Ep23 英雄、骸骨殲滅
「骸骨の軍勢が攻めてきたぞ!!」
突然、街の若者が走りながら叫んできた。その声に周りは一瞬唖然としたあと、すぐにパニックになり始めた。
「おい!どうするんだ!!」「警備兵はどうした!!」「街が潰されちまうぞ!!!」
怒号などが飛び交い、街を余計に混乱させる。錯乱しているようだ。
「骸骨の軍勢か・・・前の魔獣の軍勢みたいなものか」
俺が王国の英雄となる事件であり、罪人となるキッカケになる事件だ。あの規模、あの魔獣たちの強さと同じなら、余裕で殲滅できる。
「でもな・・・また面倒なことになりそう・・・」
今度は帝国を永久に追放とか言われたら面倒だぞ?貴族って自分のことしか考えてないのか?ま、いいやつもいるのは知ってるんだけどな。
「なんにせよ。一先ず行くか。倒さないと帰れないかもしれないからな」
俺はその骸骨の軍勢の元に行くため、薄暗い商店街を走った。
◇
「まじか・・」
10分後。俺は骸骨たちを見晴らせる高台についた。そこで見た光景に、思わず声を漏らす。
「キモすぎだろこれは。なんだこの骸骨たち。ホラーすぎるわ」
高台から、無数の骸骨が見える。その数はざっと1000体はいるか?そんな数の骸骨だぞ?キモいに決まってる。俺は別に死体マニアでもなんでもない。普通に嫌だ。
「と、とりあえず。衛兵とか騎士団を待つか ── 」
俺が様子を見ようとした時だった。骸骨の1体が、持っていた弓で攻撃を仕掛けてきた。距離として500メートルは離れていうはずなのに、なんて射撃をしやがる・・・。
「変更だな。このまま待ってたら完全に間に合わない。最悪街が潰される」
騎士団が来るまでかなり時間があるだろう。その間にやられてしまっては本末転倒だ。
しかたない。ここは一つ、俺が一肌脱ぐしかないな。
「あれを全部潰せばいいんだな。骸骨だから、砕けば止まるだろ」
いるのは基本的に骸骨だけ。中には動物みたいなやつもいるが、骸骨なので同じだろう。砕けば動けない。それならいくらでもやりようはあるのだ。俺なら特に。
「じゃあ行くか。跳躍力、耐久力【強化】」
俺は跳躍をし、骸骨たちの中心に突っ込んだ。
◇
「こ、これは・・・」
帝都入り口にある高台の上。帝国騎士団団長、ロイド=クレリアルは目の前の光景に唖然としていた。帝都に向かって骸骨の軍勢が進軍しているという情報を聞き、すぐさま現地にやってきたのはついさっき。情報が入ってから20分も経っていないのだが、聞いていた骸骨の軍勢は、すでにいなかった・・・・・・・・。
一体なにが?あるのは骨の残骸だけ。なにかの魔獣がやったのか?ロイドは困惑する。これだけの数の相手をするのは、かなり時間がかかるものなのだが・・・。
と、思考している時、ロイドの目には謎の人影が見えた。それは ── 。
「・・・白髪の少年?」
かなり離れたところに、白髪の少年がいるのを、双眼鏡で確認する。それは、帝都に長年いるロイドが見たことないような少年に見えた ── 。
「あの少年が・・・これを・・・」
驚きを隠せず、口に漏らす。周りにいる騎士たちも、口を開けて愕然としている。
「こ、これは大変なことだ。すぐに皇帝に伝えなければ ── 」
ロイドは騎士たちを門の警備に当て、自分は皇帝にこのことを報告するため、宮殿に向かい馬を走らせた ── 。
◇
「・・・まじか」
結論から言うと、あっさり終わってしまった。俺はとりあえず、半分くらいまで数を減らそうと思い、指を鳴らした。その音・・・正確には空気の振動を、何倍にも【強化】したのだ。が、これがいけなかった。
近くにいたものを軽く砕くくらいだと思っていたのだが、この骸骨たちが予想以上にもろかったらしく、あっさりと8割ほど倒してしまった。俺の【強化】も強くしすぎたのだろうが・・・それにしても脆すぎる。脆弱にもほどがあるだろう。
「なにも戦利品もないし。はぁ・・・」
完全に働き損だった。いやま、帝都が襲われなかっただけいいのかもしれないが、それにしてもなんかあるだろ?骸骨がレアなアイテム持ってるとかさ!!なにも無しだよこれ?
「・・・帰ろ」
気づけば陽も完全に沈んだ。これはもう帰って夕飯を作るべきだろう。長居をしてしまったようだし。
俺は帝都がに背を向け、森のある方角に向かって走り出した。
勿論、【強化】も忘れずに・・・。
◇
その頃のリアたち。
「・・・零人が帰って来る気がする」
「本当ですか!!」
「どこ情報よそれ」
「私の直感だけど?」
「・・・」
零人の帰りを予知していたリアであった。
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