Ep16 英雄、宝箱を発見する
ゴキブリを倒し、洞窟を探検していた俺たちは、遂に最深部へと到着した。
「あれ、なんだろうな・・・」
そして首を傾げていた。俺たちの目の前には、洞窟ならではのものがあった。ゲームの世界の定番だが・・・。
「宝箱・・・なの?」
「宝箱ね」
「宝箱ですね」
3人の同伴者が揃って答える。そう宝箱だ。俺たち3人の前には、なぜか宝箱がある。クリアの報酬か何かか?
「とりあえず開けて見る?」
「・・・そうだな」
リアに促され、俺は宝箱に手をかけた。悩んでいても仕方ない。とにかく開けて中身を確認するべきだ。そう思い、俺は中身を確認すると・・・。
「・・・マント?」
宝箱の中には少し大きいマントが入っていた。宝箱に入っていたとは思えないくらい綺麗に保存されている。何かしたの魔法が施されているのだろう。
「なにそれ?」
「おっきい・・・マントです」
エマと暗闇に慣れて来たカナがマントを覗き込みながら声を漏らす。ほんとそれ。なんでマントが入っているんだ?
「零人。箱の中に何かあるよ?」
「え?」
リアから言われ気がつく。箱の中には紙らしきものが残っていた。 なにか書いてあるのか?
俺は手に取り、紙に書かれている文字を読んだ。
「えーなになに?『おめでとう。この宝箱を見つけたということは、洞窟を進んだものたちなのだろう。君たちは素晴らしい。私からの贈り物を授ける』」
なんだこれ?このマントはこの手紙を書いたやつからの贈り物だったのか?なんでそんなめんどくさいことを・・・。紙がもう一枚あるので、俺は続きを読むことにした。
「『これはかなり役に立つ魔法道具だ。できればこれを使うのは、男性であってほしい・・・』!?」
「どうしたの?」
「続きは?」
「なにが書いてあったんですか?」
俺は3人の声に返事を返すことができない。それは、かなり衝撃的な内容であり、男の夢を体現したような内容だった。
『このマントは自分の姿を変えることができるマントだ。無論、透明になることもできる。使い方は、簡単だ。このマントを羽織り、なりたい姿を思い浮かべる。そうすれば、姿を変えることができるぞ。ああ、あまり大きな変化はできないことを覚えておいてくれ。それから、このマントは最初に触れたものにしか使うことができん。これを使って、夢の楽園をのぞいてくるがいい。では、この手紙を読んでいる君の幸せを願っているよ』
読み終えた俺は、心の中で歓喜していた。変身マントだと?これは・・・かなり使える代物じゃないか!!
「どうやらこれは、変身マントらしい。自分の姿を変えることができるようだ」
「変身マント!?それってすごいものじゃない!」
「なんだかすごそう」
「ま、魔法道具なんですか!?それってすごく貴重なものなんじゃ・・・」
すごいマントなのはなんとなくわかるようだ。俺もすごいのはわかる。なにせ変身だからな。男の夢だろそりゃ。
「ああ。残念ながら、俺にしか使えないようだけど」
「え?どうして?」
「手紙に書い書いてあったんだが、このマントは最初に触れた人物にしか使えなくなるように設定されるみたいなんだよ」
簡単に説明する。内容は大体合っているので、これで理解してもらえるだろう。
「そうなんだー。すごいもの見つけちゃったわね」
「零人にしか使えないっていうのはなんだかずるいけど」
「少し羨ましいですね」
ははは。優越感やばい。俺だけのもの手に入れた感がすごい。早く使ってみたいが、ここではなんだろう。村に帰ってからやることにする。
「とりあえず戻ろうぜ。もう陽も暮れてる頃だろ」
俺の提案に3人とも頷きを返し、村に戻ることになった。
カナはまた俺に抱っこされながら帰ることになったが・・・。(強制された)
◇
洞窟の外に出ると、もう夜になっていた。まだかろうじて陽が見えるくらいだが、もうほとんど夕方ではない。星たちがきらめき始めている。
「思いの外長く潜っていたな。帰ってすぐに夕飯にしようか」
「私、ビーフシチューを所望する」
「あ、私もそれ食べてみたい」
「私も・・・です」
どうやら夕飯は決まりのようだ。カナは外に出て恥ずかしくなったのか、俺と目を合わせようとしてくれない。別に気にしなくていいのに・・・。
「じゃあ、急いで帰ろう。俺も腹が減った」
俺たちは走りながら、追加のおかずを考えている。なににしようか。昨日狩った魔獣がまだたくさん残っているはず・・・。
完全に主夫だわこれ。
20分ほど走り、村に着いた。走ったら余計にお腹が空いてしまったので、急いで作ることにしよう。
家の中に入り、すぐに支度をする。早く食べたいが、手は抜かない。完璧に美味く作るのが俺のプライドだ。
本気出す・・・。
それから10分。リビングには美味しそうな匂いが漂い始めた。高速で作った。俺、さすがすぎる。
「お腹すいた・・・はやく食べたい」
「リア、まず作った俺の分まで取ろうとするのはやめろ」
「だってこれ美味しいんだもん」
そういえば始めて食べさせたのもこれだったか。やっぱり1番気に入っているようだな。
「・・・お前ら2人もゆっくり食べろ。喉詰まらせるぞ」
「私たちもお腹すいてるの!!」
「んぐ・・・はぁ・・・幸せです・・・」
味に興奮しながら咀嚼する2人の少女たち。ま、俺の料理を絶賛しているようなので、特になにもいうまい。
「明日はあのマントを使ってみるか」
俺は明日の予定をあらかた決め、取ってきたワインを味わった。
「ガウ!!」
「お前は酒は飲めんだろうウル」
「クウン・・・」
狼にお酒はあげてはいけませんよ?
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