。

一応、寝床に入った記憶はあるので、なにかしらやらかしたということはないと思う。・・・多分。


「まあ、特に問題は起こしてないはずだ。安心しろ俺」


自分に言い聞かせながら、俺はベッドから出て、リビングへと降りていく。


「・・・誰もいないな」


リビングには人影はなかった。昨日のうちに家に帰ったのだろう。俺は水をコップに入れながら、一日の日程・・・もとい半日の日程を決める。


「やることないな。もう昼過ぎだし・・・」


半日でできることとなると限られてくる。遠出はできないし、狩りに行くのも面倒だ。といったらやることは一つになってくる。


「・・・なにか作るか」


俺は新たな食材で、料理を作るかことにした。頭の中に浮かんだのは一つ。それを思い浮かべながら、俺はキッチンに向かって行った。




「さて、やるか」


俺はキッチンで道具を準備。仕入れた鶏肉とカレー粉、あの美味い酒、それから塩を用意。

今回作るのは、鳥もも肉のカレー風味照り焼き。長いので鶏カレー焼きにしておこうか。それを作る。


「日本にいるときよく作ったな。またこれが食えるとは・・・」


正直感動した。カレー粉を見つけた時の感動といえばもう・・・やべぇな。今から腹がなってきた。


「ええっと、まずは・・・」


※ここから作り方入ります。


結構作り方は簡単だ。まず、鶏肉の皮を取り除く。そこに塩を振り、しばらく揉みほぐす。揉みほぐしたら、そこに買ってきたカレー粉を多めにふりかけ、さらに揉みほぐす。


「・・・結構しんどいんだよなこれ」


中々しんどいん。腕が疲れてくるのだが、やはりよく揉みほぐしていた方がいい。味を練り込むようにこう・・・じっくりと。


揉みほぐし終わったら、次は味付け用のタレを作る。あの酒と砂糖、商店街の露店に売っていた串焼きのタレを混ぜる。これは他の料理にも使えるであろう美味しさだ。今度使おう。俺がタレを混ぜ終わったところで、いつもの3人がやってきた。


「あれ?なにか作ってるの?」

「また新作料理?飽きないわね」

「あ、いい匂いがします」


この時点で匂いに気がつくとは・・・流石に獣人娘。鼻がよく効くようだ。


「ちょっと待ってろよ。俺の新しいレシピだ。絶対に美味いからな」


これは美味いと確信できる。タレからしていい匂いを放っているのだ。これを肉に絡めて炒める。本当は米があった方がいいのだが・・・今度探してみよう。


次は肉を焼く。フライパンに油を引き、肉を敷き詰め焼いていく。火加減は強めに設定し、一気に2〜3分ほど焼いていく。いい感じに焦げ目が付いてきたら、いよいよタレと絡める時だ。


”ジュアァァァ”


豪快に食欲をそそる音を立てながら、瞬時に沸騰し肉と絡まるタレ。白い湯気を出しながら、いい匂いが鼻をくすぐる。最高だね、この匂い。


「うわ・・すごくいい匂い」

「あんた本当に上手いこと作るわね」

「お、お腹がすきました」

「ちょい待ってろ。もうすぐ出来上がるから」


そのまま1〜2分ほど炒めたら完成だ。俺の好物、このカレー味がとても美味しいのだ。やべ、よだれが・・・。


「んじゃ、パンを出すか。ちょっと硬めのパンだけど、焼いてあるから食べやすくて美味いぞ」


実はあらかじめオーブンで長くて硬いパンを焼いていたのだ。完全にフランスパンだが、そこは異世界。名前はわからんが、とにかく帝都で買ってきた。


「まだ昼なのに、すごい豪華ね」

「いいんだよ。作ったの俺だし」

「も、もう食べていいんですか?」

「待ちなさい。たくあんあるんだから、慌てるな」


全員が席に座り、俺が白くて飲みやすいワインを取り出したところで、昼食の始まりだ。


「じゃ、早速・・・」


俺はフォークを肉に突き刺す。持ち上げた瞬間、タレが滑らかに肉から滴り落ちる。これもまた、食欲をそそるものだ。

俺は見た目良しの評価をし、口に運ぶ。


「・・・美味い」


この見た目、香り。説明は不要だろう。当然美味い。日本でもここまでの味に仕上げたことはなかった。続けてワインを口に含む。甘めの酒が口に広がり、先ほどの肉の余韻を一気に押し流していく。この相性も絶妙。


「こ、これ!美味しい!!」

「至福の味ね・・・」

「すごく美味しいです!」


3人とも満足しているようだ。この味なら当然。俺は肉を皿に取り、再び味わった。ワインとの絶妙な相性も、肉のタレの味も、全てが極上。こんなに美味くできるとは、自分でも予想外。


「・・・生きててよかった・・・」


思わず口から声が漏れる。3人とも食事に夢中で、その声を聞くことはなかったが。



そのうますぎる料理は、俺の至福の料理の1品として登録されることになった。











「俺、太らねーかな?」


唐突に俺は思った。流石にここまで食ってばっかいると、太ってしまうかもしれない。


「大丈夫。森だから、狩りをすれば太ることはないよ」

「うん。狩りだから自然に動くし」

「心配しすぎですよ」


3人から同様の意見を言われるが、俺は不安をぬぐい切れていない。

そこで、俺は絶好の運動不足解消をすることにした。



「明日、骸骨の軍勢が出た原因を探ろう」

「「「え?」」」


3人から驚きの声が上がる。


え?いやなの?骸骨たくさん倒せば運動できるでしょ?


唖然とした空気の中、俺たちは互いを見つめあっていた。









「お前はいくよなぁ?」

「クゥン・・・」

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