Ep14 英雄、洞窟に潜る

ジャムを作ってから1日が経過した。今日も今日とてやることを模索する。


「どうしよっかな・・・」


目の前には朝食が置いてある。紅茶と昨日作ったジャムを塗ったパンだ。もちろん美味い。朝からこんなに美味いものが食べれるとは。森の恵みに感謝だ。


「また森の散策にでもいくか?でもどこ行っても同じ気がするが・・・」


思案していると、家のドアがノックされた。だいたい誰かは予想ができているが、一応聞く。


「はい。どちら様?」

「私。リア」


ビンゴ。予想通りだ。俺の家を訪ねてくるやつなんて彼女たちしかいない。


「おはよ」

「ああ、おはよう。どうしたんだ?」


朝早くから珍しい。大体訪ねてくるときは昼前くらいなのだが・・・。


「零人。洞窟行こう」

「洞窟?」


洞窟といったか?森の中に?あるわけ・・・なくはないな。うん。可能性十分ある。だけど・・・


「いつ見つけたんだ?」

「村長から聞いた」


なるほど。物知りの亀さんか。村長に向かって失礼かもしれないが、かんぜんに見た目亀なんだよ。


「で?今日はそこに行くのか?」

「うん。エマとカナはもう準備できてる」

「・・・了解。ま、やることもなかったからいいよ」


突拍子もなく言われたが、俺はちょうどいい暇つぶしとばかりに同行することにした。



30分後。

俺たちは以前のように合流し、森の村長から教えてもらったという森の洞窟へと行くことになった。


「なあ、そこって本当にあるのか?」


俺は根本的な疑問を口にする。あるかどうかわからないような洞窟を探すなんて時間の無駄ではないか?だが、俺の疑問に少女たちは期待に胸を膨らませたように言い返す。


「あると思う」

「未知の洞窟なんてすごいワクワクするじゃない!!」

「面白そうです・・・」


などと述べる。ほう、君たちは未知のものが好きなようだな。料理もそんな感じだったし。

だが俺も若干ではあるが、その気持ちもわかる。俺だって男だ。未知なるもの、空想のものに興味を持ったりもする。ここまで熱血的にではないが・・・。


「あったとしてさ。そこの中って危険じゃないのか?」

「危険でも大丈夫だよ」

「そうよ!あんた強いんだから、私たちくらい守れるでしょ?」

「俺任せはやめろや」


完全に護衛目的じゃねぇか。俺を便利屋と思うんじゃない!


「冗談よ。自分の身くらい自分で守れるわ」

「心配しないでくださいね・・・」

「ならいいんだけど・・・・」


俺は歩いているだけで、なぜか疲れを感じてきた。マジで護衛だけのために連れてこられたのかと思った。ま、どっちもち暇なんですけど・・・。


俺たちは洞窟目指して歩みを進めた。



太陽の位置的に、大体2時間は経っただろうか?とうとう俺たちは洞窟を見つけた。


「あったけど、これは見つからないな」

「うん」

「そうね」

「そうですね」


仏頂面で俺たちは会話をする。森の洞窟だが、確かにあった。だが、洞窟の入り口は人1人がかろうじて入れるくらいだし、なによりたくさんの草でほとんど見えない。


「わかるかッ!!」


俺は思わず叫んだ。ここまでかなり探したが見つからず、諦めかけたときに見つけた。場所は・・・村から大体30分くらいの場所。


「近くにあったんだね・・・」

「探した意味は・・・」

「お、落ち着きましょう!」


リアとエマがちょっとイライラした感じでつぶやき、それをカナがなだめようとする。ちなみに、俺も結構イラって来てる。


「と、とりあえず中に潜りましょう?ね?ね?」

「そうね。分かった」

「釈然としないけどね・・・」

「安心しろよ。誰も釈然としてねえ」


こんなに近くにあるならもっと簡単にくることができただろう。エマ、リア、カナ、と皆が洞窟に入って行く。


(次からなんか探すときは近場から探すか)


俺はそれだけ心に決め、洞窟の中に入っていった。




洞窟の中はかなり暗かった。あとなんだかかなり湿気ている気がする。水源でもあるのだろうか?


「なんか出そうだな」


かなり不気味だと思ったが、存外女の子たちは平気のようだ。・・・1人を除いて。


「カナ。離れてくれないか」

「ごごごごごめんなさい!!で、でも無理です!!」


いつもの落ち着いた雰囲気はどうした。カナはどうやら暗くて不気味なところが苦手なようで、俺にしがみついたまま離れない。


「なんで暗いとこダメなのについて来たんだよ」

「だ、だって!!ついてこないと置いてけぼりじゃないですか・・・!」

「カナは怖いところは誰かにしがみつかなきゃ動かないわよ」

「すごいのか呆れるのか・・・」


さすがにリアも呆れたような顔をしている。が、気持ちもわからないでもないと言う顔もしている。


「私も昔はそうだったから。気持ちはわかる」

「リアもか。そうだったんだな」

「私は別に平気なんだけどね」

「姉妹で似ているんだか似ていないんだか・・・」


姉は平気で妹はダメ。おそらく、昔から姉と一緒に行動して来たのだろう。だが、なぜ今日は俺に?


「こ、この中で1番安心できるのは零人さんですから!!」

「俺が?」

「す、すごく強いですし!」

「あ、そうだね」


一瞬ドキッとした俺の心を返せ。と思ったが、まあ、いいだろう。もとよりそんな感情を俺に持っていないことなど承知済みだ。


「あちゃー、チャンスなのに」

「あれは仕方ない。照れ隠しだよ」


2人が変なことをいっているが、今は洞窟に集中しようか。俺は腰にしがみついているケモミミ娘を抱き上げる。


「ふ、ふえ!?」

「歩きにくいからこうするぞ。これでも戦えるから安心しな」


まあ、お姫様抱っこというものだ。俺は両手がふさがっていても戦えるので、この方が動きやすい。

俺は顔を赤くしてしまったカナを抱えながら、先を進んだ。



「あ、あれは・・・」

「無意識なの?そうなの?」


後ろから謎の発言が聞こえて来たが、俺にはなんのことだかわからなかった。

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