Ep7 英雄、1日の振り返り

俺は作りかけの家から降り、ほったらかしにしていた狼たちの元に向かった。俺が来た途端、狼たちは怯えていた。そんなに怖いかね。


「ごめんなお前たち。すっかり忘れていたよ」


縄をほどきながら謝る。狼たちは身体を萎縮させたまま俺を見ていた。


「お前たちは今日から俺のペットだ。狩とかに一緒に行くだけだから安心しろ。飯もちゃんと食わせてやる。でも、村人を襲ったらお前たちが飯になるから覚悟しろよ?わかったな?」

「「「クゥ〜ン」」」


返事が聞けたので、料理に移るとしよう。



料理ができ始めた頃、俺の家にリアとエマ、カナの3人がやって来た。3人とも出来上がった1階に驚きの声をあげていたが。


「ここを1日で作ったの!?」

「とんでもないわね」

「すごいですね・・・」


驚きすぎだ。俺にかかればこんなものよという感じで3人からの視線を受け止める。はっはっは、優越感やべえ。


「てか、リアは家作ったのか?」

「私はエマとカナのところにお世話になることになったの。だから零人みたいに家を作ったりはしてないの」

「なんと・・・!」


俺は自由に過ごせる場所が欲しかったので、これで満足しているが、やっぱり作らなくとも家があったというのは羨ましい。ま、完成した後は作ってよかったとなるのが目に見えているが。


「ねえ零人」

「なんだエマ」

「なんでこんな村から離れたところに作ったのよ」


それは気になっていただろう。みんながいる村から少しばかり離れているのだ。いったい何故か。


「ここにこの木があったから」

「え?それまじで言っている?」

「大マジだ。俺はこの木が気に入ったんだ」


この木を見つけた時、俺は運命かと思ったくらいだ。それだけこの木を気に入ったのだ。太いし。


「さ、とりあえず飯にしようか」

「あ、さっきのイノシシ使ったの?」

「ああ。だから今日はイノシシのステーキだ。美味いぞ」


さっと作ったので、焼き加減は適当だが、これはこれで美味い。ワインによく合うのだ。


「お前らはワイン飲むか?」

「私はもらう」

「私たちはいらないわ」

「あんまりお酒はすきじゃ・・・」


リアは飲み、エマとカナは飲まないとのことだ。せっかくのステーキ。ワインを楽しまないと勿体無い。転生前も、よく父親のワインを一口飲んだりしていたので酒には強い。


「じゃあいただきます」


俺は皿に乗せた料理を3人の前に置いてから食べ始める。ステーキの他に、パンとスープを作った。夕食はこれだけでお腹いっぱいになる。


「お、美味しい・・・なにこの味・・」

「このお肉、柔らかくて・・・」

「おいひいです」


エマとカナが驚愕の表情で食べ、リアは昼と同じような反応を示す。美味いのは当然。その美味さがどれだけの美味さかが重要なのだ。


「・・・少しだけ香辛料が足りなかったか?」


美味いが、自分ではもう少しの出来栄えだと思う。香辛料をあとほんの少し多めに付ければ、より美味くなっただろう。自分の料理の評価はかなり厳しい。


「あんた・・・もう完全に料理人の域よ」

「すごいです・・・」

「おいひい」


そこまで驚かなくてもいいと思うが。料理人になるつもりなどない。あくまで趣味だ。俺が食べれればそれでいい。まあ、人に食べてもらって評価されるのは嬉しいが。


「んっ・・・ワインは美味いな」

「うん。いい感じの苦味」


商人から買ったワインだが、それなりに美味しい。肉のしょっぱさといい感じにマッチしてる。これは買ったかいがあった。が、やはりなにか物足りない。


「まあ、いいか。酒も自分で作るし」


俺はいずれ酒造りもやるとして、今のワインの味を楽しんだ。



狼達にはここに来る途中で狩った魔獣の肉を調理して食べさせた。みんな美味しそうに食べていました。はい。


夕食を終え、食器を洗ったあと、俺はすぐに寝室へと移動した。3人は家に帰ったので、今は1人だ。


「今日は疲れたな・・・」


持ってきたベッドを寝室に設置し、その上に寝転がる。ふかふかですぐに眠ってしまいそうだ。


「1日で女の子を3人も助けるとは・・・しかも全員美少女・・・」


リアはエルフ族に多い美形の美少女。翠の瞳と同色の髪をしている。そりゃ狙われるわな。


エマとカナは狐人族の少女達だ。この世界に来て結構経つが、獣人を見たのは初めてだ。前の世界でよく読んでいたライトノベルなどでよくある種族だ。正直心が踊ったね。


2人とも栗色の綺麗な髪と瞳をしている瓜二つの姉妹だ。たしかエマの方が1つ上のお姉ちゃんだったか。俺は髪の長さで区別しているが。長い方がカナだ。


「俺、スローライフ充実しそうだわ」


少し楽しみにしながら、俺は眠気に身を委ねた。





「ん〜、どうやら自由に過ごせているようだね」


零人がいる世界とは違う世界。俗に言う神域と言うところで、零人を見ているものがいた。


「好きにやれて何よりだね。送った甲斐があった」


彼女は零人をあの世界に送り込んだ女神である。普段は別のことをしているが、たまにこうして零人の様子を見ているのだ。


「なんだか零人君は、スローライフを送りたいようだけど、どうなるのかな?」


未来のことは、例え神であろうとわからない。時の神なら事情は別だろうが、この女神様は時の神ではないのだ。


「気になるから、なんか起きたら見れるようにしておこう」




まるでテレビ番組を録画するような感じで、女神様は呟いたのだった。




零人は、女神様の娯楽となっていた。

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