学生の一ページ。

いつも僕たちは噛み合わなかった。

「君はそうやっていつもいつも臆病だ!」

「貴方だって現実をよく分かっていないじゃない!」

口論や互いの考えをぶつける事しか出来なかった。

「そう言う貴方はそれを実現出来るというの!?」

「君は実現しようともしない、理想を追い求めない君は嫌いだ!」

口に出した瞬間、何かが壊れたことに気付いた。

「……」

「ごめん、こんな事言うつもりじゃ」

「貴方は何も。いえ、何でもないわ」

そんな言葉で、また理性が飛ぶ。

「そうやって! いつも君ははっきり言ってくれないじゃないか!」

「いいのよ、今日はもう帰るわ。ごめんなさい」

「……待ってよ、謝るのは僕の方だ」

言葉は届かず、教室の引き戸は閉められた。

どうしようもない。彼女にあんな事を言ってしまった。もう、彼女と笑って話す事も出来ないだろう。自分が情けなくなった。好きな人を笑わせる事もできないどころか、傷付けてしまった。最悪だ。

自分の頬を一発殴って涙を止める。今日はもうどうにも出来ないだろう。明日謝らなければ。

支度をして教室を出る。君の顔を思い出す。振り払って、自転車に乗る。無我夢中で家まで、

「ねぇ」

「えっ!?」

ブレーキ。声をかけてきた人の元に戻る。

「どうして、帰ったんじゃ」

言葉は続かない。

泣いている。君の泣き顔を見てしまって言葉が詰まった。

「貴方は本当に私の事、嫌い?」

「そんな事! ごめん、本当は」

「本当は……?」

言ってしまっていいのか。また君を傷付けてしまうんじゃないか。

「私はね、貴方の事……好きよ」

「えっ」

相思相愛? 僕と、君が?

「貴方は?」

「だって、君は、僕に酷いことを言われて」

「だから泣いているのよ。貴方の事が好きなのに貴方から嫌いと言われたら誰だって泣いてしまうわ」

「それは、ごめん」

「それで? 貴方は?」

「……好きです」

「ふふ。泣かせた罪は重いわよ」

それは、星の綺麗な夜のこと。

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