Ep9 英雄、狩りに行く
マイホームが昨日完成した。まあ、まだ改築するかもしれないが、その時に考えよう。
「・・・今日はどうしようか」
俺はやることが特にないので、今日をどう過ごすか悩んでいた。はっきり言って、何もない。スローライフができればいいと思っていたが、スローライフが過ぎたかも・・・。
「零人さん・・・」
「ん?ああ、カナか。どうしたんだ?」
振り返ると獣人姉妹の妹、カナが俺の後ろに立っていた。今いるのは家の外にある池付近に設置したベンチ。さすがにリアのように無許可で家に入って来るようなことはない。
「今日は、おひまですか・・・?」
「え?ああ。今日は何もやることがないぞ」
というかやることがなさ過ぎて途方に暮れていたところだ。
「いまから狩りに、行きませんか・・・?」
「狩り?」
狩りと言ったらあれか。魔獣とかを倒して狩る。狩猟のことだな。
「ああ、いいぞ。身体動かしたいし」
「良かったです・・・。私たちだけじゃ不安なので」
「不安・・・まあそうだな。危ないわ」
カナ達に会った時のことを思い出す。あれは狩りの最中だったのだろう。それで死にかけるとかどっちが狩られているのかわかったもんじゃないが。
「ウル!行くぞ!」
「ガウ!」
あの時ボコボコにしてペットにした狼達は、1匹を除いて森に返した。最初は全部ペットにしようと思ったが、さすがに多い。人は襲うなと言ってあるので心配はない。
「どうして、その1匹だけ残したんですか・・・?」
「こいつが残るって聞かなかった」
狼達のリーダーであったこの狼だけが、俺の元から離れようとしなかったのだ。 仕方ないので、俺はそばに置くことにしたのだ。なお、リーダーのこいつが呼びかければすぐに他の狼達も駆けつける。
「で、名前はなんと・・・?」
「ウル」
名前つけるのはめんどくさかったので、ウルフのウルで呼んでいる。本人も嫌がっていないので、これで決まった。
「んで?リアとエマは来るんだろ?」
「はい。村の近くで待っているはずです。ここは村の柵の外ですから、外の方が近いと」
俺の家から近いところにいるようだな。ちょっと面倒なところに家を作ったか?まあ、いいか。俺の家だし。
「よし。じゃあ行くか」
「はい」
俺たちは2人の少女達がいる場所に向かった。
◇
俺たちが着いた時、2人が腕を組みながら待っていた。
「零人。遅い」
「なにやってたのよ」
2人に怒られてしまった。俺、結構早く来たと思ったんだけど?
「俺さっき呼ばれたばっかりなんだけど?」
「・・・それでも早く来てよね」
んな無茶な。エマは無茶振りを言ってくる。そんなに早く動けたら遅刻なんて存在しないぞ?言いたかったが、ここで意地を張る必要はないよな?
「善処する」
「私たちが急かし過ぎただけ。ごめん」
リアは俺のことを少し考えたのか、先ほどとは違う意見を述べた。自分たちがそれなりに待ったので、少し遅いと感じたのだろう。それくらいならだれでもあるか。
「いいよ。特に気にしてない。ま、俺も早く動いていればよかったしな」
「・・・ありがと」
目をそらしながら、俺にお礼を言う。気にしてないって言ったのにな。
「・・・私も・・・急かし過ぎたわ」
「だからいいって」
「あの・・・行きませんか?」
エマも謝って来たが、特に気にしてないと告げる。
カナの方が早く行こうと言ったので、俺たちは森を進んで行った。
◇
森の中には魔獣がたくさんいる。キモいものから殺すのをためらうものまで多種多様だ。
「エマ!そっちにいったぞ!!」
今は熊みたいな魔獣を追っかけ回しているところだ。あの肉がまた料理しがいのある・・・。
「了解よ!!【ネット】」
エマが魔法を使用する。この魔法は対象を捕まえるための魔法は【ネット】だ。属性は誰でも使える無属性だ。俺は使えません。
「ナイスだエマ!」
魔力の網に捕まった熊がもがいている。だが、魔力で作ったためとても頑丈。簡単には破れない。
「リア!風魔法で傷を!」
「わかった。【ウィンドカッター】」
リアの風魔法により、熊が腕の健を切られ、動きが鈍くなる。今のは風の刃を生み出す魔法だ。
「トドメだカナ!」
「はい・・!【ウォーターバレット】!
」
トドメにカナの水魔法が熊の頭部を打ち抜き、熊は絶命した。
水で弾丸を作り、射出する魔法。当たったらひとたまりもないだろう。
「倒したけど、俺来る意味あったか?」
俺、なにもしていない。確かに魔法一切使えないけどさ。それにしても少しくらい攻撃させて欲しかった。
「零人がやると、すぐ終わっちゃう」
「らしいからね。狩りの楽しみがなくなる」
「強すぎると、木を壊してしまいそうで・・・」
ひどい言われようである。俺の力は確かに強いけれども!コントロールくらいはできるわ!
「それにしても、結構狩ったわよね」
「うん。お姉ちゃんの【ネット】重そう」
「零人、1匹も倒してない」
「君たちのせいでしょうが」
それなりに村から離れたところにいる。倒したのは小さい獲物ばかりだが、それなりの数を倒している。
「もう少し先に行ってみるか。でかいのがいるかもしれないし」
「なにかあっても、零人がいるから安心」
「じゃあ行きましょう」
「うん」
俺たちは大物目指して、森を進んで行くことにした。
「 ずっと乗っててごめんなウル。」
「ガウ!」
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