Ep2 小屋へ
「とりあえず、森を目指そう」
俺は国から出て南にある森を目指すことにした。あそこは魔物がたくさんいるのだが、逆に言えば、食料などには一切困らない。それに森の近くにある道路は商人の通りも多い。途中で買い物もできるだろう。
「隠居するには色々と必要なものがいるからな。王様からたくさんもらったけど、やっぱり心もとないし」
先日。王様からお詫びとして沢山のお金と生活品をもらったのだが、生活品だけでは足りない。いや、それも大量にあるのだが、なんというか・・・楽しみのようなものが欲しいのだ。
「じゃ、走るか」
俺は足を加速・・させ、一気に森の道路に向かって走り出した。
しばらく走っていると、予想通り商人の馬車が見えた。王都に行くようだが、丁度いい。護衛も数人付いているようだ。あの商人から色々と買ってしまおう。
「そこの商人さん。少しいいですか?」
「ん?なんだ子供か。どうしたんだ?何か用か?」
意外と気さくな人で安心した。俺は交渉を進めることに。
「実は私は旅のものでして。あなたの馬車に乗っている商品を見せてもらえないかと。ああ、お金はありますのでご安心ください」
「商品をか?まあ、いいが。金があるならみんな客だ」
こういう考え方をする商人は本当に助かる。俺はいまたくさんお金があるので、存分に買うことができるのだ。
馬車の中には沢山の商品が。剣に斧、薬に食料や酒など、とにかくたくさんある。それも馬車4台分だ。商人の護衛たちは少し離れたところから俺たちの交渉現場を見ている。大方、俺がこの商人を襲ったりしないか見張っているのだろう。
「じゃあ、後ろから2台目と3台目の馬車のものを全部売ってください」
「は!?全部をか?言っとくが、全部となると白金貨3枚はいるぞ?」
白金貨とは、この世界の通貨の中で1番高い貨幣のことだ。貨幣1枚1000万と言ったとこだろう。俺は構わないと告げ、商人の手に白金貨を5枚握らせた。
「俺はこの値段で買う。交渉は成立か?」
「あ、ああ。もんだいない。なんなら馬ごとあげてもいいくらいだ」
「それはやめておく。俺は歩く方が好きなんだ」
商人との交渉を成功させ、俺は受け取った商品を買うと収納の袋の中へとしまい、森へと急いだ。
◇
さて、今までの話の内容から察しただろう。俺はこの世界に転移してきた異世界人だ。
俺が転移してきた経緯を簡単に説明する。
俺はある日、神社で願掛けをしていたのだが、その時ふざけて異世界で活躍したいと願ったら目の前が真っ暗に。目がさめると知らない場所におり、そこで女神様にあったのだ!!
当然困惑する俺。だが、その女神様から異世界に行ってもらうとめっちゃ軽いノリで言われこの世界に転移して来たというわけだ。
その時女神様からもらった力で、俺はこの世界を生きて来たわけだ。
『じゃあ異世界行こうか』
『いやちょっと待とうか』
あの時のやりとりほど衝撃的なものは無かったなと、今でも思う。
一見チートなやつかと思うが、そうでもない。俺はこの世界の人間なら使える、魔法というものを一切使うことができないのだ。これはおそらく女神様のイタズラ ── だと俺は思っている。
確かに女神様からもらった力はかなりチートだと思うけど。
まあ、俺のことはここまでにしておこう。
◇
商人から買ったものを俺は確認する。買ったものの大半は食料と酒だ。これからのんびり暮らして行くのだから、これは必需品だと思って買ったのだ。
この世界では飲酒は禁止されていない。なので、俺でも飲めるのである。ちなみに俺の年齢は15だ。
「っと、そろそろ森に入るか」
以前森の中へと来たことがあるので、どの辺りに小屋があるのかなどは理解している。この森の中には沢山の空き小屋があり、冒険者たちがよく利用している。
「空き小屋を転々としながら歩くか・・・」
俺はひとまずの方針を決め、小屋を探すことにした。
◇
探すことに1時間。小屋は普通にあった。少し古びているが、1人で過ごすには全く問題ない大きさだ。俺はウキウキ気分で扉のドアノブに手をかけた。
「もうここを別荘に改造するのもアリか?なんてな・・・」
俺は中に入り、そこにいたものに目を丸くした。
「・・・女の子?」
小屋の中には、美しい緑髪の少女が怪我をして座っていたのである。
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