冬の夢

夜水 凪(なぎさ)

冬の夢

 夏、狭い路地裏、私はひとり走る。


 緩い坂道、両脇の家の庭に立つ木々の日かげ、眠たげな猫、サンダルとアスファルトのぶつかる音。落ちる汗、白い半袖、青空。


 心の中にふと現れる景色。懐かしいような、悲しいような、心許ない心持ちと共に。いつかみたことがある所のように思われるが、そうではい。だが、懐かしさとやってくる。


 炭酸が弾ける喉の痛み、流れる汗がTシャツにしみる不快感。そんな中私はどこかへ走りつづける。どこか、はわからない。ただ必死に走る。



 風の吹かない町。人のいない道。

 猫が一度だけ、鳴いた。

 


 ああ、ここはどこなのか。私はどこにいるのか。わからないが、わかる気もする。


 痛いぐらいの青空が歪む暑さ。風はないがどこか涼しい。




   これは夏が待ち遠しい私の夢

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冬の夢 夜水 凪(なぎさ) @nagisappu

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