第13話 ヤンデレホイホイ
「先生!僕に思いっきり甘えてください!」
「え?えぇ!?どういうことなの!?」
まぁ、普通はそうなるだろうな。
僕も作戦を立てた今でも、何を考えてるのかわからないし。
「いいから!助かりたいでしょ?」
「そりゃあ助かりたいけど......。わかったわ、じゃあいくわよ?」
僕の背中から降りて、向かい合う形になる僕と先生。
「はい、何時でもどうぞ!」
「鏑木くぅ〜ん!ななみ今までいっぱい頑張ってきたの!えらい?えらい?」
無邪気な笑顔で微笑む先生。
ここで必要なのは、いかに先生を甘やかすことができるかだ。
「えぇ、えらいですよ、頑張りましたね」
「えへへー!そうでしょ!だからよしよしして欲しいなぁ」
抱きついて頭を振り振りする先生。
甘えたいという欲求は相当溜まっているらしい。
先生の頭に手を乗せて撫でる。
「よしよし、先生はいい子ですね」
「むぅ!先生じゃなくてななみなの!」
なんだか小さい子のお守りをしている気分になってくるが、あくまでもこの人は先生である。
「わかったよ、ななみはいい子だね、よしよし」
「くぅぅぅん、ななみ、鏑木くんになでなでされるの好き〜!」
「じゃあもっと撫でてあげます!」
犬のような声を出し、さらに僕にひっつく先生。
妙な背徳感を覚えつつも、少しハマりつつある自分がいた。
「ななみにいっぱいよしよししてくれるから鏑木くんのことだぁい好き!」
実はもっとなでなでを味わいたいのだが、遠くから狂気を感じたので先生の肩を掴み、僕から引きはがす。
「先生、そろそろストップです」
「......へ?」
僕たちの救世主はこの状況を絶対に許さないはずだ。
「浮気の匂いがするぞぉぉぉぉぉぉ!!!ぶった斬って血祭りにしてやる!!!」
「〇します〇します〇します〇します〇します〇します〇します!!!」
「......歩様に触れていいのはウチだけなんだから!!!〇ねぇぇぇぇぇぇ!!!」
暗闇からものすごい勢いで現れる3人。
僕は信じていたよ!!!
嬉しくて涙が出てきそうだ!
あと足はガクブルだ!
でも......
「会いたかった!!!」
「「「ぽっ」」」
僕が本心からそういうと、3人とも武器を落とし、顔を赤らめた。
危ない。
言ってなかったら先生が〇されてたかもしれない。
割と本気で。
「鏑木君の話は流石に冗談なんじゃないかと思ってたけどあながち間違いじゃないわね......」
先生も引きつった笑いしてるし!
すると何を思ったのか、3人は僕の周りをグルグルと回り始める。
かごめかごめかが始まったのか?
「ところで歩くん、足首と手首怪我してるみたいだけど大丈夫?」
「......なんのこと?」
未来に核心を突かれ、少し焦る。
実は落ちた時に先生を庇ったこともあり、足首と手首が捻挫か打撲していた。
先生にバレると気を使わせてしまいそうだったから黙ってたのになぜ一瞬でわかるかなぁ、でもまだ確証はないだろうしごまかせそうかも。
「いつもと体重の掛け方が違いますし、先程からずっと手首を庇うようにしてますよね?」
確証はあったし、ごまかせないし、僕にも分からない情報が出てきた。
『ヤンデレの ちからって すげー! ⬇️』
「はぁ、やっぱりわかっちゃう?と言うかなんでわかるの?」
「......いつも盗さ......見てるから......」
おい、今なんて言いかけた!?
それって犯罪って言うんだZE!
「じゃあ鏑木君は怪我したまま先生をおぶっ......」
「いや〜、実は僕が怪我したから先生がここまでおぶってくれてさ!未来と美月と香菜が感じた浮気の匂いっていうのはそれじゃないかな?」
先生が気づいて僕がおぶっていたことを言いかけたので、慌てて言葉を被せる。
怪我していた僕が怪我をしていない先生をおぶっていたなんてバレると『翌日、永田 七海の姿を見たものは誰もいない......』なんてことになりかねない。
こいつらは僕にできないことを平然とやってのける。
そこにシビれないし憧れない。
「そうだったんだ!ありがとうございます!永田先生!私は鏑木 歩の妻です」
「感謝です!妄想女は置いておいて、私は鏑木 歩の本当の妻です」
「......歩様が生きていたのはあなたのおかげなんですね!......ウチは現実と妄想をごっちゃにしているこいつらと違って、現実の鏑木 歩の妻です......」
こいつら、先生が命の恩人だから、媚び売って僕への印象を上げさせようとしてるな!!!
外堀から埋めていくってやつか!
そして、この中の誰も妻である覚えはない。
「まぁいっか、疲れたし早く帰ろうぜ」
「そうだね」
「そうですね」
「......そうしよう......」
今日は本当に色々あったから、それぞれの家に帰って疲れを癒そうではないか。
「「「「鏑木家に!!!」」」」
......ん?
おかしくね?
なんでこんな綺麗にハモるんだ?
「ちょっと待って、3人とも今日も家に来るのか?」
「と言うか住んでいい?」
「鏑木家で暮らしたいです」
「......屋根裏でもいいから......!」
「そりゃだめだろ!?父さんだって......」
すると3人は同時に録音機を出し、再生ボタンを押す。
『ん?ここで暮らすって?部屋も多いしいいんじゃないのか?にしても歩のやつこんな美人さんに囲まれて羨ましいな!近所に言いふらしt......』
「まじかよ!!!???てか重要なところ切れてる!!!」
言いふらしちゃったのか!?
まぁ父さんは1度決めると考えを曲げないからなぁ。
どこの里の忍者だよ。
と言うかこれからはこの3人と一緒なのか......。
さようならプライベート!
ようこそ監視生活!
「ねぇ、鏑木君」
「どうしたんですか?」
服の端をつまんできた先生の方を振り返ると甘えん坊の『ななみ』の方の先生がいた。
「ななみ、鏑木くんなしじゃもう生きていけない体になっちゃったかも!ななみも鏑木くんのおうち行く!」
「......は?」
何を言っているんだこの人は?
思わず口が半開きになってしまう。
「恩人でも許さないよ?さては言っていいことと悪いことの区別もつかない馬鹿なのかな?」
「今冗談って言ったら恩人なので命だけは助けてあげますよ?」
「......歩様はかっこいいから惚れるのは当たり前だけど、恩人だからって調子乗らないで......」
いやいや、さも当然のように先生に暴言吐いてるけどまだ僕完全に鏑木家に住むのは了承したわけじゃないからね!
「やー!!!鏑木くん好き〜!」
僕の胸元に顔を埋める先生。
「「「〇す!!!」」」
電ノコ、中華包丁、裁ち鋏が先生を襲う。
これマジで事件になっちゃうよ!?
キィィィィィィン!!!
......ってん?
なんで金属音がするんだ?
先生が手に持ってるのは......釘バット!?
しかも金属に釘が直接刺してある!?
「鏑木くんに少しでも多く甘えられるようにななみ、全員〇すね?」
「そっちが素ですか?相手になりますよ」
「出る杭は打たれるんですよ?」
「......ウチと歩様の物語にあなたはいらない......」
武器片手にジリジリと詰め寄る4人。
見ているこっちは冷や冷やしている。
「なんで......」
なんで増えちゃうんだよぉぉぉぉぉぉ!!!
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