私の双子の妹は、化物だ。

文字を喰らい、文字を吐く。そしてまた喰い、吐く。

私の双子の妹は、化物だ。


今も。他人の組み合わせた文字を喰らって、胃の中で混ぜ合わせて自分の物にしてから吐いている。

妹は何がしたいのか。

私の居ない時にしてくれれば良いのに、わざわざ私が居る時にするのだから。タチが悪い。

さらにその吐瀉物さえ片付けず他人に見せるように置いてある。

私はそれが嫌だというのにそれを見たがる人まで。理解ができない。


私は知っている。それが誰かの作品たちなのだということを。

それを自分の物のように吐いては片付けず見つめている。

時にはその中に手を突っ込んでいる。何がしたいんだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この人の文字はこんな味がするのか。

こっちの人の文字の組み合わせ方は絶妙だ。

この子は。あの人は。味見だけでは物足りない。

全部食べよう。喰べる。喰う。喰らう。


しまった、食べすぎた。胃の中でぐるぐるしている。

だけど、これをちゃんと胃の中で分からないぐらい混ぜれば私の物なんじゃないか?


私の物なら元が素敵なあの人達の文字なのだから。

きっときっとそれは素敵なものになるんじゃないか。

素敵な人たちと並べられるなら、吐いてしまっても惜しくはない。

吐き出す。どうでしょうか。褒められる? 好きだよと言ってもらえる? 

憧れのあの人達に好かれる。ならば、もっと。もっと好かれたい。

お姉ちゃんが、「こんなのは私じゃない」なんて言っているのだって聞こえない。

完全に乖離されても構わない。

あ、この文字は綺麗じゃない。

手を加える。

自分の手が汚れたって、そこにあるのが好かれるものならそれでいい。


そうだ、もっと、もっと喰べよう。

色んな物を、好き嫌いなく。喰べて、吐く。

これでもっとあの人たちに近づける。近づいたらもっと色んな味がわかるようになるだろうか。


憧れだけを抱いて、喰べて、吐いてを繰り返す。

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