Ep17 英雄、変身マントを装着

洞窟から帰ってきた日の翌日。昼になって、ようやく俺は目を覚ました。


「・・・寝すぎたか・・・」


昨日はついついワインを飲みすぎてしまったようだ。個人的に美味い酒ができてしまったのである。甘い赤ワインのような味をしているため、俺はワインと呼んでいる。


「美味い酒も、飲みすぎるのは良くないな。ほどほどにしておこう」


3人が帰った後で本当に良かった。昨日の夕食の後の記憶がない。3人が帰ったところまでは覚えているのだが・・・。


「ま、いいや。そんなことより変身マントだ。早く使いたい・・・」


俺は変身マントを今日使うつもりでいたのだ。実験するだけだが、それだけでもワクワクする。


「変身なんて夢みたいだな。あんまり外見を変えるとかはできないみたいだけど」


俺は独り言を言いながら、家の外まで出て行った。





「さて」


家の前に出てきた。今更だが、俺の家の周りには村人はいない。少し村から離れたところに作ったからである。

ここなら何かあっても誰に迷惑がかかることもない。


「じゃあ早速」


俺はマントを羽織り、頭の中でイメージをする。まずは・・・そうだな・・。はじめに顔を変えることはやめておこう。髪から弄るか・・・・。俺は頭の中でイメージを固め、変身と唱えた。


「・・・どうなったんだ?」


わずかに身体が暖かくなった。おそらく変身が完了したのだろうが、俺にはわからない。仕方なし、このままリアたちのところに行くとしよう。どんな変化になっているんだか・・・。


俺がすぐに3人の元へ向かおうとした時、ちょうどその3人がこちらに向かってくるのが見えた。


「あ、ちょうどいい時に。おーい!」


声を張り上げ呼ぶと、3人はその場で立ち尽くした。その反応からして、変身は成功したようだが・・・。なんだその反応は。


「あ、あんた零人よね?」

「ああ。そんなに違うか?」

「なんだか前より格好良くなってる」

「まじかよ」


エマに疑われ、リアにかっこよくなったと言われた。かっこよくなっているのなら文句はないぞ。元からそんなにひどい顔をしていたわけではないと思いたいが・・・。


「ど、どちらの零人さんも・・・素敵だと思いますよ・・・」


カナが恥ずかしそうに俺に言う。ありがとう。だが、そこまで顔を赤くするくらいなら言わなくてもいいんだよ?


「とりあえず実験は成功だな」

「それがあんたの理想の見た目ってわけ?」

「そうでもない。でも昔憧れていた時がある。あとイメージしやすかった」

「なるほどね」


こんな会話をしているが、俺は今自分がどんな姿をしているのかわからない。とりあえず鏡をみるか・・・。

家の前にある池で自分の姿をみる。この池は透明度を【強化】してあるので、綺麗でよく反射をする。俺の姿くらい鏡のように映して・・・


「お、おお・・・」


俺はおもわず感嘆の声を漏らしてしまった。なにせ昔アニメに出てきたような顔がそこにあるのだ。


俺がイメージした顔はこうだ。

綺麗な銀髪に、薄い綺麗な赤と綺麗な蒼のオッドアイ。顔は元々の顔から変わっていないが、かなりイけてると自分では思った。厨二病は健在なんだよ。


「すげえなこれ。なんていうか・・・すげえ」

「言葉になってないわよ。確かにすごい効力だけど」

「うん。しかも暖かそう」

「冬も安心ですね」


3人がそれぞれの感想?を口にする。これだけの効力を生み出す魔法道具だ。さぞかし貴重なものなのだろう。俺の収納袋よりもレアなのは間違いない。


「これはすごいな。しかも洗濯とか必要ないみたいだ。魔法がかけられてる」


保護魔法でもかけてあるのだろう。傷などもつかないようになっていると思われる。

これはかなりレベルの高い魔法のはず。あの手紙の人物は、きっとすごい魔法士だったのだろう。俺とは違って・・・。


「なんにせよ。これはかなり良いものを見つけれたわけだ」

「本当に。私が開けてれば良かったって思うわ」


エマが悔しそうに俺を睨む。やめなさい。時間は戻らないんだ。これは俺のものだ!!!


「零人。この姿のままいるの?」

「そのつもり。折角手に入れたんだし。使わないとな」

「村にいる時くらい元の姿でいいんじゃないですか?」

「・・・それもそうか」


俺はマントを外し、元の姿に戻ろうとした。が、ここでトラブル発生。


「戻ったか?」

「・・・戻ってない」

「変わってないわね」

「も、戻らないんですか!!?」


・・・ふぁ?戻らない?え?なんで?俺今マント羽織ってないよ?


「どうして・・・」


俺は若干焦りながら、元に戻る方法を模索する。考えていると、リアから助言を貰った。


「零人。マントをもう1回羽織って、元の姿をイメージすればいいじゃない?」

「そうか!わかった!」


なるほど。元の姿に『変身』すればいいのか。そうやって戻るしかなさそうだ。


「でも、なんか勿体無い気もするわよね」

「え?」


急にエマが意見を変えてきた。勿体無いってなにが?


「その姿のあんたって、すごい新鮮な感じがするの」

「それはわかる気が・・・零人さん。やっぱりもう少しそのままでいませんか?」

「いや、別にいいけどさ」


急にどうしたんだ?ま、俺も今の姿のままいてみたいとは思っていたけど。


「その姿もかっこいいと思うわよ」

「そうか?」

「うん。なんかいい」

「そうですよ。いつもと違って・・・かっこいいです」

「うっ・・・・」


面と向かって言われるとどこか恥ずかしく

なる。俺は照れを隠しながら、家の中に入って行った。

キッチンでお茶菓子を準備している時、クスクスと笑い声が聞こえてきたが、俺はそれに反応することなく紅茶を淹れ続けた。

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