Ep8 英雄、マイホームを完成させる
翌日。
朝から俺は家づくりの再開をしていた。
「2階はほとんど娯楽部屋みたいな感じだな。必要なものは1階に全部作ったし」
基本的に2階は活用スペースが決まっていない。何かあったら使うという感じのフリースペースだ。
「朝から作ってるの?」
「おー。おはようリア。早く完成させたいから作ってるんだよ」
1階に降りると、リアがソファーにすわっていた。ちゃんと入室許可を取ってくれ。不法侵入になるから。
「別にいいじゃん。特に取られるものも置いてないでしょ?」
「モラルの問題」
「モラル?」
「倫理観ってことだ」
モラルの意味は本当は知らない。けど使い方は知っていると言う感じだ。英語の方はわかりません。
「そんなことより。今日はずっと家作るり?」
「一応。今日中に完成させられるかもしれないから」
「3階まで?」
「2階まででいいと思いました。3階はあっても使わない」
1暮らしに3階はいらないだろう。2階ですら部屋が余るくらいだ。俺はそんなに無駄なものを置いたりしないし、なんなら収納袋があるからそん中にぶち込めばいいだけの話だ。
「そうなんだ。まあ、3階は確かにいらなそう」
「そういうことだ」
リアはそれだけ聞くと、家から出て行った。何しに来たんだよ。
「まあ、いいや。早いとこ作っちまうか」
俺の作業はまだまだある。気合を入れ直し、俺は家づくりに集中した。
◇
「というわけで、零人は今日1日家づくりで費やすそうです」
「ま、それなら仕方ないわよね」
「家は必要ですから・・・」
3人の少女達が集まって話をしている。先ほどリアが零人を呼びに行ったのは、3人ともこれから村を周りに行くので、一緒にいかないかと言おうとしていたのだ。が、零人はすでに家づくりで忙しいようだったので、少し会話をして帰って来たのだ。
「仕方ないわよね。私たちだけで行きましょ」
「そうね。零人は後からでもいいし」
「また今度ですね・・・」
仕方ないと3人は割り切り、村を見て回ることにした。
◇
この村は基本的に森の中ということで、木々が生い茂っている。木ノ実なども豊富に採集することができるのだ。
食糧事情で困ることは基本的に皆無。肥沃な土地である。森に行けば動物や魔獣もいる。魔獣の肉は種類にもよるが、基本的には食べられる。
零人のように調理すればとても美味しくなるのだ。
村の近くには水源となる川がある。この川は森の水が流れているもので、この地下には莫大な量の水が蓄えられている。
これだけ恵まれた環境なのにもかかわらず、この村の存在がほとんど知られていないのは、やはり森の奥深くにあるからという理由があるからだ。
この森に到達するまでには、たくさんの魔獣と戦うことになる。そうまでしてこんな森の奥に来るものはほとんどいないのだ。
そのため、手付かずとなったこの森はこれだけ豊かな森になったのだ。
「てことで、ここはほとんど外の人間が来ないわけ」
「なるほど。そういうことだったんだ。でもなんでいろんな種族が?」
先程から村人を何人か見かけているが、本当に種族が違う。魔人族もいれば、鳥型の獣人、有翼人などもいる。
「ここはね。それぞれの種族から追い出されたり、旅の途中で帰るところがなくなった人たちが来るところでもあるのよ」
「ああ。だからこんなに」
「私たちは、ちょっと違いますけど・・・」
「違うって?」
カナがそんなことを言い出したので、リアは気になりその内容を聞いた。
「私たちは、人攫いに捕まったのよ」
「人攫いに?」
「はい。でも、その人攫いの人たちの荷馬車が誰かに壊されて、私たちは逃げて来たんです・・・」
「そしたらここに?」
「そういうこと」
少々複雑な事情を抱えているようだ。いやこの村の村人達はみなこのような事情を抱えているのかもしれない。
だが、見ている限り非常に楽しそうに生活している。村人達は、ここで好きな暮らしを手に入れたのだろう。
この村は、自分の理想の村だと、リアはそう思った。
◇
家づくりを再開から半日以上経った。とうとう2階が完成した!俺の苦労がmついに!!
「予想以上の出来栄えだ。まさに、理想のマイホーム・・・」
1人で満足げに頷きながら、2階の中を進んで行く。特に何も置かれていないが、客室になるだろう。それ以外でも自分の好きな時に入られる部屋を6つ作った。なにがあっても部屋が足りなくなることはないだろう。
「基本的には1階にいるが、たまに2階に行くのもいいかもしれん。なにより・・・」
今回は1階とは違い、2階だ。つまり、高さがある。
「オープンテラスを作ったのは大きいな。ティータイムはここで。なんてな」
オープンテラスは作りたかった。ティータイムは置いておいて、夜にここで飲むワインは最高だろう。星もたくさん見える。
「俺のマイホーム。ついに完成・・・」
俺のマイホームはこの日、ついに完成した。
さすがに部屋作りすぎたかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます