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「アストラル…大丈夫?」

「ああ…」


行商人の馬車の中、隣に座るアキタカに心配そうに見つめられながら身体を起こすアストラル。


「ゴーレムも寝ることってあるんだね、夢も見たりするの?」

「…ああ、時々悪夢を見る」

「本当!?」

「内容は思い出せないが…」

「なんだーアストラルの悪夢って色々凄そうなのに」

「ほう?どんな?」

「アストラル以外のアストラルがいっぱい出てきて目から溶岩を勢い良く出すんだ!」

「それは…正真正銘の悪夢だな…」


そんな他愛の無い話をしていると御者をやっている商人がトントンと2人が乗った荷車を叩く。


「お二方、そろそろ町に着きますよ」


「ありがとう、門の前で降りさせて頂こう、アキタカのプルーヴカードを更新しないといけない」


そう言いながらフードつきのコートを着るアストラル。

ここは外、村での生活では当たり前だった裸エプロン…ゴーレム丸出しだと知識のある者に驚かれたり問い詰められたり色々と面倒だからだ。

それを見てアキタカも準備を始めた。


そうこうしていると町が見えてきた。


交易の町『ピュテス』

王都から一番近い町で、食料や武器等の様々な物品が各地から集まり流通している。

王都から旅立った初心者冒険者はここで一度補充をし、また旅立つ。

初心者冒険者や行商人などの客層を狙った商人がここに集まり、行商人もまたその商人からなる掘り出し物目当てでこの町に寄る。

その為ピュテスは交易の町…もしくは商人の町とも呼ばれている。



馬車から降りて礼を言うと二人は石造りの門の横にある窓口へ向かい係員の女性に声をかけた。

アストラルがアキタカの身分証明となる『プルーヴカード』を差し出す。


「この子のプルーヴカードの更新を頼みたいのだが」


「はい、町へ入られるのであれば保護者様のカードの提示もお願いします」


アストラルが自分のカードも差し出すと係員の女性が受け取り、四角い石の用なモノにカードを半分ほど差し込んだ。

四角い石にはカードの厚みと幅が丁度入る穴が開いている。

アキタカの分も差し込んで確認するとアストラルに返した。

アストラルのカードの種族項目には『機械族(ゴーレム)』と表記されている為、係員の女性は確認した時に少し驚いた表情をしたが騒いだりはせずそれだけだ、仕事のできる人間だな…とアストラルは内心感心する。


「確認致しました、アストラル様とアキタカ様ですね。アキタカ様は10歳になりましたので魔力契約が必要となります」


「まて、規約では15歳…成人してからの筈だ」


「…プルーヴカードの偽物が流通した事件は御存じでしょうか…せめてもの悪用防止策として去年規約が改訂されまして…お手数を御掛けしてしまい申し訳ありませんが手続きをして頂かないとカードの使用は無効となってしまいます…」


アキタカの事情を知らない女性係員はアストラルが急いでいると思っているのか手続きする事を少し強めに奨める。


隣のアキタカが少し不安そうな顔をしながらアストラルのコートの裾を掴む。


「アストラル、取り敢えずやってみようよ」

「アキタカ…わかった、いいだろう」


「ありがとうございます、魔力契約手続きはあちらの窓口にて受け付けておりますので準備が出来ましたら窓口に居る係員までお声かけ下さい」


そう説明を受けると2人は言われた窓口へ向かった。


窓口には暇そうに新聞を読んでる男性の係員が居て、机には人の頭程の大きさの水晶が置いてある。

係員は近付くアストラル達に気付き新聞を片付けた。


「いらっしゃいませー」


「魔力契約手続きをしたいのだが…」


「ならプルーヴカードをこちらへ…お預かり致します、そちらの水晶に手を触れて魔力を流して頂くだけでカードとご自身の繋がりが完成し契約完了となります、どうぞ」


アキタカは身長が足りず手が届かない為アストラルに持ち上げてもらうと、男性係員の説明の通りに水晶に触れる。

そしてやり方が分からないなりに全力で魔力を流そうとする。


「ふんんんんん!!!ぐぬぬぬぬぐぎぎっ!!」


「あのー大丈夫ですか?力をそんなに入れなくても魔力を流すだけですよ…?」


顔を真っ赤にしながらを絞りだそうとするアキタカの様子に男性係員が難しい顔をする。


「もう少し!もう少しな気がする!んんんん!!」


「…魔力を流す程度なら5歳児でもできますよ、遊んでるんですか?」


なかなか契約出来ないアキタカの様子に男性係員が苛立ちを表し始める。


「…遊んでなどない、この子は真面目にやっている」


アストラルが男性係員の物言いに対し、ほんの少し怒った様子で声質を低くし反論する。

旅の前にアストラルが心配していた魔力に関する弊害の1つがこの契約だ。


「他に方法はないのか?昔は血や髪で代用出来ていた筈だが」


「血や髪?そんな化石みたいな方法有るわけ無いじゃないですか、こっちも忙しいんですから早くしてくださいよ」


ついに男性係員はイラついた様子で先ほど読んでいた新聞を取り出し読み始めた。

とても忙しそうには見えない。


「ゼー…ゼー…ハァー…ハァー…ちょっと休憩…」


「…アキタカ、別の町へ行こう」


肩で息をするアキタカを見てアストラルが諦めようとしていたその時。


「よう、お2人さん」


後ろから声をかけられた。

それは聞き覚えのある声で…


「久しぶりだな、何か困り事か?」


そこには村の誘拐事件で関わったことのある冒険者の男が立っていた。

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