Ep13 英雄、絶品ジャムを作る

「で?次は何を作るつもりなの?」


木ノ実採集から帰った俺たちは、すぐにうちの調理場へと向かった。

ラズの実を使った料理をするためだ。

そして今回作るのは・・・


「ジャムを作るんだ」

「「「ジャム?」」」


そうジャムだ。パンにつけて食べるあれだ。それをラズの実で作ってみようと思う。多分美味しくなると思う。


「知らないのか?」

「うん」

「聞いたことないわ」

「同じく・・・」


3人とも知らないようだ。まあ、確かにこちらの世界に来てからジャムは見かけたことがないな。ということは、俺が今から作るのがこの世界では初めてのジャムってことか?ワクワクして来たわ。


「ジャムっていうのは、この木ノ実を煮詰めて作るんだ。パンとかに塗って食べると美味いんだ」


ジャムについて簡単に説明をする。大雑把に言えばこうだ。もっと細かい説明もあるが、これくらい位知っていればいいだろう。


「じゃあ作るから。多分暇だと思うから、いなくてもいいんだぞ?」

「折角だし。見ておく」


リアが見ていくと言ったので、他の2人も頷く。さいですか。


「まあ、いいか」


とりあえず作るとしよう。



まず、収穫したラズの実を水で洗う。ちゃんと汚れは取っておかなければならない。

洗ったら、実を潰していく。身が全てペースト状になるまで潰すのだが、これがなかなかの重労働だ。


「大変そうね・・・」

「馬鹿野郎・・・美味いもののためだ・・・」


なんとか根気強く粘り、全て潰した。

潰した後は、鍋にこれを移す。そしてこの中に砂糖をラズの実の3分の1ほどの量を投入する。甘くなって美味しいのだ。その分太りやすくもなるのだが・・・。


「たくさん入れるんだ」

「うん。折角だし、甘くしてしまおうかなって」


酸っぱいのは正直そこまで好きではない(食べられないとは言っていない)。

実は結構な甘党なのだ。


砂糖を入れたら鍋に火を掛け沸騰させる。沸騰させるとアクが出るので、これを取り除いていく。


取り除いた後は、しばらく混ぜ続け、こし器で種を取る。これをしばらく繰り返した後、もう1度沸騰させる。こうして煮詰めること十数分で完成だ。


「はいできた」

「「「おお〜」」」


結構多めに作ったので、たくさん食べれる。保存室に入れておけば日持ちもするんし。


「じゃあ味見だな」


俺はスプーンを用意し、一口食べようとした。が。


「私食べたい」

「私も」

「わ、私も、です・・・」


おっとこの甘い匂いは女の子たちが好きな匂いだったか。蛇の時とは違って、デザートっぽいしな。とはいえもう夜になる。夕飯の前なので、あまり高カロリーなものはオススメしないが・・・


「もう夜だから、夕飯の後でな。おれもその時にするから」


俺が言うと、3人は納得してくれたようだ。俺もはやく味見をしたいのだが、ここは我慢しよう。仕方なし。




ということで夕飯後。ジャムを食べる時が来た。ちなみに夕飯は狩った鹿っぽ

奴の竜田揚げである。美味しかったです。


「じゃ、食べるか」


ジャム単体で食べるのもなんだか変な気分だが、しかたない。今パンなんか出したら、確実に太る。太りたくない。


「楽しみ」

「どんな味なのかしらね」

「嗅いだことのない匂いだったから・・・」


興味津々で、もう待ちきれないと言った感じでいる。俺もはやく食べたいので、手早く器にのせることに。


「よし。食べようか」

「「「はーい」」」


みんな同時に1口頬張る。


「・・・美味い・・・」

「本当・・・おいしい」

「これ・・・くせになりそう」

「おいしい、です・・・」


それぞれが似たような感想を述べる。要するに美味いのだが、普通のジャムとは違ううまさだ。


まず、舌触りが全く違う。なめらかな感触で、舌の上に乗った瞬間広がる甘さ。味も革命的だ。これは王都で売ったらとんでも無く売れそうだ。


「単体で全然食べられる・・・」

「すごいわね。零人は」


エマが感嘆したように口に出す。


「なんでこんなものが作れるの?も料理人になった方がいいんじゃない?」

「俺はあくまで趣味でやってるだけだ。料理人なんかやって、俺の飯にケチでもつけられたらたまったもんじゃない」


よくいるクレーマーといううのが嫌なのだ。そんなもののために俺は料理を作りたくないし、食べさせたくない。


「そうなの?勿体無いと思うけどな・・・」

「はい。すごい美味しいのに・・・」

「そんなに絶賛するほどか?」


うーん。俺はずっと食べ続けているからよくわからん。このジャムは格別だが。よくやった俺。


「王様に食べさせてあげたかったな」


お世話になった王様の顔を思い出す。思えば、この隠居生活も、王様の全面的な支援あってのものだ。

いつか、王都に行くことができれば食べさせてあげたい。俺は心の中でそう思った。






ちなみに。作ったジャムの量は単純に見積もっても15リットルはある。これはしばらくは持ちそうだ。

本当にいつか、王様と・・・姫様・・に食べさせてあげて、味の感想を聞いてみたいな・・・。

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