第14話 襲来のアーマー

「歩くん〜♡」


「あゆくん♡」


「......歩様♡......」


「鏑木くぅん♡」


「......どうしてこうなった?」


各自別の部屋を1人1部屋用意したはずなのだが、朝起きると、未来、美月、香菜、そして永田先生までもが僕のベッドで寝ていた。


「みんなおはよう......って、先生は朝早いんじゃないんですか!?」


眠たそうな眼をぐしぐしと擦りながら我らが担任に今の時刻を伝える。


「もう!ななみって呼んでよぉ!」


先生を名前呼びってどうなんだ?

しかし、生徒の中には『七海ちゃん』『七ちゃん』と呼んでいる人もいるから、別にどんな関係だとしつこく聞いてくるやつもいないだろう。

と自分に言い訳をする。


「な、七海さんは学校行かなくていいの?」


「それならだいじょーぶ!仕事は全部家でやることにしたから!それにうちの高校って結構自由だし!」


親指を立てながら先生にあるまじき発言をする小さな子供(あくまで中身は、だが)。

先生まで自由ってうちの高校ってそんなに自由だったのか。

そりゃ刃物振り回していても何もおとがめがないんだから自由だとは思っていたが自由度が高すぎないか?


「仕事をする家って、まぁ僕の家でしょうね」


「そうだよ〜!ななみは鏑木くんがいないとだめになっちゃうんだ〜!鏑木くんがいないと死んじゃうかも......」


先生は20代前半と、僕らと少ししか歳が違わないのに大人の色香を持ってるし、その反面、実は甘えん坊で可愛いのでそんなことを言われたら嬉しいけど、この人も3人と同じ言動なんだよなぁ。

さてはヤンデレだなオメー。


「〇ねば?」


「さっさと〇んでください」


「......〇ね、ロリババア......」


WOWめっちゃ辛辣!


「教え子だからって容赦しないよ!全員ぶち〇したあと、鏑木くんとラブラブチュッチュッしながら学校行くんだぁ」


こっちも朝から酷いな!

なんの迷いもなく先生に向かって『〇ね』って言える君たちと、教え子に向かって『ぶち〇す』って言える先生。

なんて表裏の無い関係なんだ!!!

全国探してもこんなにカオスな先生と生徒はいないだろう。


「......僕、先にご飯作っておくから、頃合見て降りてきなよ?じゃないと置いていくからね」


「「「「〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇!!!」」」」


もう聞いてられない!!!

全部伏せ字じゃないか!!!

さっさと下に降りて朝ご飯を作ろう!

そうしよう!




――――――――――――


「......で?戦ってたはいいものの、勝負がつかないと判断して僕の部屋を漁っていたと?」


「「「「違っ!!!こいつが!!!」」」」


なんて醜い擦り付け合いなんだ......。

物音がしなくなったので、降りてくると思ったが、しばらくしても降りてこないので部屋の様子を見に行ったらこのザマだ。


「一緒に登校してやらないぞ」


もちろんそんな(勇)気はないが、一応強めに言っておく。

まぁこいつらが聞くとは思わないが。


「!謝るから!お願い、許して!」


「あゆくんと一緒に登校したいです......」


「......歩様、ウチが間違ってた......ごめんなさい......」


「鏑木ぐ〜ん!ごめんなざい!!!ななみを置いてかなでぇ!!!」


予想とはちょっと違う反応をされて若干驚いてしまう。

効果バツグンっていうかちょっとやりすぎてしまったかもしれない、こんなに落ち込ませるとは思ってなかったし、素直に謝ろう。


「ごめん、冗談冗談!僕も未来や、美月や、香菜や、七海さんがいない日常なんて考えられないからね」


「もぉ!ヤンデレすぎるよ〜!」


「困ったヤンデレさんですね」


「......ヤンデレな王子様もいい......!」


「ななみはヤンデレな鏑木くんも大好きだよ!」


「......こいつらまじか......」


地球が滅亡するくらいのどでかいブーメランが4人に突き刺さっているが、今だけは許してやろう。

......ある1つの不安を残して。




――――――――――――


「お前らは......僕をムキムキのマッチョに......したいのか......?」


疲弊しきった声で僕は4人に問いかける。


「そんなことないよ?今のままでも歩くんは死ぬほどかっこいいし素敵だよ!」


と未来。


「ありがとう......」


「今のままでも私のお股は濡れ濡れです!」


と美月。


「ありが......素直に喜べねぇ!」


「歩様......今のままでもヨダレが出そうなほどかっこいい......」


と香菜。


「うん、出てるから早くふこうね」


「鏑木くぅん、ななみの頭なでなでしてぇ」


と七海さん。


「そうですね、両手が塞がってるんで無理ですね」


ただいまの状況、アーマー×4である。

4人ともが僕に乗っかっている。

1人40〜50キロで考えて大体160〜200キロくらいだろうか。

僕もこいつらと接していく中でなかなか人間離れしてきたな......。

それにこのアーマーは戦闘になるとそれぞれ離脱して、自ら戦ってくれる有能なアーマーだ。

しかし、重量が重すぎるのが玉にきずである。

筋肉が結構ついてきた自分の体を見て、あることを思う。


「ムキムキになったらモテるのかな?」


「「「「大丈夫、そいつは殺(しま)す」」」」


「やはり俺の青春ラブコメ(?)はまちがっている!!!」


そんなラブコメ絶対に間違っている。


「あ、そろそろ遅刻しちゃうよ〜?」


七海さんが腕時計を見て告げる。

こんなんで遅刻とかマジでシャレにならない。


「あー!!!!!!やってやろうじゃねぇか!!!!!!」


全力疾走してなんとか間に合ったが、校門にいる体育教師の小島が向けてきた哀れみの目を僕は忘れない。

なお、七海さんに関しては完全にスルーだった。

防衛本能......?

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