第一章 初めまして異世界

第一話 ここはどこ!?

「出発進行~!!」


 汽車の汽笛を合図に列車はゆっくりと動き出す。この世界で初めて走り出す鉄道。シャープ王国鉄道。この世界に鉄道は存在していないし出ることもなかった交通手段だろう。しかし、この僕たちという特異点がこの世界の未来を変えたのだろう。少しでもこの世界の役に立てただろうか。そう思いながら歓声を上げている人々を見る。ここまで大変な道のりだったな…


 とある日の事。ちょうどその日は天気も良く、カラっと晴れていて過ごしやすい日だった。出勤確認を取り、制服に着替え準備をする。常務区間を確認し、相方の車掌に挨拶をする。


「あー! 今日は佐藤さんと勤務なんですね。佐藤さんは安全な運転で安心して案内できますよ!」

「そこまで言われるほどでもないよ。僕はただ事故を起こさないようにしているだけだよ」 


 僕の名前は佐藤ひろき、25歳。鉄道会社で運転士をしている。電車に機関車と若いながらに基本何でも業務はこなせるように勉強をしてある。

 そして話している相手は、今野すずか。最近は増えてきてはいるがそれでも珍しい女性の車掌だ。


「じゃあ、今日も安全運転お願いしますね! 佐藤さん!」

「おう! 任せておけって!」


 僕らはこれから天ケ嶋駅やまがしまえきまでお客さんを乗せ運転をし、車庫まで電車を回送するという業務となっている。僕はこの運用が一番得意であったがいつも気は抜かずしっかりと確認をしてから行く。


「よし。確認も済んだし今野さんとも打ち合わせは終わったから列車に行こうかな」


 僕は駅に止まっている電車へと向かった。


「今日も事故を起こさず走っておくれよー。故障はなさそうだな!」


 佐藤は確認を終え、出発時間になったので電車を動かした。


          「出発進行!」


 僕らは天ケ嶋駅までいつも通りの安全運行を終え、折り返しまでの時間で一息をついていた。


「佐藤-! お疲れさーん」


 車両の整備や線路の点検などをしている同期の技術職の山田たいちが声をかけてきた。

「ちょっとこれから車庫まで行くんだろ? ついでだから俺も乗せていってくれよ」

「しょうがないな…。そろそろでるから乗れよ」

「わーってるわーってる! すぐ行くから!」

「早く乗って。おいてくぞ」


 僕は笑いながら、意地悪をするかのように言った。山田は急いで乗り込んでくる。タイミングよく信号が変わったので、電車を動かした。

 車庫までは走ってきた線路を戻るのだが、少しすると異様な霧に包まれてきていた。指令からは特に濃霧に注意とも出ていないしおかしい。指令に連絡をしてもちょうど電波が悪いのかつながらない。仕方がないのでゆっくり走る。


「今野さん? 妙に霧こくない?」


 無線で車掌室にいる今野さんに聞いた。


「そうですよね。怖いので安全運転していってくださいね。」


 簡単に返事だけを返し、安全に気を付けて運転する。

 よく走る区間だけあって霧以上の変化にはすぐに気づいた。いつもは、ないところでトンネルに入ったのだ。怖くなり引き返そうと思い、非常ブレーキを使う。だが、電車は止まらない。というかどんどんと早くなっていく。車掌の今野が運転室に来る。


「どうしたんですか?! どんどん早くなっていますよ!! 早く戻りましょうよ!」

「しかし、ブレーキも効かないし無線も届かないんだよ。だからどうしようもないんだ」


 僕はうつむきながら言った。


「私死ぬんですかね? お嫁にも行けてないのに」


 今、そこを気にするのか。


「俺だって結婚してないぞ! どうしてくれるんだよ佐藤!!」


 僕だって結婚してないよ。ってかお前ら結婚しか考えてないならちょうどいいだろ。お前らで結婚しろよ。そしたら夢かなうぞ。ってかこれは、僕は関係ねーよ。と心の中で突っ込みを勝手に入れてしまっていた。


「落ち着けって。きっと生きて帰れるって」


 そう二人に言い聞かせながらも実際、僕自身もこれはやばい。そう思っていたので自分の気を落ち着かせるためにも適当に返事をした。そこから数時間、僕らは電車の中に閉じ込められていた。


「光が見えるよ!!」


 今野さんはそういった。


「本当だ! やっと出れそうだぞ!」


 僕は急いで運転室に戻りマスコンを握った。ブレーキが効く。どこに着くのかもわからないので、速度を落とし慎重にトンネルを出た。そこには、運転している車両がちょうど入る分の線路とホームだけがあった。周りは見渡す限り草原であり困惑していた。


 「え、ここはどこ?」三人そろって言った。

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