Ep17 英雄、変身マントを装着
洞窟から帰ってきた日の翌日。昼になって、ようやく俺は目を覚ました。
「・・・寝すぎたか・・・」
昨日はついついワインを飲みすぎてしまったようだ。個人的に美味い酒ができてしまったのである。甘い赤ワインのような味をしているため、俺はワインと呼んでいる。
「美味い酒も、飲みすぎるのは良くないな。ほどほどにしておこう」
3人が帰った後で本当に良かった。昨日の夕食の後の記憶がない。3人が帰ったところまでは覚えているのだが・・・。
「ま、いいや。そんなことより変身マントだ。早く使いたい・・・」
俺は変身マントを今日使うつもりでいたのだ。実験するだけだが、それだけでもワクワクする。
「変身なんて夢みたいだな。あんまり外見を変えるとかはできないみたいだけど」
俺は独り言を言いながら、家の外まで出て行った。
◇
「さて」
家の前に出てきた。今更だが、俺の家の周りには村人はいない。少し村から離れたところに作ったからである。
ここなら何かあっても誰に迷惑がかかることもない。
「じゃあ早速」
俺はマントを羽織り、頭の中でイメージをする。まずは・・・そうだな・・。はじめに顔を変えることはやめておこう。髪から弄るか・・・・。俺は頭の中でイメージを固め、変身と唱えた。
「・・・どうなったんだ?」
わずかに身体が暖かくなった。おそらく変身が完了したのだろうが、俺にはわからない。仕方なし、このままリアたちのところに行くとしよう。どんな変化になっているんだか・・・。
俺がすぐに3人の元へ向かおうとした時、ちょうどその3人がこちらに向かってくるのが見えた。
「あ、ちょうどいい時に。おーい!」
声を張り上げ呼ぶと、3人はその場で立ち尽くした。その反応からして、変身は成功したようだが・・・。なんだその反応は。
「あ、あんた零人よね?」
「ああ。そんなに違うか?」
「なんだか前より格好良くなってる」
「まじかよ」
エマに疑われ、リアにかっこよくなったと言われた。かっこよくなっているのなら文句はないぞ。元からそんなにひどい顔をしていたわけではないと思いたいが・・・。
「ど、どちらの零人さんも・・・素敵だと思いますよ・・・」
カナが恥ずかしそうに俺に言う。ありがとう。だが、そこまで顔を赤くするくらいなら言わなくてもいいんだよ?
「とりあえず実験は成功だな」
「それがあんたの理想の見た目ってわけ?」
「そうでもない。でも昔憧れていた時がある。あとイメージしやすかった」
「なるほどね」
こんな会話をしているが、俺は今自分がどんな姿をしているのかわからない。とりあえず鏡をみるか・・・。
家の前にある池で自分の姿をみる。この池は透明度を【強化】してあるので、綺麗でよく反射をする。俺の姿くらい鏡のように映して・・・
「お、おお・・・」
俺はおもわず感嘆の声を漏らしてしまった。なにせ昔アニメに出てきたような顔がそこにあるのだ。
俺がイメージした顔はこうだ。
綺麗な銀髪に、薄い綺麗な赤と綺麗な蒼のオッドアイ。顔は元々の顔から変わっていないが、かなりイけてると自分では思った。厨二病は健在なんだよ。
「すげえなこれ。なんていうか・・・すげえ」
「言葉になってないわよ。確かにすごい効力だけど」
「うん。しかも暖かそう」
「冬も安心ですね」
3人がそれぞれの感想?を口にする。これだけの効力を生み出す魔法道具だ。さぞかし貴重なものなのだろう。俺の収納袋よりもレアなのは間違いない。
「これはすごいな。しかも洗濯とか必要ないみたいだ。魔法がかけられてる」
保護魔法でもかけてあるのだろう。傷などもつかないようになっていると思われる。
これはかなりレベルの高い魔法のはず。あの手紙の人物は、きっとすごい魔法士だったのだろう。俺とは違って・・・。
「なんにせよ。これはかなり良いものを見つけれたわけだ」
「本当に。私が開けてれば良かったって思うわ」
エマが悔しそうに俺を睨む。やめなさい。時間は戻らないんだ。これは俺のものだ!!!
「零人。この姿のままいるの?」
「そのつもり。折角手に入れたんだし。使わないとな」
「村にいる時くらい元の姿でいいんじゃないですか?」
「・・・それもそうか」
俺はマントを外し、元の姿に戻ろうとした。が、ここでトラブル発生。
「戻ったか?」
「・・・戻ってない」
「変わってないわね」
「も、戻らないんですか!!?」
・・・ふぁ?戻らない?え?なんで?俺今マント羽織ってないよ?
「どうして・・・」
俺は若干焦りながら、元に戻る方法を模索する。考えていると、リアから助言を貰った。
「零人。マントをもう1回羽織って、元の姿をイメージすればいいじゃない?」
「そうか!わかった!」
なるほど。元の姿に『変身』すればいいのか。そうやって戻るしかなさそうだ。
「でも、なんか勿体無い気もするわよね」
「え?」
急にエマが意見を変えてきた。勿体無いってなにが?
「その姿のあんたって、すごい新鮮な感じがするの」
「それはわかる気が・・・零人さん。やっぱりもう少しそのままでいませんか?」
「いや、別にいいけどさ」
急にどうしたんだ?ま、俺も今の姿のままいてみたいとは思っていたけど。
「その姿もかっこいいと思うわよ」
「そうか?」
「うん。なんかいい」
「そうですよ。いつもと違って・・・かっこいいです」
「うっ・・・・」
面と向かって言われるとどこか恥ずかしく
なる。俺は照れを隠しながら、家の中に入って行った。
キッチンでお茶菓子を準備している時、クスクスと笑い声が聞こえてきたが、俺はそれに反応することなく紅茶を淹れ続けた。
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