勇者も魔王も、RTAに浸るだけさ

 お祭りに行ったり魔王と仲良くなったりするパートもう始まってる!

 前回はクエを終えたところでしたが、今回はサーニャちゃんとお祭りに行きます。

 このゲームはでかいイベントに必ず行けるように、クエが調整されます。お祭り前日までに解決する依頼しか出ません。


「ではお兄様、今日はめいっぱい楽しみましょうね」


 おっ、そうだな。いっぱい食べるゾー。サーニャの分も買ってやるからな。


「ありがとうございます」

「じゃあ晩飯はいらねえな?」


 ウッス。なんなら晩飯も買って帰ってきまっす。最新の魔導院の研究によれば、屋台飯をテイクアウトすれば、食器洗わずに済むからな。


「よし、オレも夜まで帰らねえからな。楽しんでこい」


 ではお祭りにイクゾー! デッデッデデデデ、カーン! デデデデ。

 今回のお祭りは大調理祭です。料理系の科が屋台とかお店を出しまくるので、ガンガン回りましょう。食べればステータスがアップするので、二重にうまあじイベントです。


「ではスイーツ系から参りましょう」


 このイベントの甘いものは、魔力とMPが上がります。力・速さ・魔力・魅力あたりはしっかり上げましょう。パワーだけだと神話生物や概念的存在にダメージが通らないので注意です。伝説の武具とかあれば別ですが。


「はいお兄様。こちらのストロベリーも美味しいですよ」


 あぁ~うめえな~。一緒にドーナツやアイスを食べています。仲いいね君ら。兄妹の関係が良好なのは嬉しいですね。余計ないざこざイベントが起きません。


「覚えていますかお兄様。小さい頃お兄様に手を引かれ、故郷のお祭りを回りましたね。今ほどお小遣いも無くて、二人で半分こしていました」


 そんな記憶ないです。過去の思い出はプレイヤーには作れねえつってんじゃねえかよ。適当にそれっぽく頷いておけばいいんだ上等だろ。


「お兄様は昔より逞しく、お強くなりました。それでも家族の絆は変わりません。むしろより一層お兄様が輝く為に、これからもずっと私がお側におります」


 ありがとナス! サーニャちゃんが優しいので、どんどん甘えていきましょう。


「栄養管理も生活管理もお任せください。次は何がいいですか?」


 次は肉を食うぞ。もちろんパワーが上がります。火力は最優先で上げましょう。


「はい。ではお野菜も必要ですし、ケバブサンドからいきましょう」


 ホルガンくんの栄養管理もしてくれていますね。ええ子やなほんま。

 おぉ~ええやん。じわじわステ上がってるやん。焼き鳥とか、食べたくない?


「あっちに屋台がありますわ。行きましょう」


 どうやらマップが頭に入っているようで、何もしなくても連れて行ってくれます。親切すぎる。お助けキャラか何か? 見た感じ兄妹仲がいいようですが、じゃあなぜホルガンくんは最初苦手っぽい反応をしていたのでしょう。今もごく普通に接していますね。


「大丈夫ですよ。お兄様の体調は私が管理します。安心して好きなだけ食べてください。アフターケアはもう準備してありますから」


 アリシャス。じゃけん、二人で食べましょうね。ホルガンくんの焼き鳥を半分わけてあげます。会話から推測するに、これで好感度が上がるはずです。


「ふふっ、ありがとうございます。なんだか昔に戻ったみたいです」


 笑顔がかわいいですね。癒やされておきましょう。クッソ汚い心を浄化するんだよ、おうあくしろよ。


「さあ、まだまだ食べたいものはありませんか? はぐれないように参りましょう」


 自然に手とか繋いでますよこいつ。やっぱ好きなんすねえ。

 ここまで順調に進んでいますが、私は決して絶対に決して油断しない。RTAで一番つらいのは、順調に行っている時に油断してガバってからのリセットだと実感したぜ(n敗)


「お兄様。お兄様の今の目標はなんですか?」


 もちろん一年生の中で最強になることですねえ。


「その夢は大変立派です。ですが、そのためにどのような修行をなさるおつもりですか?」


 魔法の訓練です。強化魔法で強くなりたいですねえ。ジムに週2回くらい通って胸囲110弱になるくらい強くなれます。


「しばらくは魔法のコントロールですね。上達が早い方だと思いますから、きっとうまくいきますよ」


 現時点で習得できそうで一番欲しいのは、全能力を一時的に3倍にぶち上げる技です。たった3倍? そんなんじゃ甘いよ? と思うかも知れませんが、これは基礎能力が10でも1億でも絶対に3倍されます。自分が強くなればなるほど効果が上がる技なのです。


「もし辛くなったら言ってくださいね。私がいないクエストで、とても危険な目にあったと聞きました。私のいないところで、お兄様がいなくなるのは怖いです」


 あれは神の血イベントとクエストが混ざった結果ですから、ぶっちゃけほぼ死なない勝ち確イベなんですよね。もっと起きて欲しい、起きて欲しくない? 起きましょうよ。起きなきゃこの先ザコにも勝てねえぞ。


「ですから、もし辛くなりましたら、二年で最強を目指してもいいと思います。別の夢を追っても、私はしっかり支えます。お兄様が死するその時まで、一緒にがんばりましょう」


 ウッス。これから原作シナリオにかかわっていきますが、基本的になろう系チート主人公というのは作中トップか最上位層です。どれだけ強い敵が現れても、主人公がチートでぱぱぱっと処理できるため、じゃあ敵側をどんだけ強くしてもいいじゃんという思想が生まれます。このため敵の強さや能力が青天井で上がり続けるのです。そこに一般通過主人公なんて入れたら勝負になりません。なので、神の血が必要だったんですね。


「お兄様、聞こえていますか?」


 ウッス。サーニャちゃんの声を聞き逃すはずがないです。


「私もです。一緒ですね」


 さてお祭りで行動できる間に魔王とのフラグを立てましょう。魔界に深く関わる事ができるようになるので、RTAでは有名なルートです。一学期でそんなイベント起きるとか原作のスケジュール地獄すぎない?


「お兄様、行きたい場所がありましたら、遠慮せずおっしゃってくださいね」


 では移動しつつ知り合える魔王を探します。原作で悪の魔王側にいるやつはNG。魔王なんだから全員悪だろとかそういうのはスルーしましょう。まずは善側で比較的知り合いになりやすい人と、RTA的にうまあじな人で考えます。

 知識が膨大でヒントを多くくれるアスタロト。魔王兼ファッションデザイナーのパイモン。アイドル魔王のグレモリー。このあたりを狙います。

 女主人公なら魔王マーラのハーレム入りして、同じハーレムメンバーの酒呑童子と毘沙門天に鍛えてもらうというルートもありですね。


「どなたをお探しですか?」


 おっと、あのゆるふわ金髪ロングで黒ゴスロリの子はパイモンですね。そのプリケツをラケットで叩いてあげたいわ。このお祭りでは高確率で売り子をやるために出現しますので、こっそり先回りしましょう。話しかけてはいけません。営業スマイルで処理されるので、後々知り合えた場合の布石を打ちましょう。


「お兄様? どうされました?」


 ちょっとあっちの壁にもたれかかってお話したい。したくならない?


「お兄様の目的に必要なのであれば、ずっとお話いたします」


 さて同意が得られたので、更衣室から少し離れた位置へ移動して、こそこそとお話していましょう。やがてパイモンが男子更衣室に入っていったのを確認したら、こちらを認識されないように離れます。あーチョー飯食いてー。


「では参りましょう。おいしいお茶のお店を調べておきました」


 こうして情報を集めるのも大切です。情報を制するものはRTAを制するのだ。


「イケメンのおいしい紅茶とお菓子はいかがですかー!」


 おっと運がいいですね。一定確率で出会える魔王セーレの移動屋台です。是非行きましょう。普通の店よりステの上がり幅が大きく、味もいいため連れて行った相手の好感度や体調が上がるという素敵仕様です。

 アイスティーとケーキ2セットくーださい。


「ありがとうございます! お運びしますので、お席でお待ち下さい!」


 セーレはざっくり言えばイケメン貴族です。美しい紫色のロングヘアーと赤い瞳。で高身長の美形です。家系には役者などの芸能面が多いですね。純粋な魔族でイケメンであることに全力出しています。イケメンなのですが、世襲制で最近名前を継いだため、四天王も揃っておらず未熟です。


「お待たせいたしました! イケメンケーキセットでございます!」


 はえーすっごい早い。身のこなしが軽い。今何かスポーツとかやってるんでしかね? あのガタイは。細マッチョ系のイケメン君ですな。


「どうされました、優しさ溢れるイケメンさん。ボクがイケメン過ぎて見とれていましたかな?」


 どうやらホルガンくんのイケメン診断は優しい人らしいです。普通だな。

 いやあちょっと、味わってて。スッキリした味わいで、それでいてベタつかない。非常に美味しい。


「ありがとうございます。イケメンの手作りでございます」


 こいつは料理もできるし育てればかなり強いのですが、RTAと大器晩成が噛み合わないんですよねえ。とりあえずお客さんが少なくなったのを見計らって、紅茶のおかわり貰う時に雑談でもしましょう。


「とても美味しいです。素晴らしいですわ」

「気に入って頂けて何よりです。やはりイケメンは全てがハイクオリティでなくてはなりませんから、最上級のケーキをお出ししております」


 やっぱイケメンの料理は……最高やな! 今何か、料理関係の科とかやってるの?


「魔王科と芸能科と料理科の魔王セーレと申します」


 ホルガン・モザイクロームです。オッスお願いしまーす。


「サーニャ・モザイクロームです。よろしくお願いいたします」


 ここで自己紹介まで済ませておくと、セーレが友人として記録されます。この状態になると屋台の出現率が上がるため、見つけたらステ上げのチャンスです。仲間にするかどうかは保留ですが、知り合いになっておくとお得。ある程度出現場所は決まっているので、どんどん活用しましょう。


「なるほど、新設ギルドの……同じ高等部一年として、今後ともよろしくお願いします。それでは失礼」


 非常に爽やかなイケメンスマイルで去っていきました。いきなり四天王にしてくれとかいう選択肢は出ません。意味わからんからね。そんな不審者にOK出すわけないってはっきりわかんだね。


「あら? あの方々は確か……」

「ん? 確かホルガンだったよな?」


 アジュ御一行が来店しました。これもセーレの店の効果です。知り合いがそこそこの確率で来店します。四人一緒ですしリリアの機嫌がいい。そして指輪つき。原作イベントが終わったみたいです。

 オッスオッス。こっちの席にいいよ、来いよ!


「いいのか? そっちは二人で楽しんでいたようだが」

「お兄様さえよろしければ」


 よしじゃあ六人で円になって、喋りあわねえか? 単純に円形のテーブルだし。


「それじゃあお邪魔します。わたしを助けるのに協力してくれたって聞いたよ。二人ともありがとう」

「そうだホルガン、何か願いはないか? この前のシルフィの件での礼がしたい」


 おっ、相手側から言い出してくれるのはありがたいですねえ。


「貸し借りはなるべく早く等価で返すが俺の心情だ。できることならやるぞ」


 アジュはこの辺律儀です。他人を信用しないため、いつまでも貸しを作るのが危険だと思っているからなんですけどね。恩返ししてくれるのは嬉しい……嬉しい……じゃあ魔王と知り合いになりたいんですけど、いい人いないっすか? 魔界の技術とか見てえけどな俺もなー。


「魔王って……いや俺勇者科だし、そもそも知り合えるものなのか?」

「こっちの魔王は敵ではないのじゃ。簡単に言えば魔界の領主じゃよ。複数おるのじゃ。ほとんどは悪人ではないから注意じゃ」

「マジかよ」


 原作同様リリアが解説してくれていますね。動画の右枠解説もして、どうぞ。埋めるのが大変なんだよなあ。他の投稿者兄貴はどうやって右枠スッカスカを回避してるんですかね。そのセンス分けて。


「わかった。誰か紹介できそうなら探す。と言っても俺は人脈とかゼロだから期待しないでおいてくれ。そっちのギルドに知らせればいいか?」


 ありがとナス! 別に授業一緒なんだから、その後でもいいっすよ。たまにはお話しましょうぞ。ただでさえ勇者科は男が少ないからね。女子の中に一人だけになるのやだ、小生やだ。


「なるほど、ならそうするか」

「うむ、知り合いができるのはいいことじゃ」

「ちゃんとお友達は作るのよ」

「よかったねアジュ」


 ヒロイン的にもアジュの情操教育にいいことは推奨してくれます。こうして好感度を上げていきましょう。ちなみにアジュとリリアは同時に攻略するしかありません。片方だけ上げようとすると何度もリミッターがかけられており、主人公が男でも女でも同時攻略必須です。しかも親友エンドまでしかないという徹底ぶり。まあ事情が事情だからしょうがないね。


「しかし報告がいつになるかわからんのは厳しいな」


 大丈夫だって安心しろよー。利子とか取らないからへーきへーき。暇なら魔法の練習とかすればいいじゃんアゼルバイジャン。覚えたら練習付き合ってくれよなー。


「魔法か……使えたら面白そうだな」


 そうだよ(便乗)せっかく魔法詳しいやつがいるんだから、教わるべき。当たり前だよなあ? 魔法をドバーっと出すと、気持ちがいい!


「うむ、わしに任せるのじゃ」

「とても素晴らしい提案ですわ、お兄様」


 こうして原作より少し早く魔法に興味をもたせましょう。アジュの天性の直感は閃きレベル10よりも優秀な固有スキルなので、魔法の習得率をあげて、一緒に訓練できるようにするのです。そうすればホルガンくんの魔法レパートリーも増える増える……太いぜ。


「わかった。その時は頼む」


 かしこまり! あと何をするにしてもギルドレベルは上げておくといいっすよ。Dくらいを目標にして、どうぞ。


「そうじゃよ」(便乗)

「おう考えてやるよ。クエストチラチラ見ておくぞ」

「なんかみんな口調おかしくない?」

「出身地の違いかしら?」


 そんなこんなでアジュを誘導しつつ、お祭りイベントを消化したら今回はここまでです。ではまた次回。

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