Ep6 英雄、村でマイホームをつくる

エマとカナに連れられ、俺たちは森の村へとやってきた。歩いているうちに狼達が目を覚ましたが、その顔は恐怖に染まっていた。


「お?目が覚めたのか?村に着くまでまってろな」

「クゥン・・・」


威勢がない。借りてきた猫のようだ。まあ、暴れられるより全然いいのでこのまま行くとしよう。


「零人・・・あんた何したの?」

「普通に気絶させた」


全員意識飛ぶまでぶん殴っただけなのだが、少々威力が強すぎたかもしれない。まあ、そこは反省しよう。


「生きてるから問題ないでしょ」

「そう思ってるのは零人だけだと思う」


リアに指摘されるが、特に気にしない。回復くらいならできる。その辺の抜かりはないぞ。


「本当にすごかったわね」

「目を閉じている間にもう終わっちゃってたから」

「つまりそれだけの速さで殴ったのね?」

「いぇあ」


そんなやりとりをしているうちに村に着いたようだ。一体どんな感じの村なのか。俺は期待に胸を膨らませながら、村に入っていた。



「本当にありがとう!!!」


俺はいま、亀の爺さんにめっちゃお礼言われてる。いや、姿がマジで亀なんです。


「あの、もういいから・・・」

「いやぁ!感謝してもしきれんわい!!ありがとう!!」

「感謝されときなさい」


リアが無責任なことを言ってくるが、もう20分ほどお礼のラッシュを食らっている。そろそろやめてほしいんだけど・・・。


「村長、もう本人もいいって言ってるんだし、よしなよ」

「そうですよ。零人さんが困っています」


村長に促しながら、ピコピコと耳が揺れている。なにあれやばい触りたい。


「とりあえず、この村に住みたいんですけど、手続きとかっているんですか?」


俺はこの村に住めればいいわけであって、お礼なら住む許可がほしい。


「いや、さっきはすまんかったな。ついお礼を言いすぎてしまった。手続きならいらんよ。自由に住んでくれ」

「いいんですか?俺は人間族なんですけど、村の人たちは嫌がりませんか?」

「大丈夫じゃよ。元々この村は色々な種族が住むために作られた村じゃしな。と言っても、村人はあんまりおらんが」

「ちなみに何人ほど?」

「15人じゃ」

「「少な!!」」


やべえな。学校だったら1クラスもないのかよ。どんだけ少ないんだ。いや、ほとんど存在すら知られてない村なんだけども。


「ちなみにリアの村はどれくらいいたんだ?」

「エルフの村は400人くらいはいたわよ。結構大きい村だったし」


それでも400人しかいないのか。王都とか人口ハンパないな。


「わかりました。では今日からお世話になります」

「うむ。わしとしても村人が増えるのは嬉しいことじゃからな」


ってことであっさり移住はできました。テラ簡単。



「さて、家をここに作るとしよう」


俺は一旦リアと別れ、自分の家を作ることにした。目の前にはでかい木。とてつもなく大きい木だ。幹だけで太さは15メートルはありそうだ。


「俺としてはありがたいけどな。中くり抜くだけでいいし」


初めは一から作ろうかと思ったが、あまりにもめんどくさいので、でかい木を見つけそこをくり抜くことにしたのだ。

この村は周りを大樹で囲まれているので、太い木がたくさんあるのだ。地面もほとんど草で覆われている。


「じゃ、作業しますか」


俺は家づくりを開始した。






まず、収納袋からスコップを取り出す。それを使い木を掘って行くだけの簡単な作り方だ。もちろん、スコップは強度と掘りやすさを強化している。なのでまるで砂を掘るように木が削れるのである。


「このままいけば夜には作り終わるか?まあ、順調にいけばだけど・・・」


俺はとにかく快適な家を作りたい。なので、部屋をたくさん作り、2階3階を作り、キッチンなどの設備も充実させる。

火を使ってもいいように、キッチンは枝の上に作り、その上を屋根で覆う。

食材の貯蔵庫を作り、風呂などもつけたい。ここは自然の中だ。水は地面などにたくさんある。


「よし、とりあえずこんな感じに作るか」


頭の中でイメージが固まったので、俺は掘るスピードを上げた。出来上がるのが楽しみだ。



一方その頃。

リアはエマとカナに連れられ、2人の家に来ていた。


「どうぞ」

「ありがとう」


カナにお茶を出してもらい、リアはゆっくりと口をつけ、一息ついた。


「おいしいわ。とっても」

「お口にあってよかったです・・・」


2人は案外いい相性なのかもしれない。そこで、姉妹の姉であるエマが話を始める。


「リアはさ。零人についてどこまで知っているの?」」


この質問に、リアは答えかねた。


「実はね、私も零人と会ったのはついさっきなの」

「「え?」」


2人の姉妹が驚きの声を上げる。かなり親しくしているように見えたので、てっきり長い付き合いなのだと思っていたのだ。


「正確には今日の午前中かな?」

「そ、そうだったんですか・・・」

「それでこんなに仲良くなったのね」

「零人は結構話しやすいから、そのせいかもね」


実際、零人はかなりマイペースな性格だ。人を疑うようなことはあまりしないという印象がある。その印象を受け、リアは零人を信用しているところがある。


「2人は零人をどう思ったの?」


リアは2人に尋ねる。


「私は、なんか飄々とした感じだなって思った。少なくとも悪い人じゃないと思ったわ」

「私は、なんだか優しそうで・・・面白そうな人だと思いました・・・」


2人はそれぞれの印象を述べる。どちらも悪い印象は持っていないようだ。


「私たちを助けてくれた時・・・少しかっこよくも見えました」

「「・・・同意」


それぞれの助けられた時のことを思い出し、若干頰を赤らめた。



そして日が暮れ、本格的な夜にはなった頃。俺の家の1階が完成に近づいていた。


「ついに、理想のマイホームが・・・」


俺がのんびり暮らすための設備を兼ね揃えたマイホーム。それの1階ができあがろうとしていた。


1階の説明をしておこう。まず、通常のサイズの玄関を作った。サイドにある靴入れに靴を収納する。ちゃんとスリッパは作ってあるので、それを履いて室内を過ごす。

玄関から続く廊下を抜けたらリビングだ。ここは結構広く、ソファーやテーブル、などが置かれている。

これらの家具は全て王都で事前に買ってあったものだ。なので材質も優れている。


それから風呂。この大樹はかなりの水を吸い上げているようなので、それを少し拝借させてもらい作った。シャワーと浴槽をつけ、お湯も出る。


キッチンは幹から伸びている太い枝に作った。これなら換気もできる上に、広々とした空間で作ることができる。壁も屋根もなかったので、後から屋根はつけたが。


とまあ、こんな感じである。まだまだ2階3階と作っていくので完成ではないが、これだけでも充分くつろぐことができる最適の空間になった。


「今日はこの辺にして、夕飯作るか」


俺は今日の作業を中断し、夕食にすることにした。続きはまた明日だ。ゆっくりと休んで疲れを癒すとしよう。






あ、狼達忘れてた!

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