Ep12 英雄、木ノ実を収穫する
翌昼。
「はぁ・・・」
俺はリビングのソファーで1人ため息を付いていた。
「なんで魔法が使えないんだろ・・・」
何度も言っていると思うが、俺は魔法が使えない。こちらの世界の人間なら誰しもが使える魔法がである。
ここで一つ説明を挟む。
そもそも魔法とは、全ての種族が持っている魔力を利用してできることである。実際に、リアたちは魔法を使っているだろう。魔法に適性などは基本的にはない。ただ、どういった魔法が得意なのかは人それぞれである。
リアはエルフなので風が得意なようで、エマは魔力そのものを使う無。カナは水魔法が得意なようだ。
「俺は魔法がで使えない代わりに、【強化】の異能・・が使える」
そう。俺が使えるのは魔法ではなく異能・・。確かに俺の異能は便利である。この力はあの能天気な女神様からもらったものだ。この世界では戦闘にも生活にも役立つ。だが・・・
「自分で火を出して火加減調整とかしたい」
先程俺は蛇の蒲焼を作っていたのだが、火加減の調整が難しい。自分で魔法が使えれば、こんなに苦労しなくてもすむのだろうが。
しばらく悩んだ末の結果は・・・。
「ま、多少不便でもいいだろう。それが料理の楽しさでもあるし」
俺ってマイペース。めげないめげない。
◇
蛇の蒲焼が出来上がったので、3人を呼んで食べた。その感想は・・・
「めちゃくちゃ美味いなこれ」
思いついたタレを使ったところ、信じられないくらい美味くなった。もはやうなぎと言ってもいいくらいだ。
「本当。おいしい」
「あの気持ち悪い蛇がこんなに美味しくなるなんて・・・」
「さすがです・・・」
3人ともお気に召してくれたようだ。こんなに美味い蛇がいたとは正直驚いた。さすが異世界。食材もファンタジーのようだ。(上手い)
昼食を食べ終えた俺たちは、今日のすることを決めることにした。
「私は今日、ラズの実を取りに行こうと思ってました・・・」
「ラズの実?」
なんだそれは。ラズベリーかなにかか?
「ラズの実は、森によくなっている木ノ実です。酸っぱくてとっても美味しいんです・・・」
「完全にラズベリーだなそれ」
味とかも完全に同じだと思う。まあ、いい。今日も暇だ。木ノ実採集をするとしよう。
「じゃあ採集をしよう。案内してくれるか?」
「はい」
俺たちは4人で森の中へと入っていく。(すでに森の中だが)
なにか新しい料理ができるかもしれない。ラズベリー・・・どうしようかな。
俺、とっても悩む。
◇
30分後。
俺たちはラズの実がなっているという木までやってきた。
「なあ、あの木なんだよな?」
「そうですよ。あの木の上の方に実がなっているんです・・・」
「そうなのか。で?あの下にいる奴らはなんなんだ?」
普通に木ノ実を採集して終わりかと思っていた。が、そこには先客・・・というよりも、敵のようなものがいた。
「あれは・・・猿ですかね?」
「猿っていうよりコングじゃない?」
「めんどくさそう」
木の下には、妙にこちらを敵対視している猿のような魔獣がいるのだ。あれを倒してからとなると、正直だるいな。いやマジで。
「あれ倒すしかないのか??」
「あんたなら一撃でしょ」
「木も壊れる」
エマが俺に言った後、リアがツッコミを入れる。まあ、あの威力でやれば壊れるわな。根元から折れるかも知れない。
「1番簡単な解決策は・・・飛ぶか」
「「「飛ぶ?」」」
3人の声がシンクロする。お前ら息合いすぎだろ。
「俺がジャンプ力を【強化】して、そのまま枝に飛び移るんだ。それでどうだ?」
「あの猿は投擲もできそうですけど?」
「めんどくさいやつだな」
飛んでる時に撃ち落とされたらたまらないな。チッ!
「じゃあわかった。あの猿は潰してくる」
「木を折らないでよ?」
「なんか不安ね」
「大丈夫なんですか・・?」
大丈夫だ信用しろよ。俺をなんだと思ってるんだ。ちゃんとコントロールできるぞ。
こころの中でそんなことを愚痴りながら、俺は猿の元まで移動した。
◇
「キキッーー!!」
「うるっせーな。大人しくしとけ猿が」
接近した瞬間俺に向かって叫んできやがった。耳に響くわ。こいつは明らかに敵対心を持っている。すぐわかった。
「一瞬で終わらせてやる」
「キキ・・・キッ!!!」
猿は俺に向かって石を投げてきた。しかも早いしコントロールもいい。プロ野球選手にでもなれたんじゃないか?
「っと」
それを俺は余裕で躱し、反撃をする。といっても、反撃のような感じの攻撃ではないが。
「重力【強化】」
俺は猿にかかる重力を【強化】した。しかも、【強化】の割合も強めにした。猿は地面に這い蹲り、その身体を潰されたようだ。ざま。
「終わったぞ」
俺は離れたところで見ていた3人を呼び、終わったことを告げる。大体2分で終わった。
「あんたね。も少し慈悲ってもんがないの?」
「邪魔だったからつい。それに弱肉強食の世界だからな」
「零人はこんな感じだから、諦めて」
「仕方ないです」
3人のそれぞれの意見を聞きながら、俺は木に登り始めた。そのままたくさんのラズの実を収穫し、村まで戻った。
採ったものを1つ食べて見たが、完全にラズベリー。味といい見た目といいそのものだ。美味い。
「これは使えるかもな・・・」
俺はまた一つ、新しいレシピを思いついた。
転移前の知識で作り方とか知ってるから、思いついたわけではないけれど。
「ウルの出番少なくてゴメン!!」
「ガウ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます