Ep3 英雄、エルフを助ける
小屋の中には女の子がいました。
「・・・え?」
「え?」
俺も女の子も素っ頓狂な声を上げる。しばらく見つめあったまま沈黙する。
「「・・・」」
やがてその沈黙に耐えられなくなった俺は、女の子に声をかけた。
「・・・大丈夫か?」
「え?」
俺は怪我をしている足に目をやりながら女の子に問いかけた。まだ血が滴っているあたり、つい先ほど怪我をしたのだろう。
「え、あの、心配してくれてるの?」
「?そりゃ怪我してるんだから心配もするだろう」
何を当たり前のことを言っているのだろうか?女の子が怪我をしていて心配しない輩など特殊な薔薇色に染まった奴らくらいだろう。(つまりホモ)
「わ、私を捕まえたりしない?」
「なんで捕まえるんだ?それしたら俺犯罪者だろ。あ、もう犯罪者扱いか」
追い出されたので表向きは犯罪者扱いである。ま、国を出れたので関係ないが。
「そ、そうなんだ。よかった・・・」
「とりあえず怪我を治すか。さっきから気になって仕方ないし」
「え?」
滴る血は気になるし、痛そうにしている顔はもっと気になる。手っ取り早く治そうと、俺は女の子に近づいた。
「いまから治すから、ちょっと足に手を当てるぞ」
「・・・治るの?」
「治る。俺の力なめんなよ」
これくらいの怪我ならすぐに治る。俺の力はこういうことに非常に応用が利くのだ。
ゆっくり手を足に当て、力を使って行く。しばらくこのまま当てておけば治るだろう。
「ちょっとこのままキープ」
「キープ?」
「大人しくしとけってことだ」
このままの状態で、俺は女の子に質問することにした。
「なんでこんな怪我をしてるんだ?」
「さっき、男の人たちに襲われた。捕まりそうになって逃げてたら、ナイフ見たなものを投げられて切ったの」
「まじかよ。訳ありすぎだな」
「で、そのまま逃げて来たらここがあったの。だからここで隠れてた」
「そういうことか。で?そいつらはもう行ったのか?」
「わからない。まだ私を探しているかも」
めんどくさいことを聞いた。まだこの付近にいるかもしれないってことか?それならこの小屋が見つかる可能性も出てくる。ってことは?
”ドンドン!!”
「っ!?」
「落ち着け。大丈夫だから」
突然の乱暴なノックに女の子は身体を硬ばらせる。とりあえず落ち着かせながら、ドアの向こう側の反応を待つ。
「おい!出てこいエルフのガキンチョ!!いるのはわかってるんだぞ!!」
どうやらこの子を捕まえに来たようだ。小屋を見つけたので、そこにいると思って来たのだろう。
だが、俺はそれよりも気になることを聞いた。
「お前エルフなの?」
「・・・うん」
まさかエルフだったとは。まあ、確かに容姿はとても美しい。身長は俺より低いくらいだろうが、胸はそれなりに大きい。見た目は14〜15くらいだが、実年齢はわからないな。
「エルフは長命だから、成長するのが遅いの。人間で言ったら、私は14くらい」
「納得」
会話をしているうちにノックの威力が強くなって来た。女の子は俺にしがみついている。しかたない。俺が話をつけてやるか。
「うるさいぞ!!こちとら寝不足なんだぞ!!」
でかい声で扉に向かって怒鳴る。すると、外の男たちが1拍置いてから声がかかった。
「おい。そこにエルフのガキがいるのはわかってるんだ。大人しく渡せば、痛い目を見ずにしてやる」
「でかい口叩くなブスども。ひとんちドンドンうるさくしやがって」
思いっきり喧嘩を売ってやる。大体こういうこと言えばキレるだろう。あーいった輩は瞬間沸騰鍋も見たいなものだからな。
「なッ!!てめえ聞いてりゃ好き勝手言いやがって!!出てこい!!」
「好き勝手言ってるのはそっちだろう・・・」
俺は呆れながらドアに近づく。話をつけて来ようとするが、エルフの少女は俺の服の袖を掴んだ。
「まさか行くつもり?」
「うん。うっとおしいから潰してくる。あ、怪我はほとんど治ってるから安心しろよ」
「え・・・あ、本当だ」
先程からのやりとりで、傷は癒えた。ということで次は害虫駆除なのだが、少女は心配そうに俺をみる。
「・・・大丈夫なんだよね?」
「安心しろよ。俺は別に弱くないから」
そこまで言ってようやく裾を話してくれた。俺はドアに近づき、扉を開けた。
「やっと出て来たか!!お、見ろ!!エルフのガキがいやがるぜー!!やっぱり嘘をついて・・・」
「うるさい」
俺はひどく不愉快になりながら、目の前の男たちを地面に這いつくばらせる。
「ぐ、グフゥ・・・」
「さっきからごちゃごちゃうるっせーな。なんだ?人に迷惑かけんなって言われなかったの?バカなの?」
ひとしきり煽ったところで交渉開始。まあ、そっちに有利な条件なんて一切与えないけど。
「じゃあ交渉な。このまま持ち物全部置いて逃げ帰るなら、見逃してやる」
「っは!!ふざけん・・・」
「じゃあ殺すぞ」
この言葉を聞いた途端、男たちの顔が青ざめた。それはそうだろう。今現在、地面に這いつくばされ、身動き一つできなくされているのだ。
「どうする?」
「・・・わかった。俺たちは退散する。だから命だけは・・・」
「わかったよ。だから持ち物全部置いてけや」
めっちゃいやらしい笑みを浮かべながら俺は笑う。その笑顔に恐怖心を駆り立てられたのか、さっさと持ち物を地面に置いていく。っと、言い忘れてた。
「おい。服も置いてけや」
「「え?」」
「あ?嫌なの?」
「「あ、すんません。言う通りにします」
と言うことで、全裸になった男たちに向かって言い放つ。
「今後一切俺たちに迷惑かけんな。あと人さらい的なものもやめろ。わかったか」
「「ウィ、ウィッス」」
男たちは泣く泣く逃げ帰って行った。全裸の男たちが森の中を全力疾走とかシュールすぎて笑えてくる。はははははは。
「もういいぞ。追っ払ったし」
「・・・・」
少女に声をかけるが返事はなく、彼女は俺のことをポォっとした目で見つめていた。どした?
「大丈夫か?」
「あ、う、うん」
顔を赤くし、目を逸らす。なんだ?なんかあったのか?
まあ、いいや。とりあえず今後の方針を決める。
「そういや名前聞いてなかったわ。なんて言うの?」
名前を聞かないと話しにくい。俺は少女に名前を聞く。
「あ、まだ言ってなかったか。私はリア。あなたは?」
リアというのか。呼びやすくていい名前だ。
「俺は如月零人。零人って呼んでくれ」
「零人ね。わかったわ」
お互いの名前を知ったところで、俺は今後のプランを提案する。
「俺はこれからのんびり暮らせる村を探す。リアはどうする?」
俺は一応目的があるのだが、彼女は目的ががあるかも、当てがあるかもわからない。
「・・・私は、エルフの村から出て来たの。だから、もう帰る場所は・・・」
やっぱりか。ま、幸い今の俺にはとんでもない金額の金と、沢山の食料もある。ならやることは決まっている。
「じゃあ、俺と一緒に来るか?」
「え?」
「リアひとりじゃ危ないだろ。さっきみたいに襲われるかもしれないし。俺がいれば安心だろう」
「それはそうだけど・・・いいの?」
「お前1人養うくらい余裕だ」
丁度一緒にスローライフを送る人を探していたし、村を見つけるまで1人では退屈だろう。
「・・・じゃ、じゃあ、よろしく・・」
「おう!!よろしく!!」
こうして新しい仲間ができました。
エルフ美少女キタコレ!!
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