Ep24 英雄、ターゲットに

零人が森に帰った後のこと。帝国の皇帝が住む宮殿に、騎士団長のロイドはやってきていた。


「それは、本当のことなのか?」

「はっ!」


皇帝、ウレアーゼ=フォア=ベネトナシュは、信じられないと言った表情でロイドの報告を聞いた。まだ艶のある白髪はくはつをしたダンディなおっさんである。


「1000を超えたとされるアンデッドの軍勢を、たった1人の少年が殲滅しておりました」

「だが、それが本当だとしてだ。そんなもの、我々にとって脅威以外の何者でもないぞ?もし、そのものが帝国を滅ぼそうとでも思ったなら・・・」

「間違いなく我々が負けます」


ロイドは確信めいた口調で言葉を返す。20分もかからずに1000の軍勢を滅ぼすほどの力だ。それがどれだけの力か。


「うーむ。せめて、そのものの身元が分かればよいのだが・・・」

「難しいと思います。私も見たことがないような少年でしたから」

「確か、白髪の少年だったな?」

「はい」


先程ロイドから報告された特徴である、白い髪のことを考える。


「我々王家は、白髪のものが多い。だが、そのような強大な力を持ったものはおらん。一体どこのだれなのやら」

「申し訳ありません。私がもっとしっかりと確認していれば・・・」

「よい。仕方ないことだ」


謝るロイドをなだめながら、皇帝はその少年のことを考えた。帝国に牙を剥く存在かどうか、見極めなければならない。

皇帝は家臣たちに指示をだす。


「よく聞くのだ。その少年について、可能な限り情報を集めよ。その者は、帝国の毒になるかも、良薬になるかもしれん存在だ。多くの情報を集めるのだ!」

「「「はっ!!」」」


こうして、帝国による零人捜索が始まったのだった。




俺はしょうもない骸骨たちを倒した後、ダッシュで村に帰ってきた。今までの中で、1番【強化】を強くしたんじゃないか?ってくらい飛ばした。


ここで一つ補足。俺の【強化】は強くする度合いを変えることができる。簡単に言えば、何倍強くする。とかの調整ができるのだ。普段は100倍程度までに抑えているのだが、今回は身体の強度も含めて、300倍くらいに【強化】した。なのでめちゃ早くついた。


「おーい!戻ったぞー!」


家の扉を開け、中にいるであろう少女たちに呼びかける。が、返事はない。いないのか?


「家に帰ってい ──ッおわ!!」


暗闇の中、突然誰かに飛びつかれたようだ。いや、誰かというより、3人のうちの誰かなのだが。しかしイタズラとは・・・やり返してくれる。

俺は誰かを当てるため、胸にある耳に手を伸ばす。このケモミミからして、エマかカナだろうな。

ケモミミを裏の方からややくすぐるように撫でていく。すると反応が・・・。


「ふ、ふにゃあ・・・」


おし。声的にカナだな。おとなしい性格のあの子がこんな行動に出るとは、なにかあったのだろうか?


「カナ。ただいま」

「お、おかえりなさぁい・・・」

「ちょっとまだ撫で続けるからな」

「はぁぁい」


どうやら撫で続けられると力が入らなくなるようだが、同時に疲れをとるマッサージみたいなものにもなっているのだろう。


「で?他の2人は?」

「えっとですね〜」

「ここにいる・・・」

「私もよ」


カナに2人の居場所を聞くとした時、リビングの奥から2人が出てきた。そして、俺の膝の上で気持ちよさそうに耳を撫でられているカナをジト目で見ている。怖い怖い。


「カナ。そろそろ離れなさい」

「うん。離れようね」


2人とも、せめて感情を表に出してくれ。無表情はきつい。照明がランプしかない分怖さが引き立つ。夏によくやる怪談みたいな感じだ。


「わ、わかりました・・・」


流石にカナも怖くなったのだろう。俺の膝の上から降りると、ソファに腰を下ろした。


「そうだ。お前らは大丈夫だったか?」


俺は先ほどのことを思い出し、3人に問いかける。怪我とかはなさそうだ。


「なにが?」

「その様子じゃ、こっちにはなにも出てないんだな。実は・・・」


先ほどの骸骨の件をはなす。が、そんなのは現れなかったと答えられる。あれは帝国で出現した者なのだろう。よかった。


「まあ、いいとして。なにを買ってきてくれたわけ?」

「早速か。まあ、いいけど」


俺は収納袋の中から、買ってきたものを取り出す。調味料や果物、食材の数々や、調理器具などだ。たくさん買った。


「そんで、酒だな。こっちは俺のだけど」

「あんまり私たちは飲まないしね」

「私は飲むけど?」

「わかってるよ」


3人の中で、酒が飲めるのはリアだけだ。獣人娘たちにはきついようだ。うまいのにな。


「まあ、大丈夫さ。俺がなにか美味いもの作ってやるから」

「わあー!楽しみです!!」

「あんたの料理は美味しすぎるのよね」


嬉しい苦情というものだ。美味いなら美味いに越したことはない。俺は料理に関しては全力でやる男だ。もうすでに、新しいレシピは頭の中に浮かんでいる。楽しみにしておくが良いわ。ほっほっほ。


「じゃ、夕飯作りますか。食べてないだろ?」

「うん」

「食べてないわよ。あんた帰ってくるまで待つつもりだったし」

「なにを作るんですか?」

「それはだな・・・」


今日も賑やかな夕食になりそうである。



俺は買ってきた食材をキッチンに並べながら、調理を初めて行った ── 。










「お前には大きな骨だぞ?」

「アオオオン!!」



骨使い道あったわ!!

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